「【”私は苛められて居る、何故誰も助けてくれないの?””君は世界を守れ、俺は君を守る!”苛烈な受験戦争の中人間性を失わずに生きる少女と陰ながら支える不良少年の心の繋がりを描いた琴線に響く作品である。】」少年の君 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”私は苛められて居る、何故誰も助けてくれないの?””君は世界を守れ、俺は君を守る!”苛烈な受験戦争の中人間性を失わずに生きる少女と陰ながら支える不良少年の心の繋がりを描いた琴線に響く作品である。】
■母子家庭で進学校に通う高校3年生のチェン・ニェン(チョウ・ドンユイ)は、大学進学だけを夢見て勉強に励んでいた。
ある日、同級生の女子フーがクラスメイト、ウェイ達のいじめを苦に校舎から飛び降りてしまう。
その子を憐れんだチェン・ニェンは、彼女の遺体に上着を掛けて上げるが、ウエイ達激しいいじめの対象となってしまう。
ー 日本でもそうだが、中国、韓国の大学受験の過酷さは筆舌に尽くし難いと、現地で働く仲間に聞いたことが有る。
中国では今作でも名が出た北京大学や清華大学。韓国ではソウル大学である。
今作でも言及されているが、入学出来るかどうかで人生が大きく変わるそうである。
故に受験に失敗した若者の自殺率は(中国では未公表)日本を遥かに上回るらしい。
社会的な構造の不備であろう。
故にそのプレッシャーから苛めが続発していたそうである。-
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・チョウ・ドンユイ演じるチェン・ニェンが、級友で口を聞いた事もないフンが飛び降りした際に、誰も彼女の死体に近づかない中、彼女だけがフンの遺体に上着を掛けて上げるシーン。
ー ”こんな姿を見せたくはないでしょう・・。”という彼女の姿。善性溢れる彼女の性格が伺われる。だが、そんな彼女の姿を見て、苛めのリーダーである一見育ち佳きウェイの攻撃先はチェンに向かってしまう。-
・そんな中、母が借金取りに追われる中、一人で暮らすチェン・ニェンは、幼き時に母に捨てられ、不良少年になったシャオベイに助けられるのである。
ー 二人がぎこちない雰囲気の中、食事を摂るシーン。だが、二人は短き会話を交わす中で自分達は同じ境遇だと知るのである。ベッドで背を向けながら二人が流す涙。-
■そして、チェン・ニェンは苛めにより、髪をウェイ達に刈られてしまう。だが、その姿を見て、シャオベイも自らの髪を坊主頭にするのである。
”少年の君”というタイトルはこのシーンから来ている。
・チェン・ニェンは受験を前にしながら執拗に付きまとう(自分の苛めを、受験のために隠したい・・。)ウェイを階段から突き落としてしまう。
ー それを知って、チェン・ニェンの行為を全て自分が行ったと警察に言う、シャオベイの姿。-
■”ドブに住んでいても、星空を眺める者はいる。”
・そして、チェン・ニェンはシャオベイが全ての罪を被る中、受験をするのである。
■涙溢れる、白眉シーン
・年月は過ぎ、チェン・ニェンは教師になっている。
そして、明らかに苛められて居ると思われる、女子生徒と一緒に帰宅するのである。
その少し離れた後ろから、シャオベイが二人を守る様に歩いている姿。
正に”君は世界を守れ、俺は君を守る!”を、チェン・ニェンの代わりに罪を償ったシャオベイが実践する姿に涙が溢れるシーンである。
<今作は、苛烈な受験戦争の中、人間性を失わずに生きた少女と、彼女を陰ながら支えた不良少年の心の繋がりを描いた作品である。
傑作であろう。>
■私事であるが、今でも年に2回ほど悪夢に襲われる。
内容は第一志望の大学受験の二次試験の際に残り30分を過ぎても回答用紙が真っ白であり、無茶苦茶焦る自分の姿である。
汗びっしょりで飛び起きる。完全なるトラウマである。
だが、そんなキツイ経験を10代にした事で、今や安寧なる生活を送っているのだな、と思うのである。
【そして、当たり前だが、自分が如何にキツクても、それを苛めという形で発散してはイケナイという事を今更ながらに思い出した作品である。】