竜とそばかすの姫のレビュー・感想・評価
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自分を見ていてくれる誰かが居るんだなぁというお話
いい作品を見られたなぁ。
監督の書きたいシーンはここなんだろうなという熱量を感じることが出来ました。
すずにとっても、竜にとっても、人並外れた能力は現実世界で受けたストレスやトラウマといった抑圧された感情の発露でした。
この2人がお互いに惹かれあったのはお互いに孤独を抱えていたから。なんて言ってしまえばありがちなストーリーに聞こえるけど、これは孤独を癒す物語ではなく、孤独だと思っていても実は寄り添ってくれる大切な誰かがいるよっということに気付いていくのが主題だと思いました。
それはすずにとってはしのぶくんであり、ヒロちゃんであり、コーラス部の大人たちであり、お父さんだった。
歌を通して抑圧された自身を解放する中で自分の周りに自分を見てくれる相手が居ることを理解していく。
そんな中で、仮初の自分を捨て去っても、自分が誰かに寄り添えるような人間にすずは成った。
基本骨格にあるのは美女と野獣。それを元に恋とは違う愛情でお互いの殻を砕いていくそんなお話でした。
今作、面白かったです。
……しのぶくんあざといくらいカッコよかったな。
2回は観るべき!
映画館で見るべき映画
ストーリー自体には色々難あり。東京行ったけどあれで兄弟を救えたの?(戦う勇気を与えたということかな)仮想世界の技術があんなに進化してるのに日常生活は相変わらずなのね、などなど。
「この映画は映画館で見るべき!」というコメントはよく見聞きしますが、この映画こそ大スクリーンで観て、そして良い音響で聴くべきだと思います。作品の魅力の一つは映像美、そして最大の魅力は主人公の歌声だと思います。美しくて、透明で…言葉が見つからない。とにかく魅力的。ミュージカル風だという批判もあるようですが、美女と野獣へのリスペクトが作品の根底というのを事前に聞いていたので割とすんなり受け入れられた。それより、ミュージカルチックになると「あの歌声がまた聴ける」とテンションが上がりました(笑
未来のミライ、バケモノの子超え
音楽ってイイね
正直、ストーリーはリアリティ面で不満が残る。
創作物なので、あまり「リアルじゃない」とか言い立てるのは好きではないんだけど。
最後の虐待してた親が鈴ちゃんの迫力に押されたのかな?で引き下がったりとかはう〜ん…てなる。
とか、取り敢えず助けたけど、その後どうなるんだろ?
14歳と弟くんはどう生きていくんだろ?とか。
それはそれとして、映像と歌はとても良い!
特に歌はストーリー序盤の鈴ちゃんがベルになって最初に歌えるようになったシーンで何故か涙が出てきた。
鈴ちゃんがトラウマを払拭し始めたからとか、シーンとしての説得力で、と言うよりも単純にその歌声でという印象。
普段あまり音楽聞かないし、音楽で感動する瞬間って経験した覚えはあまり無いんだけど、切なさが募ってくるっていうのかな?そんな感じ。
やっぱり、音楽家って人の心を揺さぶる力があるんだな〜って思えた。
Uの世界
細田監督のUの世界、自分も入ってみたくなりました。私のアズがどのような姿になるのかも知りたいです。ベルの透き通った歌声も圧倒されました。ストーリー的にはどんどん自信を持つ鈴がとても頼もしかったです。私的には兄弟が最後きちんと幸せになれる所まで描いて欲しかったです。
コロナに五輪 モヤモヤした今夏にぴったりの爽快映画
細田守最新作!
高知の田舎のそばかす女子高生、実は50億人がアカウントを持つ仮想空間Uの新人歌姫Belleだった。
そして、Uの秩序を乱す邪悪な存在、竜。
竜は本当に悪なのか?
Belleと共に彼のオリジンを探すひと夏の冒険。
いや〜、面白い!
何がって?1番は皆さんの評価の割れ方ですよ。
「いや、OZやん」「美女と野獣まんまやん」「所々の設定ガバガバやん」
実際私も少し思いました。が、とりあえずそれは置いておいて…
細田守作品は『サマーウォーズ』しか観たことないので大きな声では言えませんが、細田守史上最高傑作との声にも頷ける作品だったと思います。
なんといっても、映像と音楽の美しさはピカイチ。
オープニングのUの説明ライブシーンで完全に心を掴まれ、世界観に吸い込まれました。これはIMAXで観た特権かな?
現実の世界と仮想現実のUの世界の対比。
さまざまなギャップが高揚感を掻き立て、夏にぴったり爽快感MAX。
細田守お家芸も詰まっていて(改めて言いますがサマーウォーズしか観てません)、ワクワクどんどん世界観に引き込まれていく。
うわー、すごかったぁ!と思いながら劇場を後にするその最中、50億アカウントのごとく押し寄せるあらゆる「違和感」の波。
「あそこご都合主義だったな」「あれはおかしい」…etc
でもね、知り合いの方の言葉を借りると「ラストライブのシーンで帳消し」なんですよ。本当に。
感動のフィナーレで壮大な音楽流して涙を煽る。
御涙頂戴のお決まりパターンではあるけど、それでいい。
中村佳穂さんの優しく包み込むような歌声。
理由はわからないけど大号泣してしまった。
サマーウォーズであり、ナウシカであり、美女と野獣であり。
現代のネット最重要問題である誹謗中傷。
OZでは描けなかった、より深い部分のインターネットが描かれていた。
棘もあり、優しさもあるそんなSNSという巨大な生き物。
正義も悪も存在しない。視点によっては誰もが悪にも正義にもなり得る。
アバターにアカウント、みんな仮面の下に本当の顔を隠している。
伝えたい思いはしっかり伝わってきましたよ。
早速この作品のレビューも、賛だろうが否だろうが受け止めてみよう!
誰もが見ている世界の誰も見ていないおはなし。
サントラ欲しい、、、
評価が分かれる理由
今作のテーマは「インターネット世界のリアル」なのではないかと感じた。応援、批判、信頼といった人と人との関わりがネット上ではどのように行われているのかがよく現れていてとてもおもしろかった。
曲の完成度が素晴らしく、動きのパートと歌のパートがしっかりと分けられているためミュージカル映画の一種として見るには完成度が高いように感じられた。その一方で、要素が多く詰め込まれていたせいか物語としては少しまとまりがなかったように感じた。ネット上での評価があまり高くないのは納得できるが、過去の細田守監督やスタジオ地図の作品と比較しなければ星4には値すると思う。
3D技術が多く使われていたため最近のディズニー映画のような印象を受けた部分も多かったが、Uの世界と現実世界を描き分けるために技術を使い分けていたと考えれば、新しい取り組みとして評価できると思う。
ネットの殺伐は世が教育した物だとおもう
メディアや世間の認識から、直接有った事もない対象を、皆のイメージで社会性を否定的に認識することで説明し憎しんでいる事に無自覚な社会的言論がネット世間で偏見の社会政治の応酬を生んでいる。
現実のネットに現れる世間の社会言論は、社会の問題を訴える側とそれを自己責任で批判する側両方の発生理由を社会側のせいではないものとして説明するために都合の良い見方に依存している言論が多いと感じるので、闇も光も社会の仕組みの産物として書く事がこれから重要だと思った。
個人的に、美女と野獣のような話は、
沙耶の唄(※)という、男と人外の怪物
の、巷でいろいろと有名なビジュアルノベルの話
(人間を怪物と感じる男と少女の心を持った怪物の宇宙生命の関係の物語
)
が
その結末や台詞、世界観を表す音楽から究極だと思っているので、
最上級の評価がまず出来なくなっていますが
一般的な物としては竜とそばかす姫の美女と野獣の話の中身は非常に良かったと思います。
(上で少し触れた、沙耶の唄という作品は、(他人での精神負担の強い場面がネックであるが)容姿と愛や現実の世という物の世界の問題を考えさせられる比重が個人的に強力なのと宇宙生物のヒロインの台詞がとても印象に残る物です)
話を戻します。
龍とそばかすの姫の映画に対しては
初めの方に書いたように現実のネットの嵐は個人の社会性より社会的な排除の正当化論理(皆が要らない様に競争し選別する資本主義の運営社会で)
が人格を歪めている主体と思うので、そこを個人に還元しても矮小化してしまう所があり、そこが足りていないと思い完全には評価できませんでした。ただ、
竜とそばかすの姫には性悪説の正当化される昨今の世が失っている部分を照らしていて良いと思える部分があり、そしてそばかす姫は、今のバーチャルユーチューバー(仮想の見た目を被り、歌ったりも出来る)の意匠その物と言えますし、vtubaも色々と言われてますが、その現実の延長性と言える所から、このような素敵な話を紡ぎ出した作者が素晴らしいと感じます。
また個人的な話として (※潤羽るしあ さんという
バーチャルyoutuberの人が好きで最近、You Tubeの3dライブ動画も開催されそれを見たので
尚更この映画作品は心に来る物が有りました
(※昔一時期ニコニコの動画で1番上になってしまったあの某エヴァmadの咆哮の人ですが普段はスパチャでトップになるくらいには可愛いらしく話すキャラクターだったりします)
(※上の方で触れた沙耶の唄の脚本は、まどかや仮面ライダ鎧武、PSYCHOPATHの虚淵氏の過去作)
サマーウォーズとの対比で見ました
冒頭からサマーウォーズを思わせる作りで、これは意図的な物でしょう。サマーウォーズで語り足りなかったのか、あるいは反省があったのか・・・。そして、そうであればOzを再利用しても良さそうだが、そうしなかったのは決定的に違う点があるため。それは生体データからアバター(アズ)が自動生成されるという点で、Cパートのアンベイルされることの重大さにも繋がってくる。竜、というのは、時々ネットに湧いてくる、困ったちゃん、という所でしょうか。
インターネットには負の側面も色々あるが、それに対する希望がテーマかと思う。単なる画面の向こうで頑張れと言うだけで無く、実際の行動に繋がってくれれば、という事かと思われる。ラスボスが前作のAIから、ネット上の人格では無い大人の男になった点も象徴的。実際の脅威は現実世界にある。
全体的印象としては、やはりさわやかに纏める手腕はさすが。豪華絢爛な画面作りや、音楽の素晴らしさも言うまでも無いこと。
少し、気になった点。東京に行く際、なぜ、彼女1人を行かせた。リアルに危険な相手なのだから、ここは大人を含め複数人で行くべきで、現地で手分けしようと単独行動になった際に遭遇した事にしても良かった。おとーさんとしては心配でした。
ツッコみどころは多いが悪くはない
細かい所を突けばいくらでもボロは出るがアンベールしたすずが歌い上げる後半の山場、ラストのオチは説得力あったよ。
途中、竜の正体はしのぶ君じゃないかと危惧したがそうではなかったのは良かった。ウン十億のアカウントが集まる巨大仮想空間なのに重要人物がみんな仁淀川に集まってるなんてのは白けるからね。まぁ相手が武蔵小杉にいるってのもご都合主義な気はするが、赤の他人が正体というのはネット時代らしいオチで良い。
個人的にはペギー・スーはもっと使い所あったんではないかなぁ、と。ジャスティンとかいう『タイバニ』を腐らせたような連中が敵役というのは物足りない。
中盤のウォーゲームをモチーフにした演出は正直シラけた。あそこ削って竜の物語掘り下げたらもうちょっと結末に説得力を与えられたんではないかなぁと。
悪い点ばかり上げちゃったけどU世界の演出や音響は素晴らしい。カンヌが総立ちというのも偏に後半の歌のシーンのおかげだろう。中村佳穂さんの歌の説得力で細かい問題点は吹き飛ばされた印象。
見どころはなんと行っても歌とCGなのでIMAXとかで見るのをオススメします。
満足できないからとらわれる
細田守が美女と野獣を作ったらこうなるのね、という感じ。
今までの細田守作品とともにディズニーも感じられます。
相変わらず作品から夏を感じる。
生粋のケモナーで鯨が好きで田舎の風景がすてきです。
とりあえず冒頭3分のためにIMAXで観てきました。本当に良かった。手放しに褒め倒す程。
作中の歌は全てすてきです。
流れてくるエンドロールを見ながら
原作を買わなきゃ!って思わされる不足感。
帰りの電車でKindle開きました。
曲が良かったんだけど曲を入れれば入れるほど尺を奪われてストーリーが駆け足になってしまうような難しさを感じてしまった。
とりあえず今からパンフレット読んで、小説読んでこの不足を補います。
全部を理解したら絶対いい作品って言える要素はあると思ってる!
とにかく新しい作品を作ってくれてありがとうございます
映画館に観に行けて幸せです
映像や音楽には満足も…
細田守監督の作品はもともと大好きなので、作画や映像美に関しては言うことありませんでした。
キャラクターデザインも好みは分かれそうではありますが、いままでの細田作品が嫌いじゃなければ特には気にならないと思います。
ストーリーの展開も、ネット世界が現実に繋がっていくことでハラハラさせられますが、そこはアニメ作品ならではのリアルさとファンタジー感が混在していて、エンターテイメントとして楽しむことはできました。
母親が行ってしまうことを泣きながら引き止める幼少期の主人公の姿。主人公がどこの誰かもわからない人のために一生懸命になっていることに気づくシーン。父親が主人公に向けたメールの場面では涙が出てしまいそうになりました。親世代の方々はうるっと来てしまうのではないでしょうか。
しかし、匿名アカウントが現実の誰なのか、田舎の女子高生でもネットを駆使すれば特定一歩手前までいけるような世の中で、現実の姿を明かすということの危険さについてはもう少し目を向けたほうがいいのかなと思ってしまいました。全世界に素顔が公開されて、その後は安全に暮らせる訳がないという、心配になる気持ちがかなり大きく残りました。世界的に大人気のVチューバーがいきなり顔出ししたようなものですよね。
作中でネットの怖さのようなものを描いていながらも、終盤での行動は正義のためとはいえ、さすがに危機感に欠けすぎではないかとどうしても感じてしまいます。
実際に映画館で観ているときには先の展開にハラハラしつつも、音楽の素晴らしさなどに感激して、ハッピーエンドになったとこに安心をしましたが、やはり心のどこかではその後の主人公の身を案じる気持ちが残ってしまいます。
まあ、ファンタジーなので大丈夫なのですが…
エンドロールで主題歌の作詞作曲がKingGnuの常田さんであったことには驚きました。多才ですねぇ。
見終わった後の満足度は高いですし、円盤化したら購入してゆっくり観たい気持ちもありますが、やはり上記の心配といいますか、そういう気持ちが残ってしまったので⭐︎4です。
細田監督、お見事です
細田守監督の作品は「バケモノの子」と「未来のミライ」のふたつを鑑賞したが、いずれも説教臭いし偽善的だという印象で、あまり高い評価は出来なかった。
ところが本作品は打って変わってニュートラルなものの見方をしている。インターネット時代というか、SNS時代というか、兎に角賛否両論がネットに飛び交う中で、そういったことを気にせず自分の世界、現実の世界をしっかり生きる。いいものはいい、駄目なものは駄目だとはっきり言う。誰も参加してくれなくても、たったひとりでも、やりたいことをやる。主人公内藤鈴の周囲は、そんな魅力あふれる人たちでいっぱいだ。安っぽい説教はどこにも出てこない。
声優陣が素晴らしい。コーラスグループのおばちゃんたちの歌がやけに上手いので、鑑賞後に確認したら、森山良子、坂本冬美、岩崎良美などの錚々たるメンバーだ。みんなアフレコの喋りも上手い。
そして主人公すずとベルの声と歌を担当した中村佳穂。当方は不勉強にしてこの女性歌手を知らなかったが、語るように歌うところやソプラノの声の伸びやかさに少し驚かされた。本作品は圧倒的な歌の巧さが要求される映画で、よくこういう人を探してきたものだと、細田監督のキャスティング能力に感心した。
ストーリーはゲームとリアル、アバターと本人という、割とありがちな組み合わせで進んでいく。主人公のトラウマと家族関係とラブストーリーを上手く融合させて、軽い感じの物語に仕立てている。ともすれば重くなりそうな設定を、コーラスグループのおばちゃんたちなどを絡めることで、サラッと流しているから、観客も辛くなく気軽に鑑賞できる。「ああ、面白かった」と思えるエンタテインメントアニメの傑作だ。細田監督、お見事です。
2時間じゃ足りない?
正直、各キャラの背景が薄いので、特にだけど龍が誰なんだろ?という興味があまり沸かない
そして50億人から1人を探さなきゃ!ってシーンも尺の都合なのか、すぐ見つかる
その見つけた龍に会うために東京に向かい、これも尺の都合なのかすぐ見つかる笑
カヌーと吹奏楽の告白シーンに5分くらいかけるなら、龍を探すシーンを5分増やして欲しい
全体的に薄っぺらいし、盛り上がりに欠けるんよね
ただ作中で使用されてる歌に関しては物凄く濃厚
むしろPVみたいな感じなので、ストーリー3で、PV5の評価で中間の4
結果として満足なんだけど、中身がうーんって感じ
細田守として見ちゃいけないと思う
我慢できなかった
ネットで不評だったので期待せずに来場。
普段は鬱陶しい最初の映画広告だが、
今季はなかなか良さそうなラインナップだからこの映画ダメでもまぁいいかと心を落ち着かせた。
音や描写が良いと言われていたが、天気の子ほど綺麗でも音にこだわってもいなかった印象。
ストーリーもあらかじめグダグダだと知っていたので、それを踏まえると許容できる範囲内だったと思う。
割引で1100円で見れたし、その意味ではまぁ悪くはないと思ったが、通常料金の1800円なら後悔したと思う。
でも、
最後の30分トイレが我慢できなくて本当に辛かったです。ストーリーも別にオチが気になるようなものでもなかったし、「はやく終わってくれ!!」ととにかく祈っていました。普段はおまけ映像を期待してクレジットまで座っているのですが、今回はそのおまけ映像(が見れる可能性)よりも膀胱を優先してとっとと退室しました。
クレジットの途中でも、退室すると迷惑になると気が引けますが、400席ある中で、私のほかに2人しかいなかったので許して欲しいです🙏
ミニマルな世界の自己再生のはなし
先日、みんな大好き(僕も好き)『サマーウォーズ』が金曜ロードショーで公開されてて、久々に視聴しました。ババアのコネと数学の才能とおばあちゃん譲りの花札で世界を救う映画で一番ドラマとして心に残ったのは侘助おじさんの葛藤でした。愛に飢えた少年のまま成長したラブマシーンa.k.a侘助は『サマーウォーズ』では誰に手を差し伸べられるわけでもなく、彼自身の歩み寄りで家族という集団に取り込まれていきました。
そこから12年。改めてインターネットの世界を描いた本作では、世界の存亡など関係なく、コミュニケーションを巡るミニマルな物語に終始していたのがよかったです。
主人公すずは幼い頃に母を亡くしたトラウマから歌うことができず自分の殻に閉じこもっている少女。作品全体を通してすずの視点で物語は進んでいきます。そこではお父さんとの不全な会話や、親友との気の置けない会話、ネットリンチ、「応援する」、嫉妬する/嫉妬される、「好き」、根拠のない憶測・・・などなど、様々なコミュニケーションが図られます。ここの肝は出てくる多くのキャラクターが描き込みが足りない、「他者」として現出することにあると考えます。私のことを気にかけるイケメン幼馴染、タイミングのいい相談を持ちかけてくる美人ブラスバンドリーダー、素っ気ない会話をやり取りする父親、彼ら彼女らはその裏で何を考えていたのかは想像や憶測に頼ることになり、物語が進むにつれてそれらは次第に明かされます。現実の人間関係と同じく他者というのは理解するのが難しいです。それは翻って、周りに心を閉ざすすずも周囲の人から見たら理解しづらい他者だと容易に想像がつきます。この周囲の人たちとの繋がりを横軸に、「自分を見捨てて」他者を助けにいった母との葛藤が縦軸として存在し、その延長としての竜への関心が物語を引っ張ります。
クライマックスのライブシーン、これまで他者の心配に対して「何でもない」と心を開かなかった少女は信頼を勝ち取るため竜に対して、そのものズバリな自己開示を以って応えます。同時にここは(歌うという)コミュニケーションをネットでしか行えなかった彼女が、現実の世界でのコミュニケーションに向かい合うというシーンでもあり、大変エモーションを刺激します。(但し、それを誘導するしのぶくんの強引さには抵抗を感じます。責任とれんのかテメエ。)
ここからは覚醒したすずぼんのコミュニケーション攻撃のつるべうち。まずはお父ちゃんとしっかり向かい合います。(個人的にここが一番催涙効果高かった)そして幼い竜の兄弟と雨の中道路でばったり遭遇し、石黒賢と対決します。ここではっきり石黒賢を見つめるすずの瞳を見ていると、中盤ジャスティンとの対話の中で言っていた「あなたは人を抑えつけようとしているだけ(うろ覚え)」というセリフが思い起こされます。強くなったね、すず。
ここで雨に打たれている兄弟は親からの愛を十分に享受できなかったラブマシーン2号3号であり、社会からこぼれ落ちそうな彼らを主体的に拾い上げようとする本作は『サマーウォーズ』から更に進んだアンサーと言えよう。
言及するまでもないかもしれないが、主演中村佳穂の圧倒的なパフォーマンスは素晴らしいの一言二言。冴えない陰キャがネットから現実へ向き合うミニマルな話に華と説得力を添えている。また、ネットと現実のコミュニケーションがシームレスに共存した世界というのも現代的であると思う。
大変好意的に書いたが粗を探せばゴマンと出てくる作品でもある。言及したい部分としては高知からの旅路を女性ひとりで行かせる危険性、虐待された少年に「これからは僕も戦うよ」と言わせ、大人たちは何かするわけでもない描写。
前者はお父さんに車で送って欲しかった。「車で送って行こうか?」と語りかけた前半のセリフは伏線になるし、そのまま良い父/悪い父の対比として描くこともできる。「ただいま」「夕飯どうする」に繋げたかった気持ちもわからんではないが。
後者の描写の問題点は「助ける助ける助ける」と言って助けてくれなかった「大人たち」は結局何もせず、すずの愛(母性とも言い換えられる)を以って立ち直った子どもが自分でなんとかしていく自己責任に落とし込んでしまうことにあると思います。既存の社会制度によるアプローチをきちんと描いて欲しかった。
最後にUの世界の描き込みについて。ビジュアルは素晴らしいんだけど、恐ろしく整合性のないSNSで都度ツッコミを入れたくなった。まあこの世界観には細田監督もそんなに興味ないんだろうなあ。あくまで舞台装置であって、そこから匿名のネットリンチ、衆愚性、新しいコミュニケーションを描きたかったのだと想像。CGと動き回るカメラのネット空間と手書きでフィックスのカメラの現実社会の描き分けは好き。
引き込まれるストーリー
改めてレビュー見たらあまりにも評価が低かったので
細かい感想を追記。
亡くなった経緯は違えども、同じ父子家庭で育った身として、鈴の父親の愛がよく分かる。
だからこそケイとトモの父親が許せなくて、竜の痣が増えるたび心が痛む。
鈴が二人を助けに行くことで、他人の子供を助けた母親の気持ちも分かり、気まずくなっていた父親との関係も改善する。ただ歌えるようになるだけじゃない、鈴の成長も見どころの一つ。
忍が、すずが成長するまでは母代わりとなって静かに見守っていたのに、鈴の成長を経て想いを伝えるところも良い。
鈴の成長がメインなので、あれくらいあっさりした告白で尚良い。
しいてゆうなら宣伝で竜=佐藤健と告知をしたがゆえに「竜は誰だろう…?」がなくて、ケイとトモの映像が出てきた時にすぐに竜=兄、クリオネ?=弟と分かってしまったところが残念。
でもだからこそ、すんなり話が入ってきたのもあるからそれも計算のうち…?
結論、やっぱり満足!
↓以下最初の投稿
主人公もよく泣くし、私もよく泣いた。
・SNSの気軽さと簡単に悪意を撒き散らせる嫌な面を見せる
・同じ境遇なのに、偉大な父の愛と子どもの心を殺す父
・守るべきものがある人は強い
・YouTubeみたいなやつ、子供の名前むっちゃ晒す
・佐藤健は佐藤健でした
・Uと竜、聞き分け難しい
SNSの悪態とか、虐待とか不快に思うところもあったけど、思わず引き込まれる話、何度も涙を流せる話、たまに笑いも入る話で満足。
※ポップコーンは映画の序盤に食べ終わるのがオススメ!
エンディングまで含めて全体的に静かなシーンが多いので中旬以降食べれる箇所はあまりありません。
全1518件中、481~500件目を表示









