ワンダヴィジョン : 特集
【ついにこの時が来た】マーベル・スタジオ新章へ突入
でもどんな物語? 実は、見ておかないと
“この先のMCUが楽しめない”かも…超重要な一作!
「日本よ、これが映画だ」。マーベル・シネマティック・ユニバース(以下、MCU)に思いをめぐらせると、「アベンジャーズ」(2012)の挑発的なキャッチコピーが脳裏に浮かぶ。
実は、2020年はマーベル・スタジオの作品が1本も公開されていない。フェーズ3の「アベンジャーズ エンドゲーム」(以下、「EG」)ならびに「スパイダーマン ファー・フロム・ホーム」以後、約2年ぶりの新作が「ワンダヴィジョン」だ。MCUの新章“フェーズ4”が幕を開ける……ついにこのときがやってきたッ!
この特集では、1月15日からディズニープラスで配信が始まったドラマシリーズ「ワンダヴィジョン」(毎週金曜午後5時に最新話が更新)の見どころを解説していく。
本作はMCU新章突入の一発目というだけでなく、のちの作品(例えば「ドクター・ストレンジ2」)に強く影響する“ターニングポイント”になるとの噂もある。となると、これを見ておかないと、この先のMCUが十分に楽しめない……?
ファンであればあるほど、スルーは厳禁。筆者も毎週金曜午後5時のスケジュールを空っぽにして、絶対に全話を最速視聴することを心に誓っている。(文・構成:編集部 尾崎秋彦)
2021年、MCUが「ワンダヴィジョン」から再始動
待ってました―― マーベルファンは“見るしかない”
これまでのマーベル作品は通常、年に2本ほどが劇場公開されてきたが、2020年は少々状況が違った。新型コロナウイルスの感染拡大により、期待が集まっていた「ブラック・ウィドウ」などが世界中で公開延期に。その結果、同年はマーベル作品が1本も劇場公開されない珍しい年となった。
本作「ワンダヴィジョン」は久々のマーベル新作。そして「EG」後のMCUの新章、つまりフェーズ4の幕開けとなるのだから、「待ってました」と快哉を叫ばずにはいられない。我々映画ファンは、MCUの“あの刺激”に飢えていたのだ。
[物語]マーベルのヒーローたちとシットコムが予測不能の融合
本作「ワンダヴィジョン」はタイトルの通り、ワンダ・マキシモフ/スカーレット・ウィッチとヴィジョンが主役。しかも「フルハウス」「ザ・シンプソンズ」などのようなシットコム(シチュエーション・コメディ)だというから驚かされる。迫力のアクションが特徴のマーベル・ヒーローと、どのように融合するのか楽しみだ。
物語を要約すると、以下のようになる。「EG」の後、長い恋愛を経て結婚したワンダとヴィジョンが、ある郊外の街で幸福な生活を送る様子を描く。一見するとハートウォーミングなコメディのようだが、しかし“何かがおかしい”。なぜならヴィジョンは「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」で戦死し、「EG」でも復活しなかったからだ。ワンダと暮らせるはずがない。
日々を経るなかで、やがてワンダとヴィジョンは「自分たちが見ているものは、真実ではないのでは」と疑い始める。次第に明らかになる薄暗い謎。そして平凡な生活の裏に潜む闇が画面を覆う時、物語は壮大かつ衝撃的な“本当の姿”を見せつける。
まるでミステリーやホラーのような謎めいた展開……1話ごとに張り巡らされる伏線を考察し、展開を予想してみるのも一興。これまでのMCUとは、一味違う楽しみ方ができそうだ。
[そもそもだけど]ワンダとヴィジョンって、何者なんだっけ?
読者の皆さま(特にコアなMCUファンだと自負する方)は、胸に手を当て自問してみてほしい。「ワンダとヴィジョンのキャラクター、ちゃんと説明できる?」と。MCUの全作をリアルタイムで鑑賞してきた筆者も考えてみたが、「いやー、なんかあれだろ、キレると怖い念力の女性と、空飛ぶマントの人工知能」くらいだったことを白状しておこう……。
というか結構、そういう人は多いのでは? ワンダとヴィジョン、魅力的であることは確かだけど、いまいち登場シーンが少ない……。というわけで、ここで彼女らの設定をざっとおさらいしておこう。ともに「アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」で本格的に活躍し始めた2人、とてつもないパワーを持つ“チートキャラ”だった。
ワンダ・マキシモフ/スカーレット・ウィッチ
演じるのは「GODZILLA ゴジラ」などのエリザベス・オルセン。念じることで物体を自由自在に動かす強力なテレキネシスの能力を持ち、波動のようなエネルギー弾を放ち、身を守るバリアも張れる。さらにはテレパシーで意思疎通したり、他人の心を操るなど精神的な攻撃も可能だ。
感情の起伏が激しく、怒りや悲しみが限界に達すると、作中でもほぼ最強と言えるほどのパワーを発揮。「エイジ・オブ・ウルトロン」ではウルトロンを粉砕し、「エンドゲーム」ではサノスを簡単にボコボコにした。ちなみに原作では“現実改変”の能力を持っていたりする。強すぎるだろ。
生い立ちは過酷そのものだ。10歳の頃に故郷ソコヴィアが爆撃され、両親が死亡。降ってきた爆弾にスタークの名を見つけ、トニー・スタークへの恨みをつのらせる。その後、双子の弟ピエトロとともにヒドラによる人体実験の被験者となり、マインド・ストーンの力でスーパーパワーを手にした。「エイジ・オブ・ウルトロン」ではヴィランとして登場。厄介極まりない精神攻撃でアベンジャーズを苦しめた。
同作で改心し、クリント・バートン/ホークアイの名言「一歩外へ出たら、君はアベンジャーズだ」を受け奮起。正式にアベンジャーズの仲間入りを果たした。「シビル・ウォー キャプテン・アメリカ」では、内紛のきっかけとなるもヴィジョンと仲を深める。「インフィニティ・ウォー」ではヴィジョンと逃走生活を送り、愛を育んでいた。
ヴィジョン
トニー・スターク/アイアンマンをサポートしてきた人工知能“ジャービス”が、ソーの雷、ヴィブラニウム製のボディ、マインド・ストーンと融合し誕生した究極の人造人間。演じるのは、ジャービスの声を担当してきたイギリスの俳優ポール・ベタニーだ。
そのパワーはMCUでも随一の“強さ”と“便利さ”を兼ね備える。巨大化したアントマンを圧倒できるほどの怪力を誇り、ほかに空中浮遊、エネルギービーム、物体をすり抜けたり、姿かたちが変化する擬態能力も保持している。また性格は、機械だけあって冷静沈着。邪念もないためソーのムジョルニアを持ち上げることができる。
ヴィジョンとワンダは、「マインド・ストーンで生涯が大きく変化した」という共通点から心を通わせていく。機械と人間という最大の障壁を乗り越え愛を育み、「インフィニティ・ウォー」ではスコットランドで2年間の隠遁生活を送っていた。
ちなみに、原作のワンダとヴィジョンも恋に落ち、結婚。さらに双子の男の子も生まれる。ドラマでは果たしてどんな展開が待ち受けているのだろうか。
本作、見ておかないとマジでヤバい
なぜなら、この先のMCUと“密接にリンク”するから
「ワンダヴィジョン」をめぐって、ある噂が囁かれている。それは、今後のMCUの展開と密接にリンクし、重要なターニングポイントとなるということ。以降の作品が「本作を見ている前提で語られる」可能性もあるのだ。
○「ドクター・ストレンジ2」に繋がるとの噂も…?
本作は「ドクター・ストレンジ・イン・ザ・マルチバース・オブ・マッドネス(原題)」(2022年3月25日にアメリカで公開予定)と繋がる。マーベル・スタジオの社長ケビン・ファイギは両作の関連を示唆し、さらに「これまでの映画23本を見て、フェーズ4までを追いかけてきた観客には、たくさんの“報酬”が待っています」とのコメントも残している。
※参考記事:https://ew.com/tv/wandavision-marvel-cover-story/
ワンダがヴィジョンと幸福な生活を送る、という筋書きも不穏。ワンダはアベンジャーズで最も不安定なヒーローであり、正義と悪どちらにも傾きやすい。もし明らかになる“真実”が途方もなく残酷で、彼女がそれに耐えられなかったとしたら……。
コミックスでは、スカーレット・ウィッチとドクター・ストレンジは死闘を繰り広げている。それを考慮すれば、絶句する展開が描かれることも十分に考えられる。ワンダは光を見出すのか、闇に落ちるのか、それとも――。
また、そのほかの登場人物にも注目。「キャプテン・マーベル」のモニカ(キャロル・ダンヴァースの親友の娘)、「マイティ・ソー」のダーシー(ジェーンの親友)、「アントマン&ワスプ」のウー捜査官の名があることから、多数の作品との結びつきも予想できる。
つまるところ、フェーズ4の作品は「ワンダヴィジョン」の出来事が前提で描かれる、ということだ。本作未鑑賞だと、今後の作品を見た際に「このキャラのあの発言、どういう意味?」となりかねない。だからこそ、本作はMCUファンであればあるほど必見なのだ。
○マーベル・スタジオ初のドラマ…ディズニープラスでしか見られない!
マーベル・スタジオのドラマシリーズは今後、「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」(21年3月19日配信)、「ロキ」(21年5月配信)、「ホークアイ(原題)」(未定)などが控えており、ますますの盛り上がりをみせるだろう。
どれもこれも今すぐ見たい期待作ばかりだが、本作「ワンダヴィジョン」を含め、すべてディズニープラスでしか見られない。同サービスはMCUの過去作も鑑賞可能なので、加入しておくメリットは容易に想像できるだろう。
しかし「ディズニープラス=自宅でドラマ鑑賞」となると、映画館のような圧倒的な映像体験は味わえないのでは? その指摘は否定できない。とはいえ、また別の体験価値があなたを待っている、そう断言できることは確かだ。
同じくディズニープラスで配信された「マンダロリアン」が、それを証明してみせたばかりではないか。同作は視聴者に、映画よりも長く濃い物語を提供し、そして多くの海外ドラマよりも短い話数で“圧巻の結末”を見せつけた。
「マンダロリアン」も「ワンダヴィジョン」も、従来の映画や海外ドラマとは異なる“サイズ”の作品であり、だからこそ視聴者には“まったく新しい体験”をもたらすのである。
1話鑑賞レビュー「やっぱりすげ~わ、MCU」
期待してたけど、実際に見たら期待以上だった
最後に、筆者が第1話を鑑賞した感想を、短めに書き留めておこう。ネタバレを避けるため、具体的なシーンへの言及よりは、鑑賞中の感情面を中心に語っていく。
再生ボタンを押すと、ヒーローたちの姿とともにおなじみの「MARVEL」ロゴが浮かび上がる。しかし高精細な映像はやがてクラシック映画のようなモノクロに変化し、BGMはレコード音声のようにざらつき、50~60年代風の「ワンダヴィジョン」の物語にシームレスに突入する。この時点でワクワクはもう最高潮だからすごい。
今回、個人的に期待していたのはコメディの切れ味だった。実際に見てみると、ワンダとヴィジョンのやりとりに観客の笑い声が重なる、シットコムのクラシックな楽しさに浸ることができた。それでいて、セリフやシーンの面白さはこれまでのMCUのギャグリールをさらに研ぎ澄ませたように感じられた。
「MCUでシットコムをやっている」という構造自体を、ギャグとして機能させるセンスにも脱帽だ。そのエッジの効き具合は「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」「マイティ・ソー バトルロイヤル」「チーム・ソー」などと同レベルではないか。くすくす笑うくらいかと思っていたが、まんまと爆笑させられるシーンもひとつやふたつではなかった。
ところが、18分ごろに異変が待ち受けている。さあ、何があるかは見てからのお楽しみ。この世界の仕掛けが断片的に示され、ラストシーンには鳥肌がたつような映像がさりげなく仕込まれている。エンドロールを眺めながら、頭のなかで物語への予想がめまぐるしく駆け巡った。
第1話は設定など基本的な要素の紹介に時間が割かれるため、往々にしてスロースタートなものだが、それにしても胸に残る満足度はかなりのもの。第2話からまた時代設定が変わるというし、この先の展開への期待感、何かがある感は半端ではない。
期待はしていたが、仕上がりは期待以上。やっぱすげ~わMCU。25分間ほどの第1話を見終えて、というか最後の数分間を見た瞬間に、継続視聴はもう確定した。
Whatever it takes. 何があろうと「ワンダヴィジョン」の結末を見届けなければならないと、心のアベンジャーズが私を鼓舞した。