「ラストコンゲームグランドフィナーレバトルロワイヤルは、一番の大騙し!」コンフィデンスマンJP 英雄編 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ラストコンゲームグランドフィナーレバトルロワイヤルは、一番の大騙し!
ダー子、ボクちゃん、リチャードのコンフィデンスマン・トリオ。
今回3人で仕掛けるコン・ゲームと“オサカナ”は…
居ない?!
シリーズ3作目にして“新手口”。
3人の師匠である伝説のコンフィデンスマンが他界した。
師匠は“ツチノコ”と呼ばれ、100年以上も前から日本で悪党から美術品を騙し取り、貧しい人々に分け与え、“英雄”と称されたネズミ小僧のような存在。
師匠はその3代目。4代目を指名せずに。
師匠が亡くなり、暫く大きなヤマもしておらず、腑抜け状態のダー子。
ボクちゃんもリチャードもやる気を失い、ボクちゃんはダー子の事を心配する中、突然ダー子から提案。
3人の中で誰が4代目に相応しいか、真剣勝負。
ルールは簡単。ルールはナシ。どんな手を使ってもOK。
最も稼いだ者が勝ち。
敗者は勝者の言う事を聞く。
期限は7日間。自分の腕とプライドと称号を懸けた、ザ・ラストコンゲームグランドフィナーレバトルロワイヤルの開幕!
これまで3人で見事なチームプレーをしてきたが、初の対決。
シリーズ物は3作目ともなるとマンネリになるが、確かにこれは新しい。
同じ師の下で学び、一緒に仕事してきたが、端から組んでいた訳じゃない。ひょんな事から組み、それからズルズル馴れ合い関係に。本来は同業者で商売敵でもある。仲間こそ最大のライバル。
ダー子はやる気まんまん。今回は五十嵐、モナコ、ちょび髭と組んで。
リチャードも静かに闘志を燃やす。彼も元々は“百戦錬磨”のプロ中のプロ。
ボクちゃんだけは当初あまり乗り気ではなかったが、ある目的の為に。
各々それぞれ動き始める…。
ダー子が“オサカナ”に選んだのは、マルタ島で豪遊しながら暮らす元スペイン・マフィアのジェラールと内縁の日本人妻・麗奈が所有する“踊るビーナス像”。
価値は20億円以上。“オサカナ”として不足ナシ。
海上自衛官大佐に扮して接近。
するとすでに、ボクちゃんが古美術商に扮して潜り込んでいた。どうやら狙いは同じ。
リチャードの姿は見えないが…。
ヤバイ性格のジェラールの懐に入る事に成功。どう出し抜き、“踊るビーナス”を手に入れるか策を巡らしていた時、思わぬ脅威が現れた。
インターポールの特別捜査官、マルセル。
“インターポールの狼”の異名を持つ、若いながらスーパーエリート。彼はある者を追っていた。
世界中で貴重な美術品を狙った強奪事件が続く。とある国で侯爵夫人が所有する絵画が奪われたばかり。
犯人は、自称“ツチノコ”。4代目が現れたというのか…?
その逮捕に執念を燃やすマルセル。
もう一人。日本からやって来た刑事、丹波。
彼が追うのは、日本人のコンフィデンスマン・トリオ。日本のみならず、世界中で詐欺を仕掛けている輩。
被害者にもコンタクト。情報提供を拒まれたが、赤星にも。
そう。丹波が追っているのは、ダー子たち。
目の前にいるが、丹波は顔や素性も知らず。一方のダー子やボクちゃんはヒヤヒヤ…。
3人のコンゲーム・バトルに、インターポールと日本刑事が参戦。
誰と誰が繋がっているか、誰が裏切り、誰が騙そうとしているのか、騙されているのか。
四者の視点から描かれる。
まず、ダー子。海上自衛官大佐に扮し、像の偽物も用意し、シンプルながら手堅いストレートな作戦。が、今回ばかりは見抜かれていた。
ボクちゃん。ダー子より先んじて行動。ダー子側の五十嵐と密かに繋がっており、ダー子の情報は筒抜け。わざとおっちょこちょいや後手を演じる。
ダー子がジェラールに接近なら、ボクちゃんは麗奈。似た生い立ちや同郷設定で“ぬまぬま”と呼ばれる昵懇。
ジェラール同様派手な性格の麗奈だが、心臓が弱い。ボクちゃんは次第にそんな麗奈にシンパシー。
ショッピングのお供に行った時、共々何者かに誘拐される。また心臓が…。
心配し動揺するボクちゃん。巻き込んでしまった事を後悔。
二人を誘拐したのは…
リチャード。
ずっと姿を見せていなかったリチャードだが、波子と水面下で動いていた。
波子が町でリチャード用の“子猫”を見つける。その中には偶然、丹波とマルセルの部下も。
金で釣り、マスクを被せ、誘拐や脅迫など強行手段を指示。
いつもの柔和な性格とは違う冷徹さと凄み。
そもそもリチャードはダー子やボクちゃんよりキャリアが違う。これが本来の実力。
像争奪戦。像を手にしたのは…、リチャード。
集った3人。ダー子は負けを認め、ボクちゃんは戦意喪失し、リチャードが勝ったと思った時…。
インターポールが突入。逃げ場なく、3人は逮捕。
勝ったのはリチャードではなかった。
マルセルだった。
全てマルセルの手の内だった。
早くからジェラールとコンタクト。像を狙って不審な輩が現れる。
そして現れたダー子とボクちゃんを端からマーク。
丹波からの情報とあの赤星をも脅し、リチャードも確認。丹波をリチャードに付かせたのもマルセルの指示。一網打尽にする作戦を。
そこで利用したのが、ボクちゃん。
麗奈の心臓病に激しく動揺するボクちゃんに、マルセルは情を突いて動かす。
動揺と後悔でボクちゃんはマルセルに情報提供を。ダー子やリチャードを売る。
マルセルの頭脳戦と心理戦。が、実は麗奈の心臓病も知っており、それをも利用した作戦。
これには丹波も怒り爆発。逮捕したら日本警察に引き渡す予定だったが、引き渡す気など無かった。
丹波をも利用し、手柄は自分のもの。
スーパーエリートの本性は、超切れ者だが、非情な男だった。
マルセルは尚も非情さを見せる。
このまま3人を護送するかと思いきや、秘密裏に“処分”しようと。
そこへ現れたのが、本物の海上自衛官大佐や日本政府官僚や大使。ダー子らを引き渡して貰う為に。
赤星から被害届が出たのだ。丹波が赤星に土下座までして。野良犬が狼に噛み付いた。
最後にしてやられたマルセルだが、皆が去った後、顔には勝利と歓喜が浮かぶ。
いい厄介払いが出来た。
そもそもマルセルには法の権限無いのだ。
その手には“踊るビーナス”。まんまと手に入れた。
実は彼こそ、“4代目ツチノコ”を勝手に名乗っていた悪徳コンフィデンスマン。
ツチノコを追うフリして、世界中で美術品を強奪し、コレクションしていた。
秘密のアジトには奪った奪った美術品の数々。
貴重な美術品は相応しい者が手にする。自らを“英雄”と呼び、高らかに笑う。
…ところが、盗んだ筈の像がジェラールの元に。
急いでマルタ島のジェラール邸に。もぬけの殻。像も偽物。
急いでアジトへ。盗んだ美術品が全て無くなっていた。
怒り、パニクるマルセル。
どういう事だ!? 勝ったのは私ではないのか…!?
マルセルから日本側へ引き渡された後、船の上で敗北表情…いやいや、勝利の歓喜。
ダー子<ボクちゃん<リチャード<マルセルと思われた今回のコン・ゲームだが、もう一枚も二枚も三枚も上手がいた。
ダー子だった。
全てマルセルの手の内…ではなく、騙されも含め、全て全てダー子の手の内。
そもそもの発端は…
絵画を盗まれた侯爵夫人。そのショックで体調を崩した夫人に胸を痛めた者がいた。
ミシェル・フウ。つまり、コックリ。
来日した時、“母”ダー子に助けを。
絵画は元々フウ家にあったが、それを侯爵夫人に。そのせいで狙われ、自分のせいでもある。
ダー子も前々から自称“4代目ツチノコ”の存在を知り、気になっていた。何とかしたいと思っていた。そう約束したから。
その絶好の機会。コックリも協力は惜しまない。他にも協力したい者はたくさん居る。
侯爵夫人はそれほどの人格者。その中に、ジェラールと麗奈。二人はダー子の“子猫”であった。
“踊るビーナス”もフウ家の所有物。コックリから拝借。マルセルを釣る“餌”に。
リチャードとは最初から組んで動いて貰っていた。
ボクちゃんには何も知らせず。その方が本来の実力を発揮して動いてくれる。
実際、マルセルを見事騙した。と言うか、騙していなかった。ボクちゃんの行動は嘘偽りナシの本当の行動。
“子猫”は他にも居た。“本物”の大佐や大使も。
何と今回、赤星にも事前に協力を。“変装”してマルセルに仕返し!
陰ながらスタァとジェシーにも協力を。名前だけの登場だが、故二人への粋な計らい。
マルセルを餌に食い付かせ、GPSでアジトも特定。マルセルを騙す為、アジトの“偽物”すらそっくりそのまま再現。
手の込んだ“騙し”に舌を巻いたが、何と、丹波までもダー子の“子猫”であった。
今回の“騙し”は間違いなく映画シリーズ最大。
マンネリどころか、新手口と見せ掛け、ちゃんとお馴染み着地。3作目でさらに上回るコン・ゲームを魅せてくれるとは、古沢脚本には脱帽。
今回の“騙し”はダー子がやらねばならぬ事だった。
3代目と約束していた。不埒な4代目を騙る輩が現れたら、私が退治してあげる、と。
やはり“4代目”に相応しいのはダー子…?
いやそもそも、“4代目”とか“英雄”とか、そういう称号があるから履き違えた輩が現れる。
“英雄”は確かに憧れと称賛の存在。が、時に、“英雄”が悪党を生み出す。
“4代目”なんて居なくていい。“ツチノコ”じゃなく、“ミミズ”くらいがちょうどいい。
マルセルは逮捕。
無論、“マルセル”は本名じゃない。
まさかあの人が本物の“マルセル”だったとは…!
マルタ島舞台だが、コロナ禍でロケ出来ず、和歌山にあるポルトヨーロッパで撮影。本物のマルタ島にしか見えない…!
瀬戸康史がスマートにも憎々しく。勝利したと思ってキチ○イのように笑い、騙されたと知るや感情大爆発で悔しがるインパクトあるパフォーマンス。
城田優の本物の外国人に見えるハマリぶり。
松重豊も銭形のとっつぁんのような役回り。
お馴染みのラスト。赤星さん、今回はまたまた騙されたと思って、実は騙されてなくて、自滅的に騙されました(笑)
3人共、自分の目的は果たしたように思える。
リチャードは最初からダー子と組みつつ、本来の実力発揮。
仲間外れにされ、ふてくされたボクちゃんだけど、何よりダー子の為や幸せ。
ダー子の為や幸せは、約束した“ツチノコ退治”と…。
3人の真剣勝負の結果。
ダー子の勝ち。勝者の言う事を聞く。3人でこれからもずっと。
(いや、本当の勝者はまさかの“ミミズ”…?)
ダー子=長澤まさみ、ボクちゃん=東出昌大、リチャード=小日向文世。
3人の関係性やその他諸々、映画シリーズでは一番だったと思う。
本当に3人が仕掛けるコン・ゲームをまだまだ見たい。
ラストコンゲームグランドフィナーレバトルロワイヤルと見せ掛けて、きっとまた華麗に騙し、仕掛けてくれるだろう。
首を長くして待ちながら、滅多に見ないTVドラマの方も見ようかね。
いやあ、すごい。
いまさら、ストーリー全貌を知った、という感じです。ありがとうございました!!
やはり、長澤さん(まさみ)観たさだけで、この映画を観ていた俺は、阿呆でした(笑)