「啓発?」アオラレ U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
啓発?
反面教師というべきか…いや、かなりフィクションだとは思うのだけど。
現実に起こりうる「アオリ運転」が題材ではあるが、煽られる側にも問題がないわけじゃないとのスタートだった。とにかくオープニングが秀逸で…社会から与えられるストレスを凝縮したような展開とそのBGMに圧迫される。ラッセル・クロウが異常なまでのサイコ野郎を好演してるわけなのだけど、彼の芝居は特段にサイコなわけじゃない。終始、怒ってるし思い詰めてるし、共有できない感情ではないのだ。
その度合は理解できはしないのだけど。
なので、その社会から与えられるストレスによって、今後彼のような人間が現れるかもしれないと、ふと思う。
携帯のGPSの件とかはよく出来ているのだけれど、彼女の周囲の人間にまでってのは誇張が大きかったかもなあ。最後に祖母の家に逃げ込むのも疑問ではある。
ああ、やっぱり直接戦うのだなあと、アメリカ的な精神論が降りかかってくる。
まぁ結局の所、個人情報の塊である携帯を取られてるので、警察署に逃げ込んだところで、解決はされないみたいな事なのかもしれないけれど。
ただ、サイコ野郎の目にハサミを突き刺して、尚且つ足で蹴り上げるってのは…アレで皆スカッとするのだろうか?
ラストはクラクションを鳴らそうとして、やめる主人公。息子から「正解だよ」との声がかかる。
どおにもやるせない結末ではあるが、どのみちその瞬間にしか会わない相手。わざわざ干渉する事もないとも考える。
日本だけかと思ったらアメリカでも結構な社会問題になってるんだなぁ。向こうは銃が近くにある分、恐怖が増すなあ…。
■追記
masamiさんのレビューを読んでハタと気づく。
「言われてみりゃそらそうだ」
そう思うと今作は結構真面目なテーマだ。
男は「お互い様だ」と謝罪をし、また促した。それを突っぱねたのは女の独善的な思考だ。
「悪いのはあなた。私は悪くない。」
この考え方が発端なわけだ。
その後に起こるアレコレは異常な事ではあるけれど、生まずに済む軋轢を生んだのは、コレなのだと思う。
まぁ、ほぼほぼ反射的な行動ではあるし、自身もやられた事のある至極ありきたりなアクションなのであろう。なのでその事について再考する余地などない。
が、結果には原因がある。
そういえばオープニングにも「SNSとマスコミに脅されて」なんて一文があった。
煽り運転は非常に危険で野蛮な行動ではあるが、煽り運転をする側だけが異常ってのはマスコミに煽られての価値観かもしれない。
報道される部分だけが真実ではないのである。
ラストカットで彼女はこの「煽られる可能性」を回避した事になる。
煽られ防止キャンペーンな映画なわけだ。
煽り運転の全ての原因がコレってわけでもないし、何の原因もないのに煽られた純然たる被害者もいるのではあろうが、きっと何割かには当てはまるのだろうと思う。