劇場公開日 2022年12月3日

「鑑賞者をカンペキに選別する内容」THE FIRST SLAM DUNK Geso_de_Nyoroさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5鑑賞者をカンペキに選別する内容

2022年12月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

興奮

自分はバスケが全く解りませんが、作品としてのスラダンや八村塁選手の存在くらいは知ってます。が、いずれも失礼ながら何が凄いのか、ドコが凄いのかは‥‥ あ、でも八村選手ってリョータをリスペクト‥‥してないですよね別にw イヤ髪型が何となく。

この漫画作品はコテコテの信者が存在する程の名作なのは知ってますが、自身は原作をチャンと読んでいません。初心者・花道、問題児・リョータ、身勝手・流川、MVP・三井、ゴリ・赤木、5人のメンツに加えメガネ君やマネージャーの彩子、タプタプ監督など脇役の存在を辛うじて記憶してる程度です。
この作品は、そんな良くも悪くも中途半端なオッサンの自分だからこそ、ヒューマンドラマとして〝面白かった〟のかも知れません。当初『中の人』の違いで放映前に既に萎えていたファンや、原作を信仰する程に入れ込んだファンの方々にどう映ったでしょう?

まず、前知識皆無の真っ白な一見さんには厳しいと思います。ある程度の予備知識がないと諸々のアレコレが意味不明に映ることでしょう。少なくとも各キャラのポジションくらいは抑えていないとダメですが、だからと言ってバスケのルールまで把握する必要はありません。そう云う前提で制作されています。
内容は、高校バスケ王者・山王との一戦をベースに、リョータの生い立ちを軸に展開していきます。ぶっ続けで試合を展開させるのではなく、折々にリョータはじめチームメイトの悲喜交々を織り交ぜた、良くある構成です。ただナゼか花道だけは試合外のエピソードがあまり露出しません。

試合展開はCGを駆使したリアリティと躍動感に満ち溢れた、良く動く動画です(アニメが苦手とする部分をシッカリ抑えている)。若干ノッペリ感が見られるものの、激しい動きでその辺が掻き消され、気になる程ではありません。
また原作者・井上雄彦氏の、汗臭いキャラの濃い『野郎ども』がカッチョ良く描かれ、描き下ろしポスターから伝わってきた胸アツはそのまま本作品にシッカリ表現されていると思えます。

ところが、原作者が脚本・監督をも務める本作は、だからこそ表題の通り『鑑賞者を選別』してしまった感が否めません。
古来のファンは原作漫画や初期アニメから受けた影響を、各々が心の奥で大事にしていた事でしょうが、監督の井上氏は恐らくそれを汲み取る事はしないでしょう。蓋を開けたら期待したものと違った、という琴線が響かない方も少なくないと思います。
それは『すずめの戸締まり』等の興行作品とはまた違う、作者個人の思想とファンのソレがイコールではない作品の難しさでしょう。

ですが今の若い人達なら、ソコまで入れ込んだ感情の影響が少ないと思われ、率直に受け入れてもらえるのではないでしょうか。折しも『サッカー・ワールドカップ』で強敵ドイツ・スペインを下して決勝に進んだ日本代表の快挙もあり、エモさに拍車がかかったのでは?
あくまで勝手な妄想ですが、女子ウケしそうな作品ではないかな、と‥‥

Geso_de_Nyoro