「ナイスなSFセンス」レミニセンス R41さんの映画レビュー(感想・評価)
ナイスなSFセンス
SFセンスの高いアメリカの作品。
現代がバーチャルリアリティーに一歩踏み込んだ状態だが、その少し先の未来を想定し、さらにサスペンスや事件と絡めて描いている。
近未来の設定が面白い。環境変化にとどまらず、その中で人々の欲求がどこに向かったのかを上手に設定している。
人の記憶は、ゲームなんかよりよほど面白いかもしれない。
ワッツは酒浸りだが自分の抱えている問題を明確に認識している。彼女はニックに言われて未来を選択した。娘と和解し一緒に住み始めた。
しかしニックはどうしてもメイを忘れらず、メイとの記憶をエンドレスに見続けている。
ニックが汚職警官にした記憶による拷問は見事な設定だった。
その伏線として「死んでゆくものは、必ず一番幸せだった頃の記憶にたどり着く」とニックは言っている。考えてみれそうかもしれない。そうくぎ付けしておいて、あの拷問は効果抜群だ。
メイが言った「幸せの物語を話して」というセリフは、彼女の本当の望みだろう。
彼女がニックに話したことの中に少年の居場所をヒントとして残し、また汚職警官の記憶の中でニックに話しかけるシーンも素晴らしいアイデアだった。
しかし彼女が子供を汚職警官から守り通したいというモチベーションはどこから来たのだろう? 作品ではそれがメイの正義感のように描かれているが理解しにくい部分だった。
「盲目」となったニックが仕事中であれメイのことを探し続ける様子は我々日本人からは考えにくいが、それは後にニックが「すべてが仕組まれていた」と驚愕するどんでん返しを演出するためだろう。
でも視聴者には、もう少し前からそれはわかってしまっちゃってるんじゃないでしょうか?
時代背景も人々の変遷も、変わってしまった中でも起きているヒエラルキー、そしてそこに登場した他人の記憶を見る装置「レミニセンス」という設定。素晴らしかったです。
しかし、
最後にワッツが言う「過去を選択しても未来を選択しても、どっちを選んでも間違いではない」
一見正しいことのように述べているが、ここに真理から逸脱した欺瞞が隠されていることが悲しかった。
どうでもいいですが、過去も未来も存在しません。あるのは「いまここ」だけです。
多くの人々がこの真理にたどり着き始めていますが、このような映画によって「ウソ」を教え込むことも可能なのです。あの最後のセリフは原作とは関係ない恣意的な付け加えが行われたということを感じざるを得ません。
これは気をつけたいですね。