劇場公開日 2021年3月19日

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「あの頃、色々あったけど。ミナリのおかげ!」ミナリ ショコワイさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0あの頃、色々あったけど。ミナリのおかげ!

2021年3月25日
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鑑賞方法:映画館

知的

幸せ

1 アメリカンドリ−ムを目指した韓国人男性のア−カンソ-での農場づくりと家族との暮らしを描いた人間ドラマ。

2 この映画の縦軸は、アメリカで農場を運営する夢に挑戦する若者の姿。そこに横軸として、そんな男と生活を共にする家族の日常と揺れる思いが重なる。

3 演出の特徴としては、先ず、描写がとても穏やか。大河ドラマや苦労物語にしない加減の良さが心地良い。そしてミナリの扱いも上手くハメていた。次に、家族や婆ちゃんの事情の提示が絶妙であった。子供と親たちの英語力の違いから子供はメイドインアメリカであることを示したり、夫婦のヒヨコの雄雌鑑別の経歴から種銭稼ぎの苦労の日々を想起させた。この手法は説明不足と思わせながら、その実雄弁で上手いやり方だと思った。その後、この一家がどのような人生をたどったかは知る由もないが、恐らくミナリのおかげで良い方向に進んだことが予想された。

4 冒頭のシ-ン辺りで不思議に思ったのは、時代設定が現代ではなく80年代であること。そこで思ったのは、この映画の中の長男は、監督の分身で、自分が知りえた限りで「あの頃」を思い出して、描いたのではないかということ。そして、婆ちゃんはチョットやんちゃだけどバイタリティのある韓国人のDNAを具現化したものであろう。この映画を通し監督は、自分の未来を切り開いてくれた両親や祖国、心良く受け入れてくれたアメリカのコミュニティに感謝を顕わす。と同時に、かつて祖国であった戦いや分断の中で斃れた人に鎮魂する。そんな映画であった。

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ショコワイ