劇場公開日 2021年5月8日

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「混沌の中の核」なんのちゃんの第二次世界大戦 Noriさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0混沌の中の核

2021年5月21日
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鑑賞方法:映画館

笑える

知的

幸せ

(一時期、映画.comにログインできず、今は基本filmarks使っています。以下filmarks記載分より転記)

一作目「極私的ランナウェイ」(2012PFF入選。会場で鑑賞)、二作目「ひつじものがたり」(ゆうばり出品しており当時スカパーで観た)。
数年の潜伏期間を経て放たれた、河合健監督第三作。

圧巻。圧倒的112分。
遥か遠くの記憶としての太平洋戦争、その意味するものは何か。
現在まで脈打つ光と陰、多面的存在としての人間という生き物。

「人に聞けば聞くほど、もうわけがわからなくなってくる。」「その感覚をそのまま映画で表現しようと思った。」と河合監督は述べている。
訳の分からないものを、訳の分からないまま表現する、その危うさ。カオスの淵に沈んでしまってもおかしくない、ギリギリのところで踏み止まり、カオスはカオスのまま取り込みつつ、絶妙なバランス感覚で作品としてまとめ上げていく。
亀に託されたメタファーや河合監督の捧げているオマージュ(映画の浴び方が足りず全ては分からないけれど)、エンタメであることを忘れず、かつ、人間の無意識の中にある、ヌメっとしたモノを掴みにいく感覚。
笑ったし、時に唸ったし。
つまらなかったらどうしよう、と(ほんの少し)思っていたが、杞憂に終わった。

おそらく大した予算はなかったと思うけれど、ここまで冒頭からラストまでしっかり作り込めるとは。脚本がすばらしく、映像の質もそこらのいわゆる商業映画と比べて全く遜色ないと感じた。

この監督は化ける。いやもう化けているのかもしれない。

今年、コレを超える作品に私は出会えるのだろうか。

Nori