劇場公開日 2021年2月11日

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「オーソドックスに美しい」マシュー・ボーン IN CINEMA 赤い靴 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5オーソドックスに美しい

2021年3月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

映画がうろ覚えだったので、「もう一度予習しときゃ良かった」と後悔した。
ただ、この舞台作品が、映画をなぞっているわけではないことは分かった。
本作では、音楽家としてのジュリアンの役割が後退し、レルモントフがより前面に出ていると思う。
劇中劇(正確には、“バレエ中バレエ”だが)もたくさん出てくるし、映画とこの作品で“相乗効果”を楽しめた。

振付については、自分は詳しく知らないが、クラシックの入った折衷的なコンテンポラリー・ダンスで、もっと過激なダンスを予想していただけに、意外とノーマルだった。
マシュー・ボーンについて、自分は何も知らないが、本作ではオーソドックスに美しい作品に仕上げたという印象だ。

音楽の平凡さには辟易した。
ダンスに集中させてくれる心地よい音楽だが、亜流的・折衷的だし、舞台を盛り上げてくれる感じがしない。

舞台セットや演出には感動した。
昔風な水着を着たダンスは、南仏にいることをアピールするし、イーストエンドの卑猥なダンスホールのシーンでは、ヴィクトリアのきわどい衣装に驚かされた。
舞台は狭いが、セットのバリエーションが多く、驚くほどトランジションがスムーズだ。
レルモントフの調度品に満ちた豪邸かと思えば、抽象的な舞台に早変わりする。
また、吊り下げられた緞帳を回すことで、カーテンコールのオモテとウラを表したりする。
素晴らしい、の一言だ。

実際の舞台では、休憩時間が十分とられたのかもしれないが、この映画を観る限りは、ヴィクトリアは出ずっぱりで、体力に驚かされる。
マシュー・ボーンのバレエ・カンパニーとのことだが、それにしても、ものすごくダンスがスムーズだ。
プレミアが2016年12月で、この映画の撮影が2020年1月とすれば、3年間。なるほど、“こなれている”はずである。

Imperator