「寓話」スペンサー ダイアナの決意 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
寓話
本作、冒頭の但し書きは「事実を基にした“寓話”」。
これが作品のすべてを物語っていると言っていいかもしれません。
(他のジャンルも同様ですが)伝記映画には、自分が見たいと思う主人公の人物像、背景、周辺人物とよく知るエピソードなどを求め、それに共感や感動することを期待しがちです。さらに、出来ればなかなか知りえないエピソードなどもあったりして、仮にそれがやや「盛り気味」だったとしても、ストーリーさえ巧くまとまっていれば、より興奮したりするものです。
果たして本作はどうかと言えば、はっきり言って意外性や新鮮味は感じない「さもありなん」と言った印象で、おそらく、普通に淡々と物語れば実に退屈な内容になったと思います。
実際、ダイアナとイギリス王室に関することは、既に色々な媒体で(虚実)語りつくされています。
だからこそ、そこに作品として成立させるアングルが「寓話」という表現方法なのでしょう。
他者から見ると「我儘を通り越し、最早奇怪な言動をとるダイアナ」が、彼女自身の混沌とした精神状態そのままに見せられる映像は、最早、何を信じていいのか、誰の身になって感じ、考えればいいのか、どう解釈したらいいのか、結果として誤魔化されているようにも感じます。
確かに、クリステンの好演、怪演は見ごたえあり、アカデミー賞主演女優賞ノミネートも伊達じゃありません。
また、ダイアナが「ウィンザー家」と一緒にいる唯一の理由であり救いの息子たちとの時間は、観ている私にもやはり救いでした。
元々、それほどに期待していなかったとは言うものの、疲れもあったせいか途中眠気に襲われるほど、正直「面白みに欠ける」仕上がりに思います。残念。