「してやられた!」黄龍の村 ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
してやられた!
阪本監督作品ということで、撮影の時系列はかなり前の作品ですが、ベイビーわるきゅーれよりも公開があとになった作品。舞台挨拶もあるということでワックワクしながら観に行きました。
率直にいって最高でした。前半から後半へのどんでん返しが面白すぎました。
前半はウェーイ系の人たちと大人しめの人たちが混合しているグループがキャンプに行くというくだりから始まり、ウェーイ系のテンションは正直苦手なんですが、この後の展開のための材料(もとい食料)には適切な人物配置だなと思いました。
車のパンクにより山道を練り歩いていく一同、陸夫(大坂健太さん)が場の空気を冷やしたりして、気まずい一行ですが、会話のできないお爺さんや、乗馬した老人に出くわし、村内の家まで連れていかれるという、ここで疑えよ!と思いますが、ウェーイ系特有のノリの良さでほいほい村まで行きます。
家に着くと料理も寝床も既に用意されており、家主もおかしな事を言うし、鍋つかみは使ってはいけなかったりと、とにかく不気味なルールを強要されます。さすがにウェーイ達も疑問を覚え始めますが、朝起きて朝食を食べようとした瞬間に、貴則(松本卓也さん)が背中に包丁を刺され、吐血しまくり、そのまま野垂れ死にます。予告でもその映像はあったのですが、本編の不気味さが引っ張っているのもあり、とてつもなく怯えてしまいました。
村の風潮に合わせて儀式を執り行うのですが、村長(海道力也さん)の優しさと悍ましさの入り混じる感情表現が観ていて最高でした。その後顔だけ無事な孝則と孝則の肉を削いで血抜きしたものが出てくるという、突然のカニバリズムには恐怖を通り越して笑いが起きてしまいました。ここから段々と物語が上り調子になっていきます。
自分たちもそうなるんじゃないかと思ったウェーイの1人なごみ(秋乃ゆらさん)が立ち上がり、銃を奪い取り逃げますが、こけた拍子に銃口が顎に向き自分を撃ち抜くという間抜けな死に方をします。うらら(鈴木まゆさん)も同じタイミングで撃ち抜かれ、一気にメンバーが減ります。最後に残った優希(水石亜飛夢さん)が復讐を誓いますが、その瞬間に撃ち抜かれて死ぬという呆気のなさでした。これこの後ずっとカニバリズム見せられるのか?とドキドキでしたが、予想の斜め上いくものを観せられることになります。
車の修理を1人で手伝うという死亡フラグを立てた梶原(伊能昌幸さん)、起きたら既にいなかった啓作(ウメモトジンギさん)、儀式の途中に連れ去られた真琴(石塚汐花さん)、逃げる道中こけた陸夫が、実は村への復讐を計画していた人物たちで、陸夫以外の全員は武術が使えて、陸夫は銃を使えるなど、戦闘能力に長けている人物たちだったので、村人を蹴散らしまくっていきます。ひとつひとつのアクションがハイレベルで、近接戦闘は今まで観てきた映画の中でもトップレベルの巧さでした。
困った時には爆弾も多用したり、タイマンにこだわったり、不利になったら潔く2対1の状況に持ち込んだり、断末魔聞く前に撃ち殺したりと、容赦のなさも最高です。敵陣に乗り込む際のノリも軽ーく向かって、ぶちのめすのも最強感があって気持ちいい。作戦会議もゆるゆるで観ていて楽しかったです。
ラスボスは奉られていた神様が、人を食べまくりながら挙げ句の果てに草を食べながら一向の目の前に現れます。圧倒的パワーに苦戦自体はしますが、それでも真っ向からグーとグーで立ち向かい、勝利を手にします。買ったノリで打ち上げに行く宣言をするほどのノリの良さも最後まで一貫していて素晴らしかったです。
エンドロール中もアイスを食べたり、焼肉を食べたりと完全に一仕事終えた普通の人の面をしているのも、さっきまでの戦闘は何だったんだい?と。でもそれが曲とも合っていて面白かったです。その後、陸夫と梶原が電話をしているときに、梶原の始めた便利屋の助手に神様こと十兵衛が人を食っているというとんでもないオチで終了します。
こんな映画は観たことなくて、66分という限られた時間、その中で力の限り暴れ回る今作は常に最狂でした。アフタートークで、5.5日しか撮影が無かったこと、一ノ瀬ワタルさんが草を食べ尽くしたあとに土も食べ始めたこと、銀次郎さんの突然の猪木拉致事件と、短い時間ながら濃密なアフタートークでした。次の監督作品「最強殺し屋伝説国岡 完全版」は「黄龍の村」よりも前に撮られた作品とのことなので、心から楽しみにしています。ジャパニーズサイコー!
鑑賞日 10/2
鑑賞時間 19:25〜20:35(舞台挨拶あり)
座席 F-10