オートクチュールのレビュー・感想・評価
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世界トップクラスの老舗ブランド、オートクチュールのお針子さん。
DIORのオートクチュールのアトリエを舞台に、引退直前の超ベテランのお針子女性がひょんなことから移民の女の子をスカウトし、衝突しながらも育てていくお話。特に大きな見せ場はなくても、人間ドラマに引き込まれてついつい見入ってしまうのは仏作品ならでは。
そして、平坦な布が立体的なドレスになっていく…
チュールにタフタ…
ドレス好きにはたまらんよ!
ただ、せっかくの「オートクチュールのアトリエが舞台」という珍しい設定、もっと面白くできたような気はする。ジャドちゃんの恋愛も中途半端な描き方で、要らなかった感じ。焦点がぼやけた。
でもやっぱりフランス映画のこういうこだわりの強い雰囲気、好きなんだわあ。
シルクの裸エプロン
水曜日のサービスディのシアターはご婦人方でいっぱいでした。オートクチュールって昔よくラジオのCMで耳にしました。
じゅわいよくちゅーるマキ。
じゅわい・よく・ちゅーる?
じゅわい・よ・くちゅーる?
じゅわいよは joyaux=宝石
くちゅーるは couture=縫製、仕立て服の意味らしいです。
ディオールに長年勤めてきたベテランのお張り子さんのエステルはお張り子のトップとして最後の年を迎えようとしていました。母親もそうだった。仕事一筋でかまってもらえず、15で同じ道に入ることで認めてもらおうと必死に生きてきた。その結果、自分の娘にも同じような淋しさを感じさせてしまったと思っていて、疎遠になってしまった娘とは別々のひとり暮らし。糖尿なのにお菓子や炭水化物が主食。健康より仕事を優先する職人気質。体調を崩しがちで、ジャドに助けられる。タバコ🚬もよく吸います。
高級なシルクの生地を扱うのにヤニ臭くなんね~のかよ❗
と何度も思いました。
自分はマクドナルドでポテトばかりのなのにエステルの健康を心配する優しい娘のジャド。
フランスのパリ郊外の団地住まいのティーンエイジャーのジャドは同じ棟の下の階にすんでいるイスラム教のアラブ系の移民の友達のとひったくりや手先の器用さを活かしてスリ稼業でのその日暮らし。病気で臥せっている母親と二人きり。でも、熱心に母親の世話を焼くヤングケアラーなんかではありません。
映画の冒頭、通勤時間帯の地下鉄で居眠りしてい青年のギターを失敬して、地下道で即興の弾き語り。旨いじゃない。そこへ通勤前のエステルがボーッと立ち止まって聴いているところを友達がバックを引ったくって逃げる。あっけにとられて立ち尽くすエステルに「捕まえるから待ってて」と嘘言ってギターをあずけて逃げる。
いっぱしのプロですな。
エステルはギターを持ってそのまま出勤。
この前まで公開していた映画【GAGARINE】でロマ族の娘でヒロイン役だったリナ・クードリがジャド役なので観ました。主に北アフリカ系などの多民族国家でもあるフランスの庶民の現状を描いた映画として、2本立ての続きを観ているみたいでした。ガガーリンも雰囲気のあるいい映画なので、リナ・クードリを気にいった方は観て下さいな。
エステルのバックにはユダヤ教徒の証の金のネックレスが入っていました。
ジャドはバックのなかの社員証を見て、エステルの働くパリのディオールのデザインスタジオ(アトリエ)を訪れる。警備員もアラブ系の男。
もちろんオネエも出てきます。
炭水化物ばかりのエステルの食事習慣を改めてようと野菜中心の食事を作ってあげようとする場面ではオネエが大きなズッキーニを見て、「美味しそう」と言います🤭
一番気になったのはデザインスタジオにいるいかにも東欧出身の綺麗なモデルさんでした。透き通るような白い肌に小顔。髪もプラチナブロンド。
シルクの裸エプロン風シーン。左斜め後ろからのはみ乳シーンがとても素晴らしかったです。
このモデルさんはタイムガードは押さないものの、アトリエに丈の短い純白のガウン一枚の薄着姿で、一日中立っているらしい。ホント?
普通にマネキン(トルソー)もあって、作りかけのドレスを掛けて、直接裁縫する場面もありますが、モデルさんに着せて、直接裁縫する場面があります。病的に意地の悪い中堅のお張り子がいて、ヒール役を発揮する恐ろしい場面があります。
男のお張り子さんもひとりいて、まずまず重要な役ですが、それは観てのお楽しみに。
なかなかセリフは辛辣で、ジャドは恩人のエステルに「しわしわババア」呼ばわりします。
でもそれだけ、お互いとても気になる運命的ものを感じて、師弟愛を越えて二人が成長するハートフルヒューマンドラマで、大変よかったです。
リナ・クードリはキリッとした美人さんで、アルジェリア人の血が混じっている。
今後が楽しみな若手です。
でも、正直に言いますといちばん気になったのはモデルさんでした。
【”伝承"ディオールのオートクチュール部門を統括する女性が、奔放だが天性の縫製技術の素養を持つ若き移民の女性と出会い、紆余曲折を経て、夫々の新しき道を切り拓く姿を描いた作品。】
ー 縫製をテーマとした映画と言えば、ポール・トーマス・アンダーソン監督の「ファントム・スレッド」を想起するが、今作でのハイファッションブランド、クリスチャン・ディオールのオートクチュール部門で黙々と働く女性達の姿も印象的だ。
シルクやモスリンの生地を裁断し、縫い合わせ一つのドレスを分業制で製作していく。
勿論、一品モノであり出来上がり近くになれば、モデルの女性が半裸になりながらドレスを纏い、裁縫士の女性達は細かい修正をしていく。
通路には、汗の匂いを消すために香水を振りまく女性が歩く。
そして、その全体を妥協なき厳しき目で見ているのは、定年間際のエステル(ナタリー・パイ)である。-
◆感想
・ハイソなエステルと、移民街の団地で暮らすジャド(リナ・クードリ:今、注目の女優さん)との接点は内容に見えたが、意外なところにあり、ジャドのスリ仲間がエステルのバッグをひったくる所から始まる。
- ジャドが、別の有色系の友人にエステルのバッグの中にあったネックレスをプレゼントしようとした際に、逆に咎められ、ジャドがエステルに返しに行くシーン。
ジャドの言葉遣いは粗いし、彼女の母ミュミュは”歩けない”と言って怠惰な日々を送る風景が描かれる。-
・だが、エステルは彼女の指使いを見抜き、自らのアトリエに招き、御針子の見習いとして働かせる。エステルとジャドは時に反発しながらも、距離を縮めていく。
- そして、徐々に描かれるエステルの孤独。彼女は縫製士として仕事に熱中する余り、娘との仲は疎遠になっていた。ジャドはその事実に気付き、自分の境遇と照らし合わせる。
ジャドの言葉遣いも多少、品よくなり・・、トオモッタラ・・。-
・オートクチュール部門には、意地悪なアンドレを始め、様々な女性が働いている。だが、エステル無しでは部門は成り立たない。ジャドは、同じ部門のアベルと恋仲になりながら、そして時にエステルの怒りを買いながらも、オートクチュール部門でなくてはならない存在になって行く。
そんなある日、糖尿持ちのエステルは階段から転げ落ち、手首を骨折。途方に暮れる部門の人々。エステルにとって、最後のショーの日が近づいていたのだ。
・ジャドは縫製士の楽しさに目ざめ、エステルを叱咤激励し、甘えた母親を一喝し、(私は、あんたの面倒を見るために生きてるんじゃない!ウワワ・・。)最後のショーの日を迎える。
- それまで、”歩けない・・”と言って娘に頼りきりだった母ミュミュは”自力で歩き始め”、意地悪なアンドレを皆が糾弾し(彼女にも事情が有るようであるが、上手く描かれてはいない。)無事にショーは終了する。-
<そして、娘の携帯に電話するエステル。”・・今度、会いに言っても良い?・・”
ジャドは友人達、母、恋人との距離を更に縮める。
そして、新年のお祝いをする移民街の団地の人々を見上げるエステルとジャドと友人達。
今作では”What a Wonderful World"(ルイ・アームストロングの曲ではない)が時折流れるが、エステル、ジャドを始め、それまでどこか鬱屈していた人たちが、ドレスを制作する過程で、新たな人生の第一歩を踏み出す姿が、印象的であった作品である。>
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