「少女時代の自分と手を繋ぎながら見た幸せな2時間」THE FIRST SLAM DUNK AZUさんの映画レビュー(感想・評価)
少女時代の自分と手を繋ぎながら見た幸せな2時間
連載終了してから26年経った今でも、なぜ私がこの作品を愛し続けているのか。それはこの作品が、葛藤や成長や人間の機微を、とても丁寧にリアルに描かれているからです。
登場してくるどのキャラクターにも自分を当てはめることができると同時に、私もこうなりたいという一歩先の憧れを描いてくれるので、いつも見た後は私も頑張ろうと前向きな気持ちにさせてくれます。
26年前の学生の頃と社会人生活を13年過ぎた今では、感じることも響く言葉もあの頃とは少し違うけれど、やっぱりSLAM DUNKが魅せてくれる世界は、私にとっては原点で、基盤なんだと映画を見て思いました。
今作は原作で一番の名勝負と言われる山王工業高校とのIH2回戦目を描いているんですが、だからといってただ原作通りにそれを描いている訳ではありません。
井上監督が、人生は短いからただ過去の話をなぞるとか、焼き増しするとかではなく、今の自分だから描けるSLAM DUNKを描きたいとおっしゃってつくられた本作なので(だからタイトルにTHE FIRSTを付けています)昔からファンの私のような人も、今回初めてSLAM DUNKに触れる人も、みんなまだ見ぬ漫画の1ページをめくるときのドキドキ感を味わうように、初めてのSLAM DUNKを体験することができる作品になっています。
また試合のシーンでは実際のプロのバスケ選手にモーションアクターとして映画のシーンを再現してもらい、そこに3DCGを当て込んでいるのですが、よく見る無機質なツルッとした3Dではなく、井上監督の絵のざらっと感を残しつつ、絵のぬくもりを感じることができ、初めて見るような技術を使っています。確かにアニメなのに、ここまでリアルなスポーツアニメを見たことはありません。その点から見ても衝撃が大きかったです。
「こんな作品初めて見た…」とまさにTHE FIRST尽くしの作品なのです。
声優が変わった。主題歌も変わった。作画も見慣れた2Dではなく2Dと3DCGのハイブリッド技法。前情報もほとんどなく、全てが異例で予想外で、それ故に映画公開前は連日映画への批判コメントが溢れていました。
けれど、作品を見た瞬間それを一瞬で黙らし蹴散らすほどの作品でした。実力で黙らすってこう言うことだと、かっこいいと心から思いました。
26年経った。
でもその長い期間を一瞬で越えて、色褪せないどころか、より生き生きとパワーアップして帰ってきた彼らを、多くの人に見てほしいです。