「重い」アウシュヴィッツ・レポート pekeさんの映画レビュー(感想・評価)
重い
重い。
上映中、何度も深いため息をついた。
収容所に送られた人々が背負った運命の過酷さに、時としてこのような残虐なことを行なってしまう人間という存在の罪深さと恐ろしさに、気が滅入った。
けれど、それだけではなく、本作には希望も描かれている。
絶望的な極限状態になっても生き抜こうとする人間の強靭さや、友愛精神などには、救われる思いがした。
映画作品としては、もう少し「仕掛け」のようなものや、はっきりしたクライマックスというか、見せ場のようなものが欲しいかなと、いささか物足りない気がしないでもなかった(しかし、そのようなものをこしらえるのは、逆にこの作品の価値を損なうことになるのかもしれないなとも考えた)。
あと、説明的でないのが良いと思ったけれど、その分、少々わかりにくく、説得力に欠けるところがあったと感じた。
以上いくつかケチはつけたものの、全体的な感想としては、シンプルでストレートな、なかなか見応えのある作品でした。
命の重さや人間の尊厳といったことについて、あらためて考えさせられました。
エンド・ロールに込められたメッセージも届きましたよ、監督さん。
追記
僕は「たまたま」この時代の日本に生まれてきて、――いろいろあるにせよ――いちおうは平穏無事に暮らせている。
そして、映画のモデルとなった彼・彼らは「たまたま」ユダヤ人として、あの時代のヨーロッパに生まれてアウシュヴィッツに送られた。
運命の操作によって、僕が彼に、彼が僕になっていたとしても何ら不思議はないではないか。そう考えると運命ほど恐ろしいものはない。
アウシュビッツのこと、沖縄や広島や長崎のこと、ヴェトナム戦争のこと、ポルポト時代のカンボジアのこと……。
それらの負の歴史を知ること、知っておくことは、未来の平和を築くためにも必要だ、と「たまたま」現代の日本に生きている僕は思う。