「アカデミー賞ノミネートも納得の一方、ダイアナ妃のことをどのくらい把握しているかどうかで評価は大きく分かれそうな作品。」スペンサー ダイアナの決意 細野真宏さんの映画レビュー(感想・評価)
アカデミー賞ノミネートも納得の一方、ダイアナ妃のことをどのくらい把握しているかどうかで評価は大きく分かれそうな作品。
本作は、良くも悪くも「上質で本格的な映画」だと思います。
それは、予備知識となる前提の説明がなく、ダイアナ妃を中心としたイギリス王室のリアルなクリスマス前後の伝統的な3日間を行事を描いているからです。
日本では「プリンセス・ダイアナ」が本作の前に公開されていたこともあり、ダイアナ妃の半生を把握することができていたため、私は、この「断片的な3日間の映画」に入り込むことができました。
そこで、前提となる状況説明を簡単に紹介します。
舞台は、1991年のクリスマス前後のエリザベス女王の私邸サンドリンガム・ハウス。そこに伝統として王族たちが集まるしきたりがあります。
ただ、この時は、ダイアナ妃とチャールズ皇太子の関係は、チャールズには、そもそもダイアナに愛があったわけではないことなどが発覚していて、ダイアナの精神状態が壊れかけてるような状況でした。
本作では、まさに、「ダイアナがチャールズとの離婚を決意したクリスマス休暇の3日間」を描いているわけです。
クリステン・スチュワートがダイアナを演じていますが、ダイアナが女優以上に華やかさのある存在なので非常に難易度の高い役柄だったと思います。しかし、見た目も含めダイアナになりきっていて、苦悩に満ちたダイアナを見事に演じ切り、アカデミー賞の主演女優賞にノミネートされたのも納得でした。
音楽の使い方が上手い上質な作品で、ダイアナの胸中と共に「イギリス王室の伝統」の内実などを知ることができたりして、いろいろと考えさせられます。
クリステン・スチュワートの演技が光っていたことに加え、ダイアナが心を許すマギー役のサリー・ホーキンスはやはり上手いです。