劇場公開日 2021年7月16日

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「マイルドに言って「U」って楽しい場所か?」竜とそばかすの姫 フリントさんの映画レビュー(感想・評価)

マイルドに言って「U」って楽しい場所か?

2021年7月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

50億人の前で歌が歌えるようになる話

細田監督10年ぶりのネット世界アニメとのことで「サマーウォーズ」から10年か~なんて思いながら鑑賞。
個人的に「バケモノの子」「未来のミライ」はあんまりしっくりこなかったので、今回はどうなるかなと不安でした。

感想をマイルド言ってしまえば、「つまらない話」でした。
いや、歌とか映像美は楽しめたけれど、ストーリーが全く心に響いてこない。
退屈ではないけど、なんだろう釈然としない物語だった印象。

自分の現代ネットへの感覚がずれてるのかも知れないです。もしくは監督のネット感覚がずれてる?

少なからずオンラインゲームや動画配信サイトを経験してますが、ちょっと本作のネット感は理解しがたい点が多かった。
私が皮肉れてしまったのか、頭が固いのか、古い考えなのか、突っ込みどころが多すぎて話に集中できなかった。
アニメーションとしては綺麗だし、歌もよかったけれど、肝心のストーリーと「U」の世界観がどうにも納得できなかったな~。
同じ様な仮想世界と現実を行き来する映画「レディ・プレイヤーワン」は現実と仮想世界で金銭のやり取りとか争い、オアシスでの生き方がそれぞれ伝わってきたし納得できたんだけどな。

冒頭「U」説明わかりやすいし、ワクワク感があった。
いきなり主人公の歌も聞けるしいい感じなんだけれど、なんというか雰囲気だけ、画の綺麗さインパクトだけって感じがしてしまった。
アバターはわちゃわちゃしてるけど、それだけ。個性はあったけれど背景でしかなかった。

ベルの造形は後半見慣れるけれど最初は手足が長くてちょっと不気味だったかな。
体の特徴、精神?を勝手にアバターに変換されるってことだけど、気に入らない容姿だったらどうすんだろ。
キャンセルしたらどんな感じで変更してくれるんだろうとか考えちゃった。
自分の好みとは違うハズレを引いた人は「U」を楽しめないんじゃないかな。

現実パートは鈴の過去やら現状の憂鬱さなどがわかりやすかったし、母とのエピソードもいい感じでした。
父親役の役所広司の声がキャラクターと合ってなかったようにも思えるけど、出番が少ないかったのでよかった。

ベルについて
「U」に行って歌って有名になっての展開とかもべつにいいんだけれど…
ファンをもっと大事ににした方がいいのでは?
歌いたい時に歌って、ライブやって、でもファンとの交流はなし。
一般人だったのにいきなりバズって注目されるとこんな感じなのかな?
戸惑いは当然としても、自分を好きでいてくれる人達に感謝の一言くらいあってもいいのではないだろうか。
ミステリアスが人気の秘密の一つかも知れないけれど、とても1億人も2億人もライブに呼べるとは思えない。

竜について
背中のアザ、マントのシミにしか見えない!アザってみんな言ってるのが違和感しかなかった。
てかカビにしか見えないし、なんならお洒落な模様にも見える。
多様なアバターが居る「U」で、醜いとか気持ち悪いて言われるが、他のアバターよりよっぽどカッコいい。
素行が悪いから嫌われてるけれどアバターの容姿を蔑むのは無理があるように思う。

「ベルはだれ?」やら「竜はだれ?」ってなる話の展開は結構強引な気がした。
匿名の歌手、顔を隠した歌手は多くいるけれど、その人たちが誰なのかってそんなに大事?
歌が自分の好みだったらファンになるだろうし顔を晒してないのはらそれなりの理由があって、それを理解、許容するのは当然でしょ。

竜は乱暴で対戦者のデータを壊す位に迷惑な奴だから、自称自警団が正体を探るのはわかるけれど、ベルが必要に「あなたは誰?」って思う理由がわからない。突然&唐突過ぎる。
あまつさえ大規模なライブをぶち壊されてるし、ファンより迷惑な竜の方に惹かれるのは不自然。ファンが可哀そう。これがまかり通るなら迷惑な奴が溢れかえるでしょうに。
50億人のユーザーはみんな子供なのか?まともな大人が一人も出てこないんだが…
ある程度有名でネット活動してる人で顔を晒してない人達が見たらどう思うんだろうな~。

ネットの世界で顔を晒すのは勇気がいる、不特定多数の中には異常者もいるわけで、まして50億人が注目する中で個人を特定できる情報を流すのはかなり怖い。
自警団が顔晒しアイテムを所有しているのも理解しがたい、スポンサーの財力か「U」を作った大賢者の庇護なのか知らないけれど、ずいぶんと物騒で嫌なネット世界だ。

最終的には顔晒す展開になるけれど、この後の鈴ちゃんの人生が心配だわ。
人命救助のため命を懸けた行動はお母さんと同じだけれど、うーんなんだか感動とかより心配になる感情が大きかったな。
しのぶ君もなんかやけに冷静で感情が読めないし、顔を晒す提案の時もどこか他人事のよう。「いや、お前、何言ってんの」って感じだった。
友人のヒロちゃんが「あんたが積み上げてきたもの~」「昔のあんたにもどる~」のセリフも違和感。問題はそこじゃ無くね?って思った。

兄弟2人の住所特定とか人命救助だから美談かもだけれど、鈴ちゃんを一人で危険なDV男のもとに行かせちゃだめでしょ。
周りの大人もしくはしのぶ君が一緒にいくべきだし、ドラマチックな場面が必要とはいえ現実的で無さ過ぎて萎えます。
奇跡的に兄弟と出会えるけど、あっさりすぎて拍子抜けだし「大好きだよ」とか、もうなんだこれ。これを見て何を感じればいいんだ?

ネットには特定班と呼ばれる(善意のボランティア)がいるから一枚の写真で身バレはありうる。生配信、写真で身バレのリスクをあらわしてるのか?

なんやかんや事態を収めて、鈴は地元に戻ってきて、気分もすっきり、お父さんとも和解、楽し気に歌って帰る。そしてエンディングへ
いや大変なのはこれからだよ…。

納得いかない点を書き殴ってしまったが、まだまだ有る。多分この作品は真剣にみれば見る程、荒や矛盾や設定の雑な部分が見えてくると思う。
同級生の恋愛とか合唱団のおばちゃん達とかもなんだか取って付けたようないてもいなくてもいいキャラだったし。
「U」はフルダイブなのか画面を見てるだけなのかなどなど。説明なさすぎて頭の中が?だらけになる。
むつかしい事は考えずに流れに身を任せろって何度も自分に言い聞かせたけれどどうにも流れには乗れなかった。

なんだろう本当に自分にはこの映画が合わなかったし納得できない作品だった。
ネット世界、歌、美女と野獣、家庭問題、恋、などなどいろんな要素がてんこ盛りでそれぞれが全部薄味。
やりたい事がいっぱいあって道を見失ったのか、まとめ切れなかったのかわからないけれど、監督は納得の出来栄えなんだろうか?
申し訳ないが細田監督の今後の作品には期待がもてなくなった、脚本は別の方にお願いした方がいいのでは?

現実と仮想現実、自分とアバター、第二の人生、ただ一つの心(個性)。
今やだれもがネットに繋がっているしある意味では第二の人生を謳歌してる人は多くいる。
ネット世界に触れた人が多くなった今、この物語は特別な物語になりにくい。
この物語が新鮮だ特別だと思ってるのはネット活動経験が少ない人だけなのではないだろうか。

全体のストーリーがガッタガタで突っ込み所が多いのは百歩譲っていいとしても、この作品は新しいネット世界を売りにしている物語。
舞台である「U」の設定があまりに甘いのはいただけない、全ての原因は「U」を説得力のある世界として描けなかった事に有ると思う。
50億人ものユーザーが存在するネットサービスは存在しないから、想像、映像化はかなり難しいし、挑戦した心意気は買うけれど…
「レディ‣プレイヤーワン」みたいに、未来のネット世界を描いた作品のエッセンスをもっと抽出して「U」に生かせればよかったのに。

架空世界「U」に納得できなかった私には一切響かない映画でございました。

以上、何の生産性もなく顔も晒さずに好き勝手レビューを書いている卑怯者のたわごとでした。
駄文、長文を最後まで読んで頂きありがとうございました。

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劇中セリフより

「あなたは誰?」

ネット世界においてその質問を初対面の人にするのはマナー違反だと思う。
よほど信頼関係が築けた上で、心の底から相手を知りたい場合でなければ出てこない言葉だ。

「人の名前を聞く前にまずは自分から名乗ったらどうだ?」的なセリフをよく映画で聞くけど、激しく同意。相手の事を知りたいけど自分の事は教えない。なんて失礼なことはしないようにしましょう。

フリント
フリントさんのコメント
2021年7月18日

bear monkeyさんコメントありがとうございます。

歌と映像表現は本当に素晴らしかったですよね。
ただそれ以外が目もあてられない悲惨な状態でしたが。
現実世界の友人や知り合いのキャラクターの浅さ。
「U」の世界観や倫理観の説明の少なさと設定の甘さ。

全てが記号的と言いますか、表面だけは綺麗なんですが薄っぺらく見えてしまうんですよね。
実際のパズルピースならば一つ一つは薄くてもいいんですけれど・・・
映画、物語としてのピースは厚みのあることで起伏が生まれそれが面白さや共感に繋がる大切なものだと思います。
それらを表現できなかった本作が心に響かなかったのは当然なのかも知れませんね。
「サマーウォーズ」の上位互換を期待しましたし、監督も狙っていたと思いますが残念の一言につきますね。

フリント
フリントさんのコメント
2021年7月18日

ありちゃんさんコメントありがとうございます。
マナーとか距離感覚が合わない方はブロックか無視が普通ですよね。
「あなたは誰?」は本作品のテーマですが、実際されたら怖い質問です。
細田監督はネットを題材にしている割に経験が浅いというか、知識はあるけれど実際のユーザー間の摩擦などが理解されてないのかも知れませんね。

もしかすると、入念にリサーチした結果、今の十代の子は「あなたは誰?」って質問や本人特定は当たり前という事実を基に脚本を書いた可能性がわずかに有りますけれども・・・。

フリント
bear monkeyさんのコメント
2021年7月18日

私も同意見です。まずBelleのライブ中になんで竜が入って来ることができたのかが謎。そしてなんでBelleは竜を探すかも謎でそっから映画がつまらなくなった。途中でどうでもいいシーンを長く引き伸ばしてくるくせにラストの東京まで行くシーンがテンポ良すぎて感動できない。キャラの説明も足りなくて共感できない。なんでかみしん嫌われてるん?面白くていいやつやん。普通に人気者になるでしょって思った。あと5人の賢者どこいったの?Uの危機ならまずそいつらが対処するだろ。なんで運営がU管理してなくて自称正義守るマンが管理してるの?あのアカウント丸裸にするアイテムなんなん?なんでそんなもん一般ユーザーがもってるの?そもそも竜そんなに悪いことしてなくね?プレイスタイル悪い、データ壊す。確かに悪いけどそんなの垢BANすればいい事で50億人の前で素顔晒されるのっておかしくね?可哀想だろ。とにかくツッコミどころありすぎ。曲と映像は神なのにストーリーが控えめにいってゴミ。広大な世界なのに事件が小さすぎて合ってない。この映画を見て最初に思ったのが「帰ったらサマーウォーズ見よう」だった。あの夏を超えると思って期待したのに、ほんとに同じ監督かと疑ってしまうほどの出来で見終わったら悲しくなった。

bear monkey
ありちゃんさんのコメント
2021年7月17日

私も同意見です。ネットの世界で、ほぼ初対面で「あなたは誰?」って何度も問うてくるベルが恐ろしいと思いました…私ならブロックしちゃいます…

ありちゃん
フリントさんのコメント
2021年7月17日

美加さんコメントありがとうございます。

美女と野獣のオマージュはホントに不可解ですね、何度考えても本作ストーリーと関係性が見いだせないです。

お母さんが助けた子を後々物語に絡ませるのは自分も望んでました。
チャリティで寄付金あげた兄弟が竜だった!こんな雑な伏線が成り立つなら、助けた子もなにかしら出番が有ってもよかったですよね。

物語すべてに説明、つじつま合わせをして欲しいとまでは言いませんが、納得、腑に落ちる展開でないとモヤモヤしちゃいます。

フリント
美加さんのコメント
2021年7月17日

まったくの同意見です。
歌と映像がいいだけにもったいない。
後、美女と野獣をなぜオマージュしたのかも気になりました。
最初の方で人気だった歌手が実はお母さんが助けた子供だったパターンとか、自称警察が実は竜のお父さんだったとか、何かしらの伏線回収が欲しかったです。

美加