「癖の強い薔薇おばさん」ローズメイカー 奇跡のバラ odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
癖の強い薔薇おばさん
タイトルからもバラ農園の話だと分かるがいきなりディーン・マーティンの「ブルー・レディに紅いバラ」で始まるベタなオープニングに笑ってしまう。
個性の強いバラ育成家のおばさん、イブ(カトリーヌ・フロ)と訳あって働きに来た孤独な青年フレッド(メラン・オメルタ)、花泥棒までさせてどうなるのかと冷や冷やしましたが次第に心の通い合う様を丁寧に描いています。ラストは名作「グッド・ウィル・ハンティング」を彷彿とさせますね。
イブの農園は火の車、再建に必死のイブに仲間たちは振り回されっぱなし、それでも皆、健気に支えます。
大きなバラ農園の若い経営者ラマルゼルをバラを商品としてしか見ていないと目の敵にしていますがそんなに悪役には思えません、むしろ希少種の苗を盗んだりとイブの方が質が悪いでしょう。交配した新種が失敗なのも神様のバチがあたったのでしょう。失敗だったからと言って苗を抜き捨てるイブは本当に花への愛情があるのか疑問に思える演出でした。
そんなイブにも善いところが一杯あるので農園の再建や健気に働く仲間たちを応援せずにはいられません。
感心したのは11月の万聖節、日本で言えばお彼岸のような死者を弔う記念日に季節外れの白いバラを墓地に売りに行くシーン、菊が定番なので見向きもされないがイブの機転で曲を流すとお客が殺到、曲はティノロッシの「白いバラ」、母親に白いバラを贈る息子の愛の唄だからベストフィット、冒頭の挿入歌といいピノー監督は歌の使い方がユニーク、エンドクレジットに「ママに捧ぐ」と出ますが監督の母親が映画の完成を待たず亡くなったと言うことでした。
ヒューマンドラマとしてはベタですがコメディ要素もあり愉しめます、何より本物のバラ育成家が監修にあたったという珍しいバラの花々が咲き乱れ目が癒されます。