「スラダン初見でも楽しめる最高クオリティのアニメ映画」THE FIRST SLAM DUNK といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
スラダン初見でも楽しめる最高クオリティのアニメ映画
スラムダンクは漫画もアニメも見たことがありません。有名な作品ですので、ざっくりとあらすじを知っている程度の事前知識でした。未読の漫画の映画化作品なので、正直観るかどうか迷っていたのですが、あまりに評判が良いので公開から3カ月も経ってから、今更ながらの鑑賞です。
結論ですが、スラムダンク初見でも全く問題なく楽しめる傑作アニメ映画に仕上がっていました。
原作を知っていれば分かるような小ネタがあちこちに散りばめられていたらしいですが、それが分からなかったとしても面白さが減衰することはありません。もしも以前の私のように「スラムダンク読んだことないから映画も観ない」って方がいらっしゃるなら、その選択はあまりにも勿体ないと伝えてあげたいです。
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1990年から1996年まで「週刊少年ジャンプ」に連載された伝説のバスケ漫画のアニメ映画。沖縄で生まれ、優秀なバスケプレイヤーだった兄の影響でバスケを始めた宮城リョータ(仲村宗悟)。兄の死をきっかけに神奈川へと転校した彼は、バスケ弱小の湘北高校へと入学する。二年生に進学した彼と、入学時とは見違えるほどに成長した湘北高校バスケ部が、全国大会連覇の王者・山王工業に挑む。
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本来、主人公は赤髪坊主の桜木花道です。それはスラムダンク未読の私でも知ってます。しかしこの映画の主人公は、明らかに宮城リョータです。つまり本作は、「スラムダンクの映画化」というよりは、「スラムダンクを別視点から描いた映画」と呼べるかもしれません。原作ファンの方々のレビューも拝見したのですが、皆さんここに驚いていましたね。原作での宮城リョータはキャラクターの掘り下げがあまりされていない人物だそうですが、この映画では紛うことなき主人公でした。
そういえば、野球漫画の『MAJOR』でも、主人公の吾郎が野球部のない高校に転校して、野球素人たちを集めて野球名門高校に戦いを挑むというシーズンがありましたね。本作の宮城リョータは『MAJOR』の主人公の吾郎と全く同じことをしています。弱小高校に入学して、王者に挑む。めちゃくちゃアツい展開ですね。バスケの師匠でもある兄のソータが掲げた「山王を倒す」という目標に、弟のリョータが挑む。過去の因縁に決着をつける最高のストーリー。話の概観は同じでも、原作とは違う目線で描くことで新鮮さがあり、尚且つ初見でも楽しめる作品になっていました。多分原作通りに花道を主人公にして、特訓のシーンとか流川との因縁とかを描いていたら、映画の尺に収まりきらなかったでしょうから。
また、多くのレビュアーさんがおっしゃるように、映像も素晴らしかったですね。
本作は3Dアニメーションによって製作された作品ですが、私が今まで観てきた3Dアニメ作品って、なんだか観ていて違和感を感じることが多かったように感じます。しかし本作では、そういう3Dアニメ特有の違和感が全くと言っていいほどありませんでした。映画のどの瞬間を切り取っても、井上先生の描いた漫画から飛び出してきたような映像になっていました。
とあるCGクリエイターさんがおっしゃっていたんですが、よくできたキャラクターフィギュアでも角度によっては違和感を感じる(そのキャラクターに見えない)ことがあるように、3Dアニメでは一つの3Dモデルを作ってそれを動かしただけだと、キャラクターの角度によって観客が違和感を抱いてしまうそうです。そのため、おそらく本作では色々な角度ごとに3Dモデルを何種類も作成して、シーンごとに使い分けしているようです。これは非常に地道で骨が折れる作業でしょうし、おそらく原作者であり本作の監督も務めた井上雄彦先生が強くこだわった部分でもあると思います。
声優の交代に関してファンの中で賛否両論あるらしいですが、私は過去のアニメシリーズを鑑賞していないので全く違和感なく鑑賞することができましたね。私も声優オタクの一人として、批判している方の気持ちも理解できます。しかしながら、30年も前のアニメと同じ声優を用意して同じ役をやらせるというのは、年齢による声質の変化もあるでしょうから難しいんじゃないかなというのが正直な見解です。スラダン初見の私から見れば、声優変更はプラスに働いているように感じました。
非常に素晴らしいアニメ映画でした。公開から4カ月が経過し、間もなく上映も終わりそうな雰囲気がありますので、観たことない方は早めに劇場での鑑賞をお勧めします。