「これは最高に惜しい、『一見さんウェルカム』なスラムダンク」THE FIRST SLAM DUNK momijiさんの映画レビュー(感想・評価)
これは最高に惜しい、『一見さんウェルカム』なスラムダンク
素晴らしい映画だった。
ただし、山王戦に集中すべきだった。
宮城のシナリオは別にすべきだった。
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前評判では声優が〜などと本質でない話で炎上していた期待作。
先に言っておくと自分は原作しか読んでいないので、声優問題はあまり関係無いと思っていた。
さて鑑賞。感想をまとめると以下の通り。
・声優は(自分的に)全く違和感無し。山王の河田(兄)が特にピッタリのイメージで良かった。
・CGベースの作画もこれはこういうもんだ、という感じ。人によってはぬるぬると動く様や、ユラユラとする立ち姿は違和感かもしれない。ジョジョやはじめの一歩のアニメ化は素晴らしいと思うが、それと比べるのはお門違いとも思う。井上雄彦の『表現』『アート』としてどうか?と問われれば、これはこれで良かったと素直に思う。
・名場面、名シーン、名セリフが軽すぎ。遠い距離で呟いていたり、一瞬で終わったり。特に前半戦はひどい。それと三井の『バスケがしたいです』桜木の『天才ですから』が無いのは致命的。
魚住の大根剥きシーンがどうでも良いモブキャラの小悪魔(?)に変えられていたのはもはや怒りしか感じない。
個人的に最も悲しかったのは、桜木の『返せ…』の全身身震いシーンがあまりにあっさりしていたところ。あっさりどころか聞き取れないレベルの軽さ。
・後半戦、三井の名シーン(コート上)、宮城の名シーンは鳥肌が立つほどイケていた。三井の『静かにしろい…』のシーンは映画の山場の一つ。一切の音がなく、観客も音を立てられない程の緊張感〜からのテンションマックス。宮城の『ドリブルこそが…』のシーンは山王2人の隙間から見える宮城の瞳が素晴らし過ぎる演出。
・最後の1分、逆転からの再度追いつかれ〜左手は添えるだけのシーンがこの映画の最も盛り上がる最高の数分間(劇中では1分)。キャラクター全てにスピード線のエフェクト、原作と刹那のオーバーラップ、BGMもMAXビート、これ以上ない最高のお膳立てからの…『左手は添えるだけ』をあえて口の動きだけで表現、からの『流川から桜木へのパス』からの『庶民シュート』からの滞空時間たっぷりとってのゴール。
言葉にならない程の完璧な演出。
・沢北のサイドストーリーは微妙。自主トレ中に神社にお参り(?)するシーンは山王敗北を分かりやすくする為の演出でしか無いし、原作の『這いあがろう…』の後に号泣するシーンは少しガッカリだった。(他のチームのエースならともかく、沢北は流川のように最後まで皆の前では涙は見せないと思っていたので)
・NBA(?)で沢北の相手はコレじゃない感しかなかった。宮城をディスる訳ではなく、であれば流川や桜木もいるはずだろ?と言いたい。
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山王戦だけだと尺が埋まらなかったのは分かる。
スタメンでキャラ背景が薄かった(設定が無かった)のが唯一宮城だったのも分かる。
だからと言って『山王戦に宮城の背景作って混ぜちゃえ』は正解では無いと感じた。
個人的には山王戦に集中し、前夜のやり取りを膨らませるなどでうまく構成して欲しかった。(南が出てくるシーンや海南陵南メンバーとうまく絡ませるとか)
思うにこの映画は『一見さんウェルカムなスラムダンク』だったんだな、と。
予備知識なく観ても宮城の話で起承転結がある。
逆に先述の私の提案した様な話では『誰これ?』みたいになる。
だけども、ありえなくとも、自分は『スラムダンクファン向け』の映画であって欲しかった。
『ピアス』的な話は二本立ての一つにして欲しかった。
冒頭に述べように
山王戦に集中すべきだった。
宮城のシナリオは別にすべきだった。
つくづく思う。
最高に惜しい、『宮城リョータのストーリー』だったと思う。