「脚本家ニック・シェンクの過去2作の組み合わせでしかない!!」クライ・マッチョ バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)
脚本家ニック・シェンクの過去2作の組み合わせでしかない!!
『運び屋』や『リチャード・ジュエル』に関しても、決して悪い作品ではないが、傑作というには、ほど遠い作品を連発している。しかし「さすがイーストウッドだ」とか言っている人が多くて、いったい何処を観ているのだろうか…….
撮影方法や技術面に関しては、否定することは全くなくて、脚本に入っているかどうかの問題もあるが、物語の構築が単調でしかない。
クリント・イーストウッド監督作品は、なんでも素晴らしい作品と言わないといけないようなバイアスがかかっているのは、いかがなものかと思う今日この頃。
今作も地味な作品の割には、特別濃厚な人間ドラマがあるわけでもなく、描いていることは王道でシンプル。しかも今回は全体的なプロットが『グラン・トリノ』と『運び屋』を組み合わせたようなものであって、それは2作の脚本家ニック・シェンクを再び起用していて、脚本家の問題にも思える。
もはやイーストウッド作品に新しさを求めるのは無理な話で、いつものような作品を撮る監督だと割り切って観るのであれば、ある程度の安定感はあるだろうが、観ている側が無理に良い点を探さなければならない負担に疲れる。
当てつけというべきか1週間差で公開される元イーストウッド組ロバート・ロレンツの『マークスマン』がコテコテに、麻薬カルテルや人身売買といった治安の悪さを主張した「ザ・メキシコ」的作品だったのに対して、別方向からのメキシコのアプローチが随所にあることと、少年ラフォ役のエドゥアルド・ミネットの演技が上手いのが唯一の利点だ。
イーストウッドが終始、学校に孫を迎えにきたお爺ちゃんにしか見えず、悪役の女性やメキシコの未亡人からアプローチをかけられる不自然さを感じてしまう。そこはイーストウッドの女性好きな部分や、いつまでも自分を美化する意識が抜けていないようでならない。
未亡人と孫たちと擬似家族のような関係が築かれていくが、たまたま会った80代後半か90代の老人に恋愛感情を抱くだろうか……物好きと言ってしまえばそうだろうが、さすがに無理がある。