「やっぱりお祖母ちゃんは最高で最強!「ミナリ」がセリ(芹)のことだとわかるとグッと親近感が増します。」ミナリ もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
やっぱりお祖母ちゃんは最高で最強!「ミナリ」がセリ(芹)のことだとわかるとグッと親近感が増します。
①アメリカのど田舎に新天地を求めて移住した韓国人の若夫婦の生活を、オネショの癖が抜けず心臓に疾患をもつ下の息子(ディヴィット)の目を通して描いていく。②パパは信仰や民間伝承にすがるのが好きでなく何でも自分(の知恵や努力)で切り開いて行きたいタイプ。自立心も強い。ただ自分の夢を追う余り、家族のためにやっていることの筈が、それが家族との間にすきま風を吹かしていることになかなか気づけない。ママは信仰深く子供たちのことを第一に考えている。やや自分勝手なパパについていけないところを感じながらも夫唱婦随なスタンスを守っているところは韓国の儒教思想がまだ体のどこかに残っている世代からかな。しっかり者のお姉ちゃんはその分影が薄いのは可哀想なところ。③始まってそうそうモーレツな夫婦喧嘩が始まるのには驚かせれる。だが、子供たちが早速「ケンカしないで」と書かれた紙飛行機を作り出すところを見れば日常茶飯事なのだろう。その夫婦喧嘩の結果、韓国からママのママであるグランマ(お祖母ちゃん)を呼び寄せることになる。④戦争未亡人で女手一つで娘を育て上げたであろうグランマは何せ明るく逞しい。遠いアメリカに来ても気後れせず花札(恥ずかしながら韓国に花札あること初めて知りました)もすればプロレスに興奮する。このグランマと孫のディヴィットとの交流がこの映画の一つのハイライトである。⑤男の子は元々シャイなものであるが、アメリカで生まれ育ったディヴィットも初めはなかなかグランマになつかない。韓国臭い(?)し、イヤな黒い汁を飲まされるし。グランマに自分のオシッコを飲ませるイタズラの顛末が笑わせる。タンスの引き出しを脚に落とした怪我を手当てしてもらっ時にディヴィットは“strog”と言ってもらって一気に心の距離が縮まる。その時にディヴィットがグランマに決まり悪いような面白がるような顔で「オシッコどんな味だった?」と訊いて逃げるシーンが微笑ましい。また、ある日グランマはディヴィットを連れて行ってはいけないとされている先にある小川の処までつれて行き日当たりのよい斜面にミナリ(芹)を植える。『ミナリは水があって日当たりのよい場所ならどこでも育つ。食品にもハーブにも薬にもなるんだ。』このミナリ(芹)が映画の一つのモチーフとなる。そして感動のラストへの布石とも…⑥しかし、良いことばかりは続かない。肝心のお祖母ちゃんは脳卒中で倒れちゃうし、パパは当てにしていた買い付け先からけんもほろろに一方的にキャンセルされる。疲れきったママはカリフォルニアに戻ることを決意する。パパは引き続きこの地で頑張るという。家族が離ればなれになるのも仕方ない様子。⑦でも悪いことがあれば、良いことも有るのが人生。カリフォルニアに戻る前にディヴィットの診察を受けに行ったら心臓の疾患は治癒に向かっているという嬉しい診断結果、ここの水がディヴィットの身体に合っているようだから現在の生活を変えないようにと医師にアドバイスされる皮肉さ。パパも野菜を買ってくれる先がやっと見つかった。⑧でも、良いことが続いたのにママの顔は晴れない。家族よりも仕事(野菜を売り込む)を優先させるパパの姿勢にほとほと愛想が尽きたからだ。そして野菜の商売が決まった直後、夫婦の間に決定的な溝ができてしまう(様に思える)。⑨一方、留守番していたグランマは不自由な身体でごみ焼きをしているうちに近くの枯れ草に延焼させてしまう。この時点では「グランマ、何しとんね!」という印象。帰ってきたパパは野菜貯蔵庫に延焼しているのを見つけ少しでも野菜を運びだそうとする。その後をママも追いかけ一緒に野菜を運びだそうとするが、煙に巻かれてしまう。そしてパパは野菜を置いておいてママを救い出す。野菜貯蔵庫は野菜ごとあえなく全焼。しかし、炎と煙のなかで二人で助け合ったこと、野菜より何よりママを救ったことで夫婦の絆は戻った様。グランマに悪気ははなかったとは言え何てことしてくれたとおもったが、結局夫婦の絆を復活する吉祥となった。やっぱりグランマは一家にとって天使だったのかも知れない。自分が起こしたことにショックを受け且つ罪悪感で家を去ろうとするグランマに最初はあれほど懐かなかった(走らない方が良い)ディヴィットが走って行く手を塞ぐシーンなややベタながら涙が出る名シーン。⑩