「原作ファンが見た結果」ショコラの魔法 rjmfさんの映画レビュー(感想・評価)
原作ファンが見た結果
もともとは単発のショートストーリーが多く、アニメ化のときもコンパクトな構成だったため、そういう意味では実写化という面だけでなく、一つの物語がやや長めである点、新鮮でした。
話のアウトラインも無駄がなく、相応の評価に値すると思います。
ただ、ターゲットがいまいちよくわからない映画でした。
お子様連れもいらっしゃいましたが、話の内容的に存分に楽しめたかどうかは甚だ疑問です。今回はショコラの中でも王道ジャンルのホラー寄りであったため、演出を楽しむ意味ではお子様にもよいかもしれませんが、場合によっては飽きてしまったりする可能性もあります。
私は原作ファンとして見に行きましたが、もしかすると役者さんのファンの方で見に行かれた方も多いかもしれません。そういった方々の感想というのもやや気になるところではあります。
私が一番気になったのは、ショコラ本人の描写です。ショコラは機械的で無機質に見えるかもしれませんが、まったくそんなことはありません。実に人間味にあふれ、豊かな感情を持つ魅力的な内面を持っています。それは、ショコラがショコラノワールでチョコレートを作るという意思決定をした事実からも明らかにされています。しかし、今回の映画だけでは、人間の情は、あたかも外界の世界の話で、ショコラの領域とは別次元のものを見るような、そんな印象を受けました。そもそもたった一時間強でショコラを語るのは無理な話ですが、ショコラの印象のフォーカスの仕方くらいは調整できたのではないでしょうか。役者さんの演技がどうこう言うつもりはありません。ショコラの魅力をもう少しうまく、脚本から役者さんに伝えることはできなかったのでしょうか。そもそもが、脚本の方向性が今回の映画で出し切れていたのであれば、原作とは異なった表現を目指していたことになり、それはそれで完結してそうな感じもしますが。
以上です。全体的な構成に大きな不満はありませんでしたが、細部の表現やショコラ本人の魅力が、私が原作で感じていたそれとは異なるものであった。という感想で締めたいと思います。