「かつてマッチョだった男の再生劇」クライ・マッチョ マルホランドさんの映画レビュー(感想・評価)
かつてマッチョだった男の再生劇
最近の映画は2時間30分声は当たり前になってきた。多くの娯楽映画がアトラクションの要素を増やしてきてもちろんそれは十分見ているものを楽しませてくれるし映画館の大スクリーンで見るそれは面白いのだがやはり長く感じる。しかしそんな中でこの作品は昔ながらの空気感やプロットを今の我々にも伝えてくれる。それは言い換えれば「古臭い」と言われてしまうかもしれない。派手なシーンもなければ、敵も武装はしていないし相手は1人で追いかけてくる。普通は何十人も連れて来るかもしれないがそこはお約束で正々堂々と向かってくる。イーストウッドは見るからに年季がこもっており、彼の振るうパンチは少し弱っちく見えてしまう。その老人のパンチ一発で沈む若者は側からみて違和感を覚える人は多いと思う。しかしこの映画はそんな昔気質で、イーストウッドという人物が好きならば楽しめる作品だとは思う。
この映画を見終わって思ったのは、「ただひたすらのんびりできた」と思ったのが印象的だった。簡潔に言えばメキシコにいる若造をただ連れてくるだけの物語なのだが、メキシコの広大な風景、馬の躍動感、人と人との文字では言い表せない感触の美しさ、そこに生きる人々の絆、よそ者であるイーストウッドたちを受け入れてくれる現地の人々の優しさ、太陽の照具合、遠くに見える荒野の熱気、建物がほとんど出てこない広々とした空間、余計なシーンがないからこそ物語に惹かれるし、その時間はゆっくり静かに流れる。そんなゆったりとした風景を見たときに忙しなく物語に集中して見れたことがこの作品の最大の魅力なのだと思った。