「中途半端感がハンパない」レミニセンス カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
中途半端感がハンパない
中年にして色に狂った中二病のおじさんが失踪した女性を探す話。
海面水位が上昇し陸地のほとんどが水に浸かってしまい、一部裕福な者たちのみ陸地を占有しているという近未来。
主人公は人間の脳に何らかの刺激を与え記憶を可視化することができる装置を使って商売をしているという設定だが、まずそういった特殊な世界観の打ち出し方が上手くなく、それにより社会がどういった状況になり、どんな問題が起こっているということの説明、また退役軍人の主人公がいい年をしてほんの数日前に恋愛関係になった女性へ何故強い執着を持ち、危険を冒してまでも探そうとするのかなどに対し観ている側への説得力が決定的に不足しており、思い入れを持って観ることができなかった。
監督は脚本兼任のリサ・ジョイ。
恐らく映画の監督は初めてかと思うが、女性特有の(といっては怒られるかもしれないが)論理よりも感覚的な思考を中心に作り上げた映画のように思え、本人の頭の中で完結しているものを映像化するといういわばデビッドリンチあたりの巨匠にしか許されない手法をやってのけたわけだが、それさえも中途半端に終わってしまっている。
※プロデューサーも兼ねていることを知り納得したが。
記憶の可視化はもはや手垢のついたコンテンツであり、既に現実か記憶の中か混乱するというヒネリ版さえある中で、本作はどういったアイデアで差別化を計るのかという目線で観たのだがヒュージャックマン、タンディニュートン、レベッカファーガソンなどのスター俳優を使っただけで、半身を液体に浸かる装置の既視感と共に残念な印象しか残らなかった。
唯一良かったところはワッツが娘、メイがフレディに対してそれぞれの母性みたいなものを少しだけ見せたところかと思うが、それも裏テーマみたくもっと押し出しても良かったのではないかと思う。
フレディを預けるまでの逃亡劇や、預けたあのおばさんの詳しい描写などがもっとあったりすると、もう少しだけ面白くなったのかなと思った。