「今一歩」白頭山(ペクトゥサン)大噴火 イナヅマゴローさんの映画レビュー(感想・評価)
今一歩
イ・ビョンホン、ハジョンウ、マドンソク、スジら、韓国映画の主演クラスが揃ったディザスタームービーとあらば観ないわけにはいかない。公開初日に観させていただきました。
正直な感想は思ってたのと違うな、という感じでしょうか。コレジャナイ感は正直ありました。
というのも、白頭山の大噴火とそれに伴う大地震などの大災害に逃げ惑う市民と、それに対処する政府や軍などがメインという、いわゆるよくある定番のディザスタームービーではなく、この事態を打開するための、韓国軍爆発処理班と北朝鮮の一人の軍人、スパイの話がメインになっていて、ディザスターというよりはスパイ映画的な要素がより強いからです。ひょっとしてタイトルがあまりあってないのでしょうか?
もちろん白頭山という、北にある火山の噴火を南が描くので、北と南の話になるのは自然であり、韓国映画の主流として南北の話を描くのは非常に「らしい」のですが、本作にたいしては思った展開と違ったので(よくよく考えれば北が舞台なのは当たり前で、市民メインの話だと勝手に私が思い込んだだけで、映画に全く罪はないのですが)、肩透かしを勝手に喰らったのは事実です。
災害の描写、特殊効果は素晴らしく、カネがかかってる感は邦画の比ではありませんのでさすが韓国。
一方、ダムの決壊により迫り来る大洪水からどうやってスジが助かったのか等、気になる部分も多々あります。
やはり全体的に市井の人々の描写が少ないので、大災害が今起きている、それを止めねばならない、人々を救わねばならない、という切迫した状況の提示が足りなすぎるように思いました。また、その部分における共感があまり抱けないまま観続けることになってしまった感があったのは事実です。
イ・ビョンホンと娘の関係、ラストの展開など、グッとくるシーンもありますが、全体的に私としてはストーリーが今一歩楽しめなかったというのが正直なところです。
この作品はエンドロールの感じなど非常に洋画(アメリカ映画)に近く、それなりに長い=大作であることがよくわかり、世界に見せたくて作られた映画だと思いました。
いずれにせよ、規模、予算、野心等、韓国映画が向かう先が、日本の映画産業に比べて圧倒的にスケールが大きいことに羨望と悔しさを覚えます。BTSの世界的ブレイクなど、エンタメ界において日本は韓国を見習うべき点が多いことを感じざるを得ませんでした。