「強烈な映像感覚と役者陣の怪演によって破格のボルテージが充満」トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
強烈な映像感覚と役者陣の怪演によって破格のボルテージが充満
伝説のアウトローの生き様を描いた本作は、伝記物として捉えるにはかなり構成がいびつだ。そもそも冒頭の「この物語は全て真実ではない」という文字からしてタイトルとは相反するが、しかしどんな歴史も結局は体制側の論理で改竄されていくことを思えば、この映画の「フィクションの中にこそ真実がある」とのスタンスによってのみ、我々は主人公のリアルな精神状態へ迫ることができるのかもしれない。『マクベス』でも知られるジャスティン・カーゼル監督の美醜を混濁させた映像感覚は相変わらず。裏寂しい広大な荒野を真っ赤なドレス姿で疾走する情景を繰り返し用いつつ、時折、絶え間なき閃光やゾートロープに似た奇妙な絵作りで表現される映像も強烈だ。何より特筆すべきは凄まじい眼力を放つ子役と、ジョージ・マッケイの怪演ぶり。二人のリレーによって主人公の半生が、通常の伝記映画とはあまりにかけ離れた破格のボルテージで、ここに狂おしく完結した。
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