漁港の肉子ちゃんのレビュー・感想・評価
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驚くべきアニメの芝居の力
すごい。芝居でこれだけ魅せられるアニメはなかなかない。総作監の小西賢一氏がいればこその超絶作画芝居なのだが、高畑勲から受け継いだ人間をアニメで描くスピリットの真髄がここにある。
肉子ちゃんと他のキャラクターのキャラクターデザインはまるで異なっているのも面白い。複数のトーンの異なる絵柄が共存させるのは作品のリアリティラインを混乱させることもあるのでなかなかできることではないのだが、作品世界の統一感を破綻させることなく、全体が見事にコントロールされている。
肉子ちゃんのキャラクターは、もしかしたら生身の人間が演じたらかなり嫌味で危ういキャラクターになるかもしれない、キャラデザを他のこの作品の他のキャラのようにしていても、同様だったかもしれない。あのキャラデザでなくては描けない人間像というのがあった。かなり戯画化されているが、そうでなくては描けない人間の本質があるのだと思う。正直感服した。
明石家さんまがプロデュースしたのは、笑いでなく、「リアルジブリ」の世界観。
まず本作はタイトルから不思議な感じですが、ちょっとファンタジー感のある、漁港の「船で暮らしている」という親子の物語がベースにあります。
スタジオジブリ1期生だった小西賢一がキャラクターデザイン・総作画監督を担当していて、作画の雰囲気が古き良きジブリ感を醸し出しています。
また、美術監督が名作「鉄コン筋クリート」の木村真二で、こちらも風情のある古き良き伝統的なジブリ感を醸し出しているのです。
そして監督は、名作「ドラえもん のび太の恐竜2006」で初の長編作品監督を務めた渡辺歩で、メインの肉子ちゃんは「ドラえもんっぽさ」も醸し出しています。
明石家さんまがプロデュースしたということで、笑いを重視した作品になっていそうですが、あくまで原作の、訳ありの親子関係に関心を持ったのが最大の理由のようで、軸の太さは後半になると、より明確化していきます。
ジブリ作品の場合はファンタジー要素が多いイメージがあります。一方、本作は、人間関係等もとことんリアルになっていて、「リアルジブリ」というイメージです。
また、本作は、ジブリ作品のように、食事の描写にもこだわりを持っていて、本当に美味しそうなのです。
もちろん、ジブリ作品の後継を狙ったわけでもなく、才能あるスタッフが集結した結果として本作が生まれたのだと思います。
そして、明石家さんまが2年間アニメーション制作に向かい合った作品なので、他の映画とは違った形で小ネタを入れてもいて、ここは好みが分かれる部分なのかもしれません。
声優陣のプロデュースは流石で、娘・キクコの声を声優初挑戦のCocomiが務めています。これは細田守監督の「時をかける少女」で見事に主演の声優を演じ切った仲里依紗のような上手さがありました。
また、「鬼滅の刃」の花江夏樹と下野紘も参加していて、花江夏樹は二宮という重要な役どころを担当していて、竈門炭治郎との違いに驚きました。下野紘は我妻善逸でのバリエーションの如く、トカゲ、ヤモリ、松本を巧みに演じ分けています。
肉子ちゃんの大竹しのぶも、特に1時間を過ぎた辺りのナレーションの時に、より上手さが発揮され、起用の理由がよく分かりました。
このように本作は肉子ちゃんのキャラクターデザインだけは強烈なものがありますが、最後まで見ると、きちんとリアルな人間関係を描き出し、心を揺さぶるアニメーション映画であることが分かります。
原作小説を軽やかにアニメ化、肉子ちゃんの変幻自在なビジュアルと声の芝居を堪能
肉子ちゃん役の大竹しのぶ氏のパワフルで芸達者な芝居、キクコ役のCocomi氏のはまり具合が素晴らしく、本作を見てから原作小説を読むと2人の声が聴こえてくるようでした。
肝っ玉母さん風の肉子ちゃんはアニメならではの誇張表現で変幻自在に動きまくり、精緻な画面構成と西洋絵画のような背景美術も見ごたえたっぷり。クオリティの塊のようだった「海獣の子供」を手がけた渡辺歩監督、キャラクターデザイン・総作画監督の小西賢一氏、美術監督の木村真二氏らの仕事を堪能できます。「となりのトトロ」オマージュふくめ、制作陣が楽しみながら軽やかに原作をアニメ化したように感じました。
肉子ちゃんたちの自宅を漁港内の小型船に変更するなど、ファンタジー要素を交えたポップな作劇になっていますが、原作の芯の部分はしっかりと描かれ、明石家さんま氏の名言「生きてるだけで丸儲け」を体現したような人間賛歌のドラマが貫かれています。
娘、きくりんから母、肉子ちゃんへの複雑な思い。
グラスボートの家
肉子ちゃんが大好き
吉本新喜劇の人情噺。
さんまちゃんプロデュースというコトでもっとコメディ寄りかと思ったけ...
さんまちゃんプロデュースというコトでもっとコメディ寄りかと思ったけどそうでもなかった。
特殊な境遇の母娘の日常が淡々と描かれており、正直途中で何見せられてるんや?状態に。
でもラストはしっかりと親子の愛や親しい人との絆なんかが描かれており感動できる。
キクリンいい子。
エンディング曲、GReeeeNのたけてんが良い。
しっかり伏線回収しとる
肉子とキクコ
こんな母ちゃんになりたい
肉子ちゃんの暖かさと懐の大きさのすごさは、ある程度年齢を重ねた今だからこそ気づけるものだと思う😭
自分の身を呈して人に尽くし、悲しみを人に見せずにいつも明るく笑っている...。
自分の母親の姿がかぶって、「こんな母ちゃんになりたい」とボロボロと泣いてしまいました。ガッハッハッと豪快に笑う感じ、家に帰ってきたら床で爆睡してる姿、すぐに恋してしまう少女な1面、ほんとに自分の母親に似ていた…。
肉子ちゃんが、最後、細い目をまん丸にして、優しく笑い、「おめでとう」というシーン、あれはズルい...。
そして、きくりんの大人びたキャラクターもとっっっても良かった。きくりんと二ノ宮のやりとりがとても愛おしかった。二ノ宮くん実はめちゃくちゃ美形でかっこいいし、言うことが素敵で好き。お似合いの2人!
二ノ宮くんが「まりあちゃん、お姫様みたいで可愛いと思う」って言ったのもなんか「あ〜、この男の子はいいな」とおもった。
その後きくりんがヤキモチに後押しされて普段のまりあちゃんへの気持ちが大爆発したシーン、あーーーーーいいなって思った。
小学生の女子のあのギスギスした感じ、グループの感じがものっすごい「分かる〜」って感じで、
「運動会ってかんじ」のところとか実家のお店に入って大人たちに見られてちょっと気まずい感じとか、
こんなこと私もあったな〜と、なんか懐かしい気持ちになった。
アニメーションの雰囲気も、キャラクターもみんな素敵で、あとご飯がとーっても美味しそうで、笑って泣けて、ほんといい映画でした。
天使か悪夢か
素敵な映画
ちょっと、もやもや
アマプラで見ました。見る前は声優一覧を見て、「けっ」という姿勢だったのですが、見ている内に引き込まれてしまいました。背景含めて絵はとても美しいし、キャラのコミカルな動きも生き生きしている。現代ものをアニメでやる場合、なぜアニメを選んだのかという点を注意して見ていますが、これは納得です。生き物達が人間の声でセリフを言う点も、風立ちぬ的な実験的手法かと思いきや、きちんと理由があって、うならされました。
とても、良い作品なのは分かるのですが、最後にどうもモヤモヤが残りました。何がもやっとしているのか分からず、取り合えず、屁ぇこいて寝てから、もう一度考えたところ、やはり生みの親への落とし前が付いていないことが原因かな、と思いました。本当の母親は、借金は無くなっていて、手伝ってくれるお姉さん的な人もいるという、ものすごく恵まれた環境で、子供を捨てたんですよね。それでいて、美貌を武器に金持ちと結婚して、今頃、ぬけぬけと子供の様子を見に来ている。客観描写したら、とんでも無い女です。
原作の制約があるのかも知れませんが、この人にはっきりと、「私のお母ちゃんは肉子ちゃんや」と言って欲しかった。
優しく生きるとは
天命に逆らうな
絵がほんとにきれいだった。心情描写も細やか。あと、ちょいちょい、いろんな名作のシーンを彷彿させるところがあった。
キクリン役のCocomiちゃんは、雰囲気ぴったりで、上手。たびたび見せる変顔に惑わされるが、実は美形の二宮、声も美形。
焼肉屋の店名がうおがし(笑)。店主のサッサンはさりげなく肉子とキクリンを気遣う、優しいおっちゃん。キクリンがずっと抱えていた、そこはかとない不安。サッサンはちゃんとわかってて、キクリンにあたたかい言葉をかける。ここは泣かされた。いい男だわー。
大竹しのぶはうまい。だけど、35歳の声にはちょっとなぁ。やはりもう少し若い人の方が良かったと思う。さんまプロデューサーの意向なんでしょうが、そこは切り分けて欲しかった。でも、肉子のキャラはかわいいし、魅力的だった。運動会で走ってる時の体のテカり具合や、涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔とか、眠っている姿とか、すごく愛おしかった。ただ、少し将来は心配かな。
NHK Eテレの放送を視聴。
昭和の人情噺
お正月のテレビ放送で鑑賞。
公開時、本作を観た人から絶賛の声が上がっていたので、どんな物語かと思ったら、昭和の人情噺で、なるほど、この内容ならさんまさんプロデュースも頷けるなーと。
食いしん坊で太ってて元気で明るくて、ちょっとおバカでお人よしで直ぐ騙されちゃう。そんな肉子と思春期入り口の娘キクりんの半年間の物語を、キクりん目線で描いている。
原作未読なので、本作がどこまで原作準拠かは分からないし、僕ら昭和生まれには“懐かしい”物語だけど、若い人たちはこのストーリーや、キクりんに乗れるだろうか?とは思った。
あと、クライマックスでのキクりんの盲腸からの回想シーンや、キクりんの独白は、それ以前の展開とあまりにもかけ離れているし、そもそも振りらしい描写や展開がないのでどっか見逃しちゃったかと思った。
それまで、キクりんの心情に沿って、丁寧に描いていただけに、この最後の畳みかけ?の展開には首をかしげてしまった。
っていうか、どのくらいさんまさんの意向が反映されてるか分からないけど、とにかくセリフが多くてうるさいと感じたし、もうちょっとアニメーションを信じても良かったのでは?って思ったかな。
そんな文句を言いつつも最後まで観ちゃうのは、渡辺歩監督ほか、スタジオ4°cのアニメーション力と、肉子役の大竹しのぶの演技力あればこそって感じかな。
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