「もっと壮大なスケールかと思いきや…」レミニセンス おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
もっと壮大なスケールかと思いきや…
クリストファー・ノーランの弟ジョナサン・ノーランが製作、しかも記憶に潜入するという設定は「インセプション」を彷彿とさせ、予告映像と相まって期待値を爆上げしていた本作。それなのに、レビュー評価は芳しくなく、躊躇しましたが、自分の目で観てみないことにはと思って鑑賞してきました。結果、率直な感想としては思ったほど悪くはなかったです。
ストーリーは、過去の記憶を現実であるかのようなリアリティで見せる装置で、客の好みの過去にトリップさせることを生業とするニックは、客として訪れたメイと恋に落ちるものの、突然姿を消した彼女を探すうちに、その裏に隠された陰謀に巻き込まれていくというもの。記憶へのダイブが何度もあり、多少入り組んではいるものの、頭を整理しながら見ていけばなんとかついていけます。ノーラン作品は難解だろうと覚悟はしていましたが、この点はOKでした。
主演のヒュー・ジャックマンは、過去に溺れる感じがなかなかよかったのですが、それ以上に目を引いたのはレベッカ・ファーガソン。その美しさが際立つとともに、ストーリー上でも魅力的な女性で、ニックでなくても心奪われます。ニックの相棒役の女性も、知らない女優さんでしたが、存在感のある役どころを好演していたと思います。
映像的には、オープニングの水没都市の俯瞰からディストピア感を醸し出し、記憶潜入装置をさらりと見せて近未来感を演出し、状況説明を絡めながらニックの人物描写を加え、観客をすんなりと作品世界に誘います。そこに訳ありな感じの女性メイが訪れ…と、ことの発端までが流れるように展開し、ワクワク感がたまりませんでした。その後も、わずかな手がかりを手繰るような展開は、観客を惹きつけます。
ただ、決してつまらなくはないのですが、思っていたほどの大作感がありませんでした。退廃的で暗い絵面が多く、アクションシーンに乏しく淡々と進む感じは、どうしても地味に映り、隠された陰謀も個人的なもので、全体的に小ぢんまりとした作品でした。勝手に壮大なスケールをイメージしていた自分が悪いのですが、ちょっと期待外れでした。
また、水没都市や昼夜逆転の生活が物語の中で機能しているのかな、記憶潜入装置の映像はどうして三人称視点なのかな、ニックはどうしてメイにそこまで固執するのかな等、そんなことも気になってしまいました。そのあたりを飲み込めれば、まあまあ楽しめるのではないかと思います。