「アモスオズ」愛と闇の物語 Socialjusticeさんの映画レビュー(感想・評価)
アモスオズ
アモスオズの自叙伝の映画化だが、暗いから長く感じてちょっと疲れた。アモスはノーベル賞文学賞には選ばれなかったが、有名な作家でジャーナリストでもある。彼の公演を聞いたことがある。パレスチナ国とユダヤ国の二国提唱者だと思うが詳しくは調べていない。多分韓国で文学賞をとっている。不幸にも私は彼の文学作品は一冊も読んでいない。
この映画の良さはヘブライ語ロシア語アラブ語英語と必要なところにそれぞれの言語が使われていて、その時代を写実的に描写している。家族はかなりの言語を操れるようで、言語によって、例えば母親の家族はロシア方面からの移民だと理解できるから好きだ。本物の映画という感じがする。
アモスには子供の世界が少なすぎて、ちょっと不気味だった。父親の両親はアシュケナージユダヤ人でエルサレムに移住してきた。母親は今のウクライナからのユダヤ人。家族がパレスチナアラブの富豪のような家庭に招かれアモスは女の子と話して木に登りブランコを揺さぶるシーンがあるが、悪ふざけが過ぎブランコをゆりかごの中の赤ん坊にぶつけたようだ。家族もそこをすぐ立ち去り、あとで父親は電話で謝り医療費を払うと言っている。うまく言えないが家族三人が頭でっかちで生きるのが不器用に感じる。秀才家族で学問以外は苦手のように見える。父親はアモスとの接触を時々一人前の大人のように扱っている。
1947年の国際連合総会でパレスチナ分割決議のラジオニュースを聞いている。史実の通り賛成多数で可決されたて(その後はアメリカが背景にいるため、パレスチナはイスラエルのユダヤ人に占領されてしまったようだ。)特に父親は大喜び。ヨーロッパにいた家族は反ユダヤ主義の中で大変な思いをしているから。自分の国が建国されたからもう差別がなくなるというが。それに教育をつけることによっても差別がなくなるという。
母親はアモスに自分の小さい頃の話を聞かせてあげているが、いつも憂鬱な顔をしている。彼女の友達はパレスチナアラブとユダヤ人の内戦が原因でスナイパーに殺される。母親は躁鬱病になり寝ることも食べることもしなくなる。千九百五十二年に薬の取り過ぎで亡くなってしまう。アモスは母親が本当に苦しんでいて自殺をしてしまったことを知る。
何年か後にアモスはキブツに行って住む。母の夢だったdesert bloom (エルサレムに緑を)を作るために。
個人的にで批判承知で書くが、私の心を打たなかった。母親に対する心からの同情はあるが、今のイスラエルにおけるユダヤ人の独裁がひどく、パレスチナ人に対する同情心が私にとって大きい。例えば、ワクチン問題。ガザ、ウエストバンクのワクチンの数と、これら以外の場所でのワクチンの接種件数の違いは世界からも批判を浴びている。2/28/21のワシントンポストでも、イスラエルでは五十歳以上は90%がワクチンを受けていると。しかし、よく読むと、イスラエルアラブや超正統派 のユダヤ人は摂取率が低いと。しかしこれを1967 年のパレスチナはワクチンは多数が受けていないと。
中東戦争で置き去りにされた(これは聞こえがいい)パレスチナ地区(ガザなど)はこのような差別を受けているので、この映画のユダヤ建国を手放しで喜べなかった。