劇場公開日 2021年9月3日

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「付き合いの長い人ほど楽しめる作り」科捜研の女 劇場版 アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0付き合いの長い人ほど楽しめる作り

2021年9月3日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

1999 年に放送が開始され、20 年以上の歴史を持つこのドラマは、「相棒」シリーズと肩を並べる息の長さを誇っている。捜査権を持たず、証拠の分析だけで見せる筋立ては一貫していて、ファンを裏切らない。劇場版は本作が最初である。本作では、冒頭に各メンバーの家庭風景など、普段は見られないシーンが連続して目新しかった。また、歴代主要メンバーが総出演しているところがファンサービス満点であった。これまで多くの回を見てきた人ほど満足できる作りになっている。

細菌研究がテーマであるが、伝染病ではなかったのは、仕掛けを簡素化するためであろうか。被害者は海外にまで及んでいるが、あの犯人が一人で全部行ったというのはかなり無理があるような気がした。大学の研究室がいくつか出て来るが、特に佐々木蔵之介の研究室は豪勢なもので、羨ましい限りであった。ただし、定期的に投薬するだけであるのにあのようなドーム型の設備が何故要るのかは非常に謎であった。

謎といえば、学会誌に掲載前の論文の内容をどうやって知ったのかとか、海外の大学の建物の構造や相手の研究室の位置など調べるのは大変だし、国際電話でタイミングよく高いところに呼び出すなんて出来るのだろうか?同じことに気づく研究者は世界中で続々と出て来るはずだが、全員を同じ目に遭わせるのは不可能ではあるまいか?そもそも箱を開けるのが当人とは限るまい。などなど、いくらでも突っ込める話になっていた。

犯人が何故あそこまで忠節を尽くすのかも全く分からなかった。映画に描かれていないもっとドロドロした人間関係でもなければ、あの行動はちょっと釈然としない。薬の投与によって凶暴化したとかいう話でも良かったかもしれないが、他人の生命を奪うのに何の躊躇もないというのはいくらなんでも、と思われた。

歴代の登場人物はそれぞれ見せ場があって良かったと思うが、マリコの母だけ少し可愛そうだった。星由里子と野村宏伸は現在 BSP で再放送中の「あぐり」に出演中なので特に目につくのだが、星がそれほど変わっていないのに対して、野村の激変ぶりには本当に驚かされた。

音楽はテレビシリーズと同じであるが、映画館の音響で聴くと随分印象が良くなるものだと感心させられた。加速器まで登場させた道具立ては面白かったが、被害者の脳髄液に当該細菌が出て来るとは思えないのに、随分気を持たせたのは少し怪訝に思われた。シリーズに付き合いの長い人ほど楽しめる作品だと思う。
(映像5+脚本4+役者4+音楽4+演出3)×4= 80 点

アラカン
アラカンさんのコメント
2021年9月4日

畏れ入ります。

アラカン
Xo1tCRgFxzLYKTDさんのコメント
2021年9月4日

凄く細かいところまで作品を分析されているので勉強になりました。

Xo1tCRgFxzLYKTD