「91歳のモテ男の武器は・・・・」クライ・マッチョ カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
91歳のモテ男の武器は・・・・
クリント・イーストウッド、91歳!
脂が抜けたしわしわの瞼や痩けた頬を見ると、亡くなる前のオヤジの顔をつい思い出してしまった。ちょうど、90歳だった。
往年のロデオチャンピオンが腐れ縁の興行師(ヤクザ)からメキシコシティにいる13歳の息子を母親の虐待から救い出して来てくれと頼まれる。6歳のときの写真を一枚渡される。落ちぶれ、世話になっているので、断れないみたい。
メキシコ人の母親は大きなグランドキャバレーのような一軒家の店を経営し、豪奢な部屋で毎晩男をとっかえひっかえの暮らし。息子の父親は意気地無しだとはなから馬鹿にしている。少年は家出していて、手のつけられない不良だから、あんたにゃ見つけ出すのさえ無理よと言われる。それより、一杯やっていきなさいよ。今晩はここに泊まっていきなさいよ・・・みたいな。13歳の息子は闘鶏で稼いでいるストリートチルドレンだった。悪そうには全然みえない。虐待は母親のネグレクトと言うよりも破廉恥な母親を避けて、ストリート生活をしている感じ。すぐに見つけられたし。
母親の囲っているふたりのチンピラが妨害しようと追ってくる。連邦警察の職質を避けながらのふたりのロードムービー。少年は自分の相棒の雄鶏(ルースター)をマッチョと名付けていた。少年のあこがれは強い男。
メキシコの水が合わず、下痢ピーで、道端から離れていたときに車をチンピラに奪われて、歩いてたどり着いた小さな街で簡素な店の親切な年増女に保安官から匿ってもらったことをきっかけに身の上話。女には孫娘が四人。娘の形見だった。教会で夜を明かすふたりにそっと朝食を持ってきてくれる。しばらく一緒に生活することになった。少年にテキサスに行っても馬を乗りこなせられないと馬鹿にされるぞと半分脅しながら、売れない暴れ馬に困っているディーラーに調教してみせると持ちかける。これが案外すんなりとうまくいって、調教代を稼ぐ。91歳のロデオヒーローのもうひとつの武器は動物のお医者さんだった。
志村動物園か?
ムツゴロウさんか?
街ですっかり人気者になり、信頼を得て、保安官もふたりに手出ししにくくなる。
父親が少年を手元に置きたい理由は実はメキシコの不動産の権利が絡んでいたのだった。
少年を国境で待っている父親に引き渡すと91歳のモテ男は街の年増女のところに戻っていった。過去の栄光をすっかり捨てて。
少年が幸せになれたような気持ちにはまったくなれなかった。息子は年増女の一番上の孫娘に恋していたような気がする。クリント・イーストウッドが幸せになったことに疑いの余地はないのだが。
(終)