「いい話なんだけど、なんか昭和のドラマみたいだったなぁ。」ミナリ たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
いい話なんだけど、なんか昭和のドラマみたいだったなぁ。
アメリカ南部にあるアーカンソー州へ、農場主になることを夢見て移住してきた韓国人一家を襲う困難と家族模様が描かれたヒューマン・ドラマ。
主人公である家長のジェイコブ・イーを演じたのは、ドラマ『ウォーキング・デッド』シリーズや『オクジャ』のスティーヴン・ユァン。本作の製作総指揮も務めている。
スティーヴンと並んで製作総指揮を務めているのは、『セブン』『オーシャンズ』シリーズで知られるオスカー俳優のブラッド・ピット。
第78回 ゴールデングローブ賞において、外国語映画賞を受賞!
第36回 サンダンス映画祭において、グランプリと観客賞の2冠を達成❗️
今年のアカデミー賞で6部門にノミネートされている超話題作。
安心と信頼のA24と、ブラピ率いるプランBという鉄壁の製作体制。
この製作陣でアジア系移民を扱うなんて、完全にアカデミー賞を獲りにきている映画やん。
全米で大絶賛されている映画なんだけど、個人的にはフツー。
アジア系移民を扱ったA24作品なら、2019年の映画『フェアウェル』の方が好きだなぁ。
勿論悪い映画ではない。
「夢を追うことには犠牲が必要だ」ということは誰しもが頭では分かっていることだろう。
しかし、その本質を理解しているのか?夢という甘美な響きの裏側に、思い描くエデンの楽園の裏側に、音もなく忍びよる蛇の存在とその激烈なまでの残酷性を本当に理解しているのか?ということを突き付けてくる一作。
そして、個人の努力ではどうすることも出来ない、神のみぞ知る領域があるということを伝えてくれる映画。
全体的に非常にキリスト教的な宗教観が強く打ち出されており、またそのほとんどが移民であるアメリカ人ならば絶対に共感するところがあるのであろう移民の困難が描かれているので、まぁアメリカ本国では受けるだろうな、というのが素直な感想。
勿論日本人にだって、イーさん一家の苦労には共感するところがあるし、特に農家の人、何か夢を追っている人には強烈に刺さるかも知れない一作である。
走ることを止められていたデヴィッドくんが最後に走りだすという展開や、ジェイコブが移住初日に提案しスルーされてしまった家族での雑魚寝が、クライマックスになって達成されるという展開は、綺麗に伏線を回収しており、ちょっと優等生すぎる感じもあるにはあるけどもお見事。
でもねー、やっぱりつまらないんですよ。
全体的に暗すぎる。個人的に暗い物語って苦手。
次から次へと悪いことが起こっていって、結局最後まで酷いことが起こりっぱなし。
まぁ最後には一筋の希望が残るわけだけど、それにしたってあそこから盛り返すのは相当キツいっすよ。イーさん頑張れ。
何というか、終始気が張っていて、抜きどころがない作品という印象。
倉本聰とか橋田壽賀子とか、一昔前のドラマ脚本家が好きそうな物語だなぁ。
『おしん』とか『北の国から』とか苦手な自分にとってはやっぱりこの作品も辛い…😖まぁ『おしん』も『北の国から』も真面に観たことないんだけど😅
ユン・ヨジョンさん演じるお婆ちゃんのキャラクターはユーモラス。でも、それをもっと前面に押し出していっても良かったんじゃないかな。
「えっ、もう病気で倒れちゃうの!?」と思っちゃった。もっと観客を笑わせて、物語を引っ張って引っ張って…からの悲劇的な展開の方が、ドラマとしては盛り上がったんじゃないかなぁ。
『ウォーキング・デッド』を観てきた自分にとっては(まぁシーズン6までしか観てないけど💦)、「グレン頑張れー☺️」という感じで、応援しながら観ることが出来てよかった。これがなかったらもっと退屈していたかも🥱
『バーニング』で納屋を燃やしてた男の納屋が燃えた…🔥とか思ったのは自分だけじゃないよね?
やっぱり明るくて楽しいコメディ映画の方が自分は好みだということがわかった。
作品賞は難しいかも知れないけど、助演女優賞は獲るんじゃないかな。脚本賞もイケるかも…🤔
この感想文を書いていて気が付いたけど、お父さんの名前はジェイコブ=ヤコブ。
「だから、兄弟たちよ。主の来臨の時まで耐え忍びなさい。見よ、農夫は、地の尊い実りを、前の雨と後の雨とがあるまで、耐え忍んで待っている」
ヤコブの手紙にはやたらと「忍耐」という言葉が出てくるみたいだけど、この一文がこの映画の全てを表している気がするわね🍥