1秒先の彼女のレビュー・感想・評価
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よくもわるくも台湾の大らかさ、素直さが醸し出ている。しかし男は全員変なやつ!
1秒先に動く彼女とか、ワンテンポ遅れている彼とかの設定は中盤から最早どこかにいってしまった。(笑 脚本も大味というか、薄いというか。
でも、なんだろう。ほんわか温まるのよね。
大らかで素直な台湾が醸し出ていて、なんだか空気感がいいのよ。
それだけで成り立っている。それだけで観れる。
※しかし、出てくる男が見事に全員癖のある問題男や変態男ばっか!
・思いっきり直球セクハラ発言の上司
・バスの隣席に座って触ってくる変態親父
・干してる下着を匂う変態男
・失踪する父親
・主人公に近づく詐欺師
・主人公を追う盗撮&ストーカー&拉致男!
台湾って変な男ばっかなの??
時間操作系×恋愛物の男女格差を思う
本作については当サイトの新作評論の枠に寄稿したので、ここでは補足的な論考を書いてみたい。
初見の際、ワンテンポ早いシャオチーとワンテンポ遅いグアタイのそれぞれのキャラクターが好ましいと思ったし、彼女の失われた1日と彼の与えられた1日という種明かしや、街の人々がマネキンチャレンジよろしく静止した「フローズン・タイム」に出てきたような光景に感嘆したり、路線バスが海の道を走るスペクタクルに感心したりと、おおむね好感とともに鑑賞していたのだが、身動きがとれず意識もないシャオチーに対してグアタイが行った行動には、SF映画「パッセンジャー」を観た時に感じた居心地の悪さもあった。観終わってからプレス資料の中で山内マリコ氏が「無抵抗の女性を男性が好き勝手するのは、観ていて少しヒヤヒヤする」と書いているのを読み、やはりそう感じる人も少なからずいるのではないかと思った次第。
で、新作評論では「恋慕の情に突き動かされた行動が相手の気持ち次第でロマンチックにもセクハラにもなる」「恋愛を扱う創作物が何世紀にもわたって語り、刷り込んできた悪しき伝統」と書いた。本作の仕掛けはタイムトラベルやタイムリープとは異なるものの、ここではループものも時間停止も含めて大雑把に“時間操作系”とくくるとすると、時間操作系と恋愛物を組み合わせた映画は、振り返ってみると男性が女性に働きかけてロマンスを成就させようとする筋が圧倒的に多い。「恋はデジャ・ブ」「バタフライ・エフェクト」「アバウト・タイム 愛おしい時間について」などがすぐに思い当たる一方で、男女を入れ替えたパターン、つまり女性主人公が時間を戻って意中の男性をモノにする、みたいなストーリーはほとんど作られてこなかったのではないか。
そもそも時間操作系の映画で女性主人公が絶対的に少なく、例外的と言える「時をかける少女」にしても、細田守監督のアニメ映画版では、ヒロインがロマンスを成就させるのとは逆に、仲の良い男子との関係が恋愛に発展するのを阻止するためにリープ能力を使っていた。
これは時間操作系に限らないが、男性が試行錯誤して(時にはチートもいとわず)女性を射止めようと奮闘するのはコメディになるが、逆のパターンは笑えないとか、恋愛の成り行きをあからさまに主導する女性は“はしたない”などといった、長年の固定観念から作り手も受け手も抜け出せずにいるのではないか。
映画に限定しなければ、ロバート・F・ヤングのSF小説『たんぽぽ娘』や、竹宮惠子の漫画『私を月まで連れてって!』など、時間旅行を行うロマンスないしラブコメのヒロインは少ないながらも登場してきた。いつか時間操作系×恋愛物の映画でも、ジェンダーのステレオタイプを脱却した斬新なストーリーに出会えることを心から願っている。
すれ違って来た男女にご褒美のバレンタインデーが
子供の頃から人と比べて何をするにもワンテンポ早い郵便局員、シャオチーと、逆に、いつもワンテンポ遅れるバス運転手のクアダイ。ただ毎日郵便局の窓口で顔を合わせるだけだった2人の運命が、バレンタインデーに激変する。と言うか、知られざる彼らの歴史が、空白の1日に詳らかにされる。シャオチーの記憶から突然消え去ったバレンタインデー。その24時間が、クアダイにどんなチャンスを与え、シャオチーにとっていつも謎だった過去の出来事の意味を浮かび上がらせるのだ。たった1日のタイムトリップを利用して、凝ったSFXやびっくりするような展開を用意せずに、ただ、ゆっくり生きることのご褒美を描く映画は台湾発。『熱帯魚』や『ラブゴーゴー』で冴えない人々にスポットを当て、そこから、オフビートな空気感と台湾人らしい優しさと人情を浮かび上がらせたチェン・ユーシュン監督の最新作である。ヒット狙いの大作が好まれる昨今の台湾映画界にあって、作りたい映画しか作れないと語るユーシュンの映画人としての在り方が凝縮されたような本作は、やっぱり台湾人の郷愁をそそって昨年の台湾アカデミー賞、金馬奨を制覇した。僕らが大好きな台湾と台湾人、そして、のどかな風景とスイーツ。それを丸ごと体感できるのがコレ、『1秒先の彼女』なのだ。
生きるための教示的な意味合いもあった一本
<映画のことば>
「他の人は動かないのに、なぜ動ける?」
「毎日100元ずつ銀行に貯金して、100日続けたら、いくらになるかな。」
「一万元ですね。」
「違うな。利息がある。君にも利息があるんだ。毎日、他の人よりも数秒だけ時間が長い。それが20年も続けば、一日分の利息がついて、24時間のあいだ世界が止まる。」
「一日少ない人は。」
「多い人がいれば、当然、少ない人もいる。」
「ウソみたいだ。」
「この世界のことを、全部理解しているのかい?」
シャオチーのお父さんは、どんな理由で自殺を企図し、豆花(ドウホワ)を買いに行くという口実で、シャオチーの前から姿を消してしまったのかは、本作の明確に描くところではなかったようですけれど。
しかし、期せずして一日分の時間が与えられたことで、彼は心に秘めていた決心とは別の選択をして、結果、愛娘のシャオチーとも再会を果たすことができた。
そのことの含意として、例えば「地球最後の日に、宇宙船に乗り遅れる」とでも言わん気な「30分以内に届かなければ割引します」とか「深夜の注文でも翌日に配達します」とか、今の時代のテンポはどうしても性に合わないという向きにも、神様は一日分という時間を、必ずどこかで調整してくれるから、「世間の風潮に迎合して生き急ぐ必要は、少しもない」という教示的な意味合いも、作中のどこかには含まれていたのだと受け止めれば、本作はそれは、それで、出来の良い一本だったのではないかとも思います。
先に観たリメイク版では、名前を書くのに必要な時間がモチーフになっていましたけれども。
反面、本作では、ストレートに「ゆっくり」というライフスタイルのあり方そのものがモチーフになっていたようで、製作陣の意図(?)の訴求としては、本作の方が、よりストレートだったと思います。評論子的には。
結局は叶うことのなかった悲恋の物語でもあり、切ないことは切ないのですけれども。
反面、佳作と評して、まったく問題のない一本だったとも思います。
(追記)
原題は「消失的情人節」(消えたバレンタインデー)。
そして、シャオチーがすっかり忘れていた彼のこと「消失的情人」(消えた、かつて想いを寄せた人?)ということで、原題には(少し違いはあるけれども)二様の意味合いが重ねられていたようです。
邦題に置き換えられてしまうことで、その質感がすっかり消えてしまっていたことは、少しく残念にも思います。
「消失的質感」?
(追記)
確かに素敵でした。
バスが海の道を走るシーンは。
多くのレビュアーが指摘していたとおりに。
評論子も、あげて同感です。
(追記)
台湾では、バス停で待っていても、ちゃんと手を挙げて乗車の意思を示さないと、バスは止まってくれないのでしょうか。
日本のバスはバス停以外の乗降はできないと相場は決まっているのですけれども。
それでも、地方へ行くと「自由乗降区間」というのが認めらていて、そこでは、バスに乗りたい人が手を挙げて合図すると、バス停以外でもバスが止まって乗せてくれます(降りるときも、運転士さんに言って、適宜の場所で)。
最初は、面食らいました。評論子も。
バス停の名前が「◯◯邸前」になっているというのも、初体験でした。
(追記)
なるほど。バスの運転士さんには、こんなで役得もあったのですか。
以前に、こんな小話を聞いたことがありました。
「男が女に想いを寄せた。それで男は女に毎日まいにち手紙を書いた。それで、ついに彼女は結婚を決めた。郵便配達の男性と。」
やっぱり、彼女をゲットする最大の秘訣は、頻繁に会うことなのかも知れません。
そういうことでは「恋愛指南的映画」でもあったのかも知れません。本作は。
<映画のことば>
「彼氏に食べられに行くの?」
「夜市で食事です。」
「バレンタインは?」
「ライブに行きます。」
「最高ね。チケットは何枚ある?」
「彼氏が2枚ゲットを。」
「男って、使える。」
「シャオチーさんも、早く探せば?」
「早く食べられてしまって。
スパイスを加えて、激しく動くと美味になるよ。」
(追記)
「本作はウサギとカメの寓話」と喝破した、レビュアーのNOBUさんの的確なレビューには、まったく共感しました。
末尾ながら、ハンドルネームを記して、お礼に代えたいと思います。
失くしたものに夢と未来を乗せる
そもそもオリジナル故、ストーリーに違和感はない。
よくできている。
主人公のヤンも背伸びがなく等身大な感じでいい。
すべてに理由が存在する。
さて、
すべてが止まってしまった世界で、秘密基地から帰ってきたバスの運転手ブアタイは、歩いている男を発見しバスを停めた。
男の様子からヤンと知り合いのようで、男はヤンに向かって話しを始めた。ヤンの父…
彼の話 ストップモーションの理由 世界の不思議 世捨て人と自分探し…
やがてバイクの男が現れる。バイクはなぜか反対車線に割り込んでバスと対面停車する。バイクにとってもいま動いているのはイレギュラーだ。同時にバスを動かしているのはヤンの父だと思ったのかもしれない。
おそらくこの男は、ヤンの父が体験した最初のストップモーションの時に出会ったのだと思われる。意気投合し、一緒に自分探しをしているのかもしれない。
また、バイクは来た道を戻らずに先へと進んだ。それは、この二人は次回同じ体験をするときに、何かしたいことがあったのではないか? 情報が少なすぎて妄想さえしにくいが、この部分に秘密の扉が隠されている気がする。
また、
映画に多いナレーション
それは登場人物の心の声。
もちろん違和感などない。
しかし、
あくまで個人的な意見だが、日本版と比較するとオリジナルにはナレーションはない。
運転手は想いをダイレクトにヤンに話している。あまり差はない気もするが、気にすると大きな差に感じる。
また、
運転手はすべてを片付け終え、ヤンを自宅まで届ける。
ずっとずっと想いを寄せていた彼女 寝顔
キスしようとするがなかなかできずに朝になってしまう。
ようやく勇気を振り絞って、額にキス
そして「最後の手紙」を書く。
ヤンの部屋にあったチラシの裏に、「秘密基地」の場所と手紙。
面白いのが「彼の常識的センス」
ストップモーションの時に自分が勝手にヤンをいじくりまわしたことに対する反省
誰がどう見ても「変態野郎」という認識を端然と自覚している。
でも、とうとう想いを叶えたのだ。
運転手は、
ダンス男の正体を伝えられず、姉を騙したとバスに乗り込んできたチンピラの制裁
まさかそこに運転手も乗りかかってくるという展開
でも一蹴される。
結局何もできないという絶望。
バスの勝手な運航に対する厳罰の覚悟。
すべて失ったとバスで眠る。
朝目覚めると空中に静止する蚊 突如起きた奇跡 ストップモーション
運転手がこの機に乗じたのは間違いない。
でも、思いを叶えることができた満足感。
変態野郎では、彼女に申し訳が立たない。
腹を決め、彼女のいる窓口で最後の手紙を出す。
「さようなら」
しかし、
「豆花」の声に思い出した彼女の父との約束。
慌てて道路を渡る瞬間の悲劇は、ナイスアクションだった。
視聴者も息を吞んだだろう。
「この恋はまだ終わらない」
神の声が聞こえてくるようだ。
ずっと前から動いている1秒遅れの彼
それに気づいてやっと動き始めた1秒先の彼女
幼いヤンは病院で約束した文通のことを忘れていなかった。
ただ、2度書いただけだった。
住む場所が離れていることで私書箱まで来れないヤンは、次第に文通のことを忘れていった。
この作品のテーマ「失くしもの」については、最初からラジオが話している。
ヤンの父もまた「失くしもの」かもしれないし、私書箱の鍵も「失くしもの」だろう。
しかし最大の「失くしもの」とは、ヤンの記憶ではないだろうか。
幻覚で見たヤモリの親父
「どうでもいいものが失くしものになる」
それが、写真屋で見つけたヤン自身の見覚えのない写真につながって、「あの私書箱」の発見につながった。
それが誰からだったのかはっきりとわかったが、彼はもう二度と姿を見せなかった。
異動先の郵便局の私書箱にも、あれ以来手紙は届かない。
やがて、松葉杖の彼が現れる。
あれ以来探し続けた彼がとうとう姿を見せた。
頭には様々なことが思い浮かんだだろう。
だから、思わず涙が頬を伝う。
そして今までのいきさつを話そうと、今晩会う約束。
「ある人」から頼まれたと言って渡す豆花
同時に男も声が詰まってしまう。
二人の情熱とすれ違いが見事に表現されていて、最後のシーンでは涙がこぼれてくる、
物語のすべてが「二人が再会する瞬間」だけのために描かれているのだ。
勝手にそう妄想すると、テイストを変えたリメイクは「その瞬間」をどこにするのか決めることから始まるのだろう。
見た順番が逆だったが、台湾俳優陣も一般的な台湾人という印象でかなり等身大でこの作品に挑んでいるように感じた。
それだけ原作が素晴らしいのだろう。
失くしたものに夢と未来を乗せる。
素晴らしい作品だった。
面白そうと思ってたら本当に面白かった!
日本版の話から初めて知った今作
なんだか気軽に見れそうな作品と思い鑑賞
主人公の女の子の行動や言葉が面白くて可愛くて楽しくて!
この子にはまれば最後までずっと楽しい映画体験が味わえるでしょう
最後のネタバラシも心がほっこりして、ぜひもう一度見たいし、人にも気軽に面白いよと薦められる映画です
キュートなシャオチーがキュート
先に日本版リメイクを観た。翻案として佳作だったけど、ポップでキュートな本作のが断然良い。変態が多数出てくるけど、すべてシャオチーのキュートさでカヴァーされてる。いや見た目は地味めで遊井亮子さんに似てるな〜って印象の、シャオチーの表情仕草すべてに釘付けになる前半。後半のグアタイの行動もキュートで追い討ちを掛ける。それにしても1年何してたンだろグアタイ。
もう一度見たい
2024年4月28日
映画 #1秒先の彼女 (2020年)鑑賞
郵便局で働くヒロインは仕事も恋も冴えない日々。ある日ハンサムなダンス講師と出会い、七夕バレンタインにデートの約束を
するが、目を覚ますと既にバレンタインの翌日に
めちゃくちゃ面白かった
伏線回収ものだけど伏線が沢山あって2度見しました
テンポが良く
十数年前に父が失踪した、せっかちなアラサー女子のシャオチー。郵便局で働き、さえない日々をすごしてしたが、ダンス講師のウェンソンと七夕バレンタインにデートすることに。喜ぶ彼女だったが、気がつくとその翌日になっていた。どうして、バレンタインは消えたのか。一方、毎日郵便局に来る、とろいグアタイは。
テンポが良くコミカルで、ちょっとつじつまがおかしい気もするけど、気にしないで楽しめる作品でした。さえないシャオチーが、だんだん可愛くなってくるのもよかった。台湾は七夕とバレンタインが一緒なんだ。
日本のリメイク版を先に観ていたが、オリジナル版の方がおもしろかった...
日本のリメイク版を先に観ていたが、オリジナル版の方がおもしろかった。
シャオチーとグアタイも役に合っていたし、時間が止まってからの世界もリメイク版よりは自然でとっても良かった。
くすっと笑えるシーンも多くて、2人がとても可愛らしい。長い片想いが叶ったような、ラストは心温まります。
良作です。
変な映画!
主役の李霈瑜(リー・ペイユー)が中々の良い。
◎8歳でマンガの『ヒカルの碁』を読み 棋士を目指した女流囲碁棋士の黑嘉嘉(ジョアンナ・ミシンガム / Joanne Missingham)が郵便受付け係で《逆引き立て役》で友情出演している。
◎台湾には年2回のバレンタインデーがあり、2月14日よりも、旧暦7月7日の「七夕情人節(チャイニーズバレンタインデー)」が重要なイベントらしい。
◎「豆花」(トウファ):豆乳で作られた絹ごし豆腐のような食感のプリンで、甘さは控えめ。タピオカや白玉、フルーツなど様々なトッピングを楽しめるのも。
◎シャオチーが働く郵便局を忠実に構築するために、外観、窓口、処理センター、休憩所などを制作。あまりにも本格的な外観だったため、撮影中に多くの人が本物の郵便局と間違えて、手紙や小包を投函しに来てしまったらしい。
秀逸な脚本で面白かったです!笑って泣ける心が温かくなる映画。
脚本が秀逸で凄く面白かったです。2日後にもう一度観に行きましたー!笑
①最初は彼女目線で描かれる。何をやっても人より早い彼女は郵便局員。写真を撮っても人より早いので目をつぶった写真ばかり。 そんな彼女は誰からも愛されずモテない。そんな彼女の窓口に毎日手紙を出しに来る男性。彼女が気になる様子。ある日モテない彼女にイケメンダンス講師がデートに誘うが何故か1日飛んでしまったー。
②視点が変わって手紙を出しに来る彼の目線で描かれる。①の彼女目線と全く同じシーンが描かれるが全然違って見える。この②番目のシーンが凄く面白くて実にいい!女性はえっ?って思うシーンがあるけどそれはちょっと置いといて映画を楽しもう。(私は女性ですが映画を楽しめました)
③女性目線に戻って全ての伏線回収。本当に良くできた脚本でした!面白かったー!!
東京では今、台湾巨匠傑作選をやっています。観られる人は是非映画館で!
台湾ならではというか、振舞いや発想が、もろもろ大らかで可愛らしくて...
台湾ならではというか、振舞いや発想が、もろもろ大らかで可愛らしくて、ほわっと癒しをいただいいてきました。
台湾に観光で出かけた時と同様、人々が魅力的なのが、再確認できます。
景色や日差し、お食事など、あちらでは何気ないであろう場面が、いま観てすごく魅力的でした。
バレンタインデーがなくなった理由
最初から中盤までは、展開が地味だなあと思っていましたが、バレンタインデーがなくなった理由が判明したときは、目から鱗が落ちました。
よく考えられたストーリーでした。
ただ、普通に考えて彼の行動はストーカーであり、不審者にしか見えなかったです。
彼にもっと冴えた男なら違った見方ができたのかもしれないです。
台湾ラブファンタジーアワー
ワンテンポ早い彼女と遅い彼がもたらすファンタジックなひととき。彼の気持ちに気付いて転勤してでも待つのも良かったし、彼が奇跡的に死んでないのも良心的だったと思う。日本版リメイクを見て、オリジナルに戻りたくなった。
2人が一緒に過ごすシーンのその光景の何と美しくおかしく切ないこと。映像といい、構成といい、時間を巡る奇想天外なアイデアといい、全てが鮮烈に心に残りました。
日本版リメイク『1秒先の彼』公開を機に、オリジナルの本作を、TSUTAYAの宅配レンタルで見てみました。
監督・脚本は台湾のチェン・ユーシュン。1995年の初長編「熱帯魚」と97年の第2作「ラブ ゴーゴー」で、世の中の片隅で生きる。“ひとりぼっち”たちの人生が交錯する瞬間のかけがえのない感情をみずみずしく描き、日本でも熱い支持を集めた人です。
その後、CMの世界に活躍の場を移していましたが、10年ほど前に映画に復帰。通算5作目の本作で昨年、台湾のアカデミー賞とも呼ばれる金馬奨で作品賞など5冠に輝きました。
分類すればロマンチックコメディーということになりますが、この映画もまた、ひとりぼっちたちの物語といえそうです。
郵便局で働くシャオチー( リー・ペイユー)は、仕事も恋もパッとしないアラサー女子。何をするにもワンテンポ早い彼女は、写真撮影では必ず目をつむってしまい、映画を観て笑うタイミングも人より早いのです。そんな1拍のズレのせいか、いまだ独り身。職場では横を見れば彼氏のいる後輩(囲碁棋士でもあるヘイ・ジャアジャア)に複雑な気分に。
そんな彼女が、逆にワンテンポ遅い男と思いも寄らぬ形で巡り合い、人生を再発見するまでが、いきのいい笑いと涙と共に描かれます。
冒頭にシャオチーは、警官のもとへ駆け込みます。「なくしもの」をしたと告げるのです。失ったのはある1日。旧暦7月7日、七夕情人節。台湾ではバレンタインデーの恋人たちの日として、盛り上がる日でした。
場面は変わり、バレンタインデーの前日。シャオチーは、ハンサムなダンス講師のウェンセン(ダンカン・チョウ)からバレンタインにデートに誘われて、すっかり有頂天になります。しかし一夜明けて、目覚めるとなぜか翌日に!
バレンタインの1日が消えてしまった!?
消えた1日の行方を探しはじめるシャオチー。見覚えのない自分の写真、「038」と書かれた私書箱の鍵、失踪した父親の思い出…謎は一層深まるばかりです。
どうやら、毎日郵便局にやってくる、人よりワンテンポ遅いバスの運転手・グアタイ(リウ・グァンティン)が手がかりを握っているようなのです。そして、そんな彼にはある大きな「秘密」がありました。 失くした「1日」を探す旅でシャオチーが受け取った、思いがけない「大切なもの」とは!?
失われた「1日」に何が起きたのか。そこに至る軌跡が、現在と過去、日常とファンタジーの境目を巧みに行き来しながら描かれていきます。
物語は2部構成。前半はシャオチーの側から語られます。最初は、どこにでもいそうなおひとりさまの滑稽譚のように映ります。やがて消えた1日の謎に向き合うべく、置き去りにしていた記憶のかけらを集め始めた彼女は、どんどん魅力的に見えてくるのです。後半、視点がぐるんと反転し、彼女を思うグアタイの側から物語が語られ、記憶のパズルができていくと、果然、ぐっとくる展開となることでしょう。
誰もが日々の生活で見なれた職業に就く2人に、ちょっとした変な性格付けをすることでドラマが起動する脚本構成が素晴らしいのです。
記憶をめぐるラブストーリーが紡がれる本作は、同時にスペクタクル映画としての魅力も満載です。とはいえ大仕掛けなアクションやセットはありません。動くことではなく静止すること。そしていつも同じ場所を走り同じ場所に停まる路線バスが、いつもと違う場所を走り、違う場所に停まるということだけで、ハリウッド映画も顔負けのスペクタクルが展開されていくのです。
白眉は、生きるリズムの違い、いわば時差ゆえにすれ違ってきた2人が一緒に過ごす時間の描写にあります。その光景の何と美しくおかしく切ないこと。映像といい、構成といい、時間を巡る奇想天外なアイデアといい、全てが鮮烈に心に残りました。それはきっと単なる技巧ではなく、片隅に転がっている人生にやさしい光を当てる監督のフィロソフィーのたまものです。
仕掛けを確認するためにも、主人公たちの最高の。泣き笑い顔”と再会するためにも、ついDVDを巻き返してもう一度見たくなりました。
最後に、終盤でふたりを乗せたバスが、浜辺の海中道路を突き進むシーンは大変美しくこころに残りました。海のなかに、なんであんな道があるのでしょうね。物語を印象づける素晴らしいロケ地です。
出逢うまでの奔走! ラブLOVEなバレンタインデーを目指して♥
悲しい交通事故で落ち込む男性、グァダイを励ましてくれた少女だったシャオチー。
私書箱の文通から、始まった恋。
台湾のバレンタインデーが、2月14日と
7月7日あることを初めて知りました。
大人になってもシャオチーをずっと想い続ける
グァダイに上手く伝えられなくても
仄かな恋心を感じました。
郵便局で働きながら、「手紙」を出すグァダイ
を何回も見ていたシャオチー。
タイム・ラグと時間が止まったときの
台湾の街並みに郷愁がありました。
写真館で撮られたシャオチーの写真。
海辺に干された牡蠣。
走るバイク。
すれ違う男女が出逢うまでのファンタジーを
少しじれったい思いで見ていました。
シャオチーとグァダイは出会える運命だったのか、砂浜に描かれた相合い傘が
ラブレターのような甘いバレンタインデーを
イメージする作品でした。
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