劇場公開日 2021年1月30日

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「戦争を待ち望む者たち」シャドー・ディール 武器ビジネスの闇 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5戦争を待ち望む者たち

2021年2月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

この作品は、自分には知識がなさ過ぎて、お手上げ状態だった。
一つ一つの顛末をたどることなく、どんどん先に進むし、文字データも乏しい。
ただ、時事に詳しい人ならよく知った歴史のはずで、良い“振り返り”になるのではないだろうか。
そして、“歯に衣着せぬ”告発は、ドキュメンタリー映画ならではである。マスメディアでは、ここまでは言えまい。

映画は、サッチャー政権とサウジアラビアとの黒い結びつきの話から始まる。
全体として、アメリカとイギリスの武器輸出が中心で、買い手として主にサウジアラビアが絡んでくる内容である。
アメリカの中南米への軍事介入から、「イラン・コントラ事件(1986年発覚)」へ。
そして、米軍のイラク侵攻(2003年~)を含む、中東の終わりなき紛争。

武器商人にとっては、戦争が常に起きていれば良い。勝ち敗けは問題ではない。“永続”させることだ。
テストしなければならないし、売らなければならないし、使わなければいけない。
軍需品にも、保証期間があるのだ。ガザは2年毎に侵攻されて、武器の見本市になっているという。
アメリカは、アルカーイダにさえ武器を提供する。レーガンだろうが、ブッシュだろうが、オバマだろうが関係ない。政治家は、武器のセールスマンだ。
サウジアラビアのイエメンへの軍事介入(2015年~)は、失敗だったと言われている。しかし、大量に購入した武器のテストや在庫整理だと考えれば、元は取っているのではないか?

ただ自分としては、「武器ビジネスの闇」という本筋よりも、ほんの一部の権力を握る者たち、そしてロビイストを使って影響力を行使する者たちが、国家を私物化する姿が苦々しい。
国民には、本当の原因や“駆動原理”が知らされないままに、戦争が進行する。
今の日本だけでなく、公聴会で厳しく追及されるアメリカでさえ、やりたい放題のあげくに、結局うやむやにされてしまうのかと、絶望的になった。

とはいえ、「腐っても鯛」というか、英米だからこそ、情報が出てくるのであろう。
今後10年以内には、中国あたりも輸出側として世界的存在感を高めるであろうから、完全にブラックボックス化した武器ビジネスが横行するかと思うと、ゾっとする。

Imperator