劇場公開日 2022年10月14日

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「ジャッキーとダイアナ。重圧に抗う女性の系譜」スペンサー ダイアナの決意 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ジャッキーとダイアナ。重圧に抗う女性の系譜

2022年10月19日
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鑑賞方法:試写会

悲しい

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英王室のチャールズ皇太子(現国王)と結婚し世界中から注目と憧れの的になるが、その後1996年に離婚、翌年に事故死した悲劇のヒロインとして今なお多くの人の記憶に残るダイアナ。その人生の重要な数日間を映画化する企画と聞けば、英国人の監督も女優も食指が動かないわけがなかっただろうと単純に思うが、意外にも監督にはチリ出身のパブロ・ラライン、ダイアナ役には米国人のクリステン・スチュワートが起用された。王室と王族のような絶大な存在を、少し離れたスタンスで客観的に描いたり、大胆な創作を加えて語ったりするのは、むしろ外国人のほうがやりやすいのかもしれない。

ダイアナの人生を端的に表現できる期間として製作陣が選んだのは、チャールズとの結婚から10年後、1991年のクリスマス休暇の3日間。映画の冒頭、ダイアナは道に迷った人として登場する。ロイヤルファミリーが集うエリザベス女王の私邸を目指し、ひとり車を運転していて迷ったという状況なのだが、もちろんこれは彼女自身の人生における迷いと焦燥を象徴していて、その後の会食などの場面でチャールズとの関係が冷え切っていることや、王室の堅苦しいしきたり、警護役やパパラッチから四六時中見張られている状況に、悩み苦しみ追い詰められていく姿が明らかになる。

振り返れば、ラライン監督の「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」も、1963年のケネディ大統領の暗殺から葬儀までのジャクリーン・ケネディ夫人の日々にフォーカスした映画だった。生涯をダイジェストのようにたどる伝記映画ではなく、その人の生きざまを凝縮したような数日間をシンボリックに描くのが得意なのだろう。ジャッキーとダイアナは、政治権力や王室の伝統といった圧倒的な存在によるプレッシャーに苦しみながらも、女性として、また母親として、自らのアイデンティティを貫こうと抗ったという点で共通している。クリステン・スチュワートの熱演も相まって、世の圧力に生きづらさを感じている多くの観客に勇気を与えるはずだ。

高森 郁哉