「なかなか楽しめた」ショコラの魔法 アライブさんの映画レビュー(感想・評価)
なかなか楽しめた
この映画は人気少女漫画ちゃおに連載中である原作漫画の実写映画化として話題となった作品である。また、女優・山口真帆の初主演作としても話題になった。
ジャンルとしてはダークファンタジーであり、原作よりもかなりホラー色が強い。大人からすれば少しビックリするシーンがある程度であるが、少なくとも読者層である小学生女子が震え上がるくらいの恐怖感はある。
ストーリーは、新聞部の部員である高校生・飯田直(岡田結実)が校内で起こった行方不明事件を追っていくうち、何でも願いが叶うチョコを売っている魔女・哀川ショコラ(山口真帆)に出会い、事件解決のためにチョコレートを食べる。このチョコレートは本当に願いが叶う力があるが、その代わり大きな代償を払わなければならず、そこから一波乱あり…という感じの話である。
高校生特有の甘酸っぱいシーンや、この年ごろにありがちな「しょうもない嫉妬心」が事件の核となっている点を見て、なんだか懐かしい気持ちになり、ホラー色が強いのに思いがけず暖かい気持ちになってしまった。
私は原作漫画も読んだことがあるが、原作の世界観はかなり高いレベルで再現されている。特にショコラノワールはショコラ役の山口の衣装と合わせてかなり忠実に再現されており、原作のイメージをひどくねじ曲げているということはない。
一部で酷評されている山口の演技であるが、そこまで悪くは感じなかった。確かに山口は怪演ともいえる異彩を放った演技をしているが、哀川ショコラが現実にいたらこのような感じなのだろうと概ねは思えた。ただ、クライマックスの重要なシーンにおける解釈が原作とは少し違うので、その点で違和感を覚える原作ファンもいるかもしれない。(山口が悪いのではなく脚本と演出の問題であろう)
脇を固める岡田や桜田はさすがベテランだけあって安定感のある演技をしていた。特に桜田は圧巻である。ネタバレになるため詳細は控えるが、この映画のMVPを1人決めるとしたら桜田になるだろう。私は桜田の演技は今まであまりちゃんと見たことがなく「明日ママがいない」ぐらいでしか見たことがないが、あの頃の演技とは比較にならないほど上達していて驚いた。当時の桜田は14歳ぐらいだったから上達していて当たり前なのであるが立派な女優になって感慨深い思いである。
演出面においては予算が足りなかったのか、かなり荒いと言わざるを得ない。特にCGの質があまり高くない。特にカカオ・テオブロマ(綱啓永)という猫に化けた悪魔が出てくるのだが、この人物が猫から人間に変身するときに「猫が物陰に隠れて人間(綱)が出てくる」といった間接的な描写をしており、CGを使ってもっと直接的な描写はできなかったのかと少し残念である。
とまあ細かい難癖はいくらでも付けられるのだが、全体的には大いに楽しめたため、見て満足であった。円盤が出たら買いたい。また、続編にも大いに期待している。