「リョーちんを深堀りする真正スラダン」THE FIRST SLAM DUNK しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
リョーちんを深堀りする真正スラダン
第46回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞受賞作。
通常スクリーンで鑑賞。
原作マンガは未読。
原作者が脚本と監督を担っている時点で、もうひとつの原作と呼ぶべき作品ではないかと思う。主人公を桜木花道から宮城リョータに変更し、キャラの掘り下げが行われていた。
そのドラマがなんとも見応えがあり、エモーショナル。
死別した兄へ抱く想い。母との不和と和解。迸るバスケへの情熱。こんなにもドラマに満ちたバックボーンを抱えていたのかと、リョーちんのキャラに深みが生まれ、魅力が増した。
テレビアニメでは描かれなかった全国大会・山王戦が映像化され、その試合の合間合間で上記のドラマがリョーちんの回想の形で挿入。下手すると試合のテンポを阻害しかねない構成だったものの(実際阻害している個所もあるが)、回想と試合における状況がリンクし、または過去の感情が伏線となって試合の中で回収され、さらなる熱いドラマを生み出すと云った相乗効果を齎していて、終始惹きつけられた。
その試合のシーンも映画館のスクリーンと音響で観てこそ味わえる迫力と感動に満ちている。原作の画がそのまま立体化し躍動しているかのような3DCGで描かれた試合は、画づくりと言い、音響と言い、ダイナミック且つスピーディーだ。
ライブ感覚で試合を観ているかのような臨場感だった。先の読めない一進一退の攻防に手に汗握り、勝敗が決する瞬間に無音になる演出もいい。思わず息を止めてしまった。
晴れて円盤化した暁には、試合のシーンを連続で観られるように編集した特典映像をつけて頂きたいところである。
一本の映画として成立させるためにひとつの試合を描き切ることに注力していて潔く、主人公のリョーちんだけでなく他の人物(主にバスケ部員)の見せ場もつくっている構成の巧みさはまるでマンガのコマ割りのように緻密で大胆。
ストーリーに関しても要素の取捨選択・換骨奪胎が素晴らしく(原作等で山王戦に至るまでの流れを把握している前提で端折られている個所は見受けられたものの)、キャラの心情などを説明し過ぎない映画的演出が見事だと感じた。
[余談]
マンガやテレビアニメでは描き易かったであろうコメディー要素が思い切ってオミットされていたのが残念。作劇上仕方の無いこととは理解出来るのだが、私が「スラムダンク」に求めているのは花道を中心としたコミカルな部分も含めての面白さだったから、好みの分かれる部分ではないかと思った。
[以降の鑑賞記録]
2023/05/03:T・ジョイ梅田
2023/07/29:T・ジョイ梅田(夜帯上映,ドルビーシネマ)
2023/08/03:大阪ステーションシティシネマ(山王戦当日)
2023/08/30:T・ジョイ梅田(ドルビーシネマ)
2024/04/04:Ultra HD Blu-ray
2024/06/14:Netflix
2024/08/30:T・ジョイ梅田(復活上映,ドルビーシネマ)
※修正(2024/08/30)