「失くしたものに夢と未来を乗せる」1秒先の彼女 R41さんの映画レビュー(感想・評価)
失くしたものに夢と未来を乗せる
そもそもオリジナル故、ストーリーに違和感はない。
よくできている。
主人公のヤンも背伸びがなく等身大な感じでいい。
すべてに理由が存在する。
さて、
すべてが止まってしまった世界で、秘密基地から帰ってきたバスの運転手ブアタイは、歩いている男を発見しバスを停めた。
男の様子からヤンと知り合いのようで、男はヤンに向かって話しを始めた。ヤンの父…
彼の話 ストップモーションの理由 世界の不思議 世捨て人と自分探し…
やがてバイクの男が現れる。バイクはなぜか反対車線に割り込んでバスと対面停車する。バイクにとってもいま動いているのはイレギュラーだ。同時にバスを動かしているのはヤンの父だと思ったのかもしれない。
おそらくこの男は、ヤンの父が体験した最初のストップモーションの時に出会ったのだと思われる。意気投合し、一緒に自分探しをしているのかもしれない。
また、バイクは来た道を戻らずに先へと進んだ。それは、この二人は次回同じ体験をするときに、何かしたいことがあったのではないか? 情報が少なすぎて妄想さえしにくいが、この部分に秘密の扉が隠されている気がする。
また、
映画に多いナレーション
それは登場人物の心の声。
もちろん違和感などない。
しかし、
あくまで個人的な意見だが、日本版と比較するとオリジナルにはナレーションはない。
運転手は想いをダイレクトにヤンに話している。あまり差はない気もするが、気にすると大きな差に感じる。
また、
運転手はすべてを片付け終え、ヤンを自宅まで届ける。
ずっとずっと想いを寄せていた彼女 寝顔
キスしようとするがなかなかできずに朝になってしまう。
ようやく勇気を振り絞って、額にキス
そして「最後の手紙」を書く。
ヤンの部屋にあったチラシの裏に、「秘密基地」の場所と手紙。
面白いのが「彼の常識的センス」
ストップモーションの時に自分が勝手にヤンをいじくりまわしたことに対する反省
誰がどう見ても「変態野郎」という認識を端然と自覚している。
でも、とうとう想いを叶えたのだ。
運転手は、
ダンス男の正体を伝えられず、姉を騙したとバスに乗り込んできたチンピラの制裁
まさかそこに運転手も乗りかかってくるという展開
でも一蹴される。
結局何もできないという絶望。
バスの勝手な運航に対する厳罰の覚悟。
すべて失ったとバスで眠る。
朝目覚めると空中に静止する蚊 突如起きた奇跡 ストップモーション
運転手がこの機に乗じたのは間違いない。
でも、思いを叶えることができた満足感。
変態野郎では、彼女に申し訳が立たない。
腹を決め、彼女のいる窓口で最後の手紙を出す。
「さようなら」
しかし、
「豆花」の声に思い出した彼女の父との約束。
慌てて道路を渡る瞬間の悲劇は、ナイスアクションだった。
視聴者も息を吞んだだろう。
「この恋はまだ終わらない」
神の声が聞こえてくるようだ。
ずっと前から動いている1秒遅れの彼
それに気づいてやっと動き始めた1秒先の彼女
幼いヤンは病院で約束した文通のことを忘れていなかった。
ただ、2度書いただけだった。
住む場所が離れていることで私書箱まで来れないヤンは、次第に文通のことを忘れていった。
この作品のテーマ「失くしもの」については、最初からラジオが話している。
ヤンの父もまた「失くしもの」かもしれないし、私書箱の鍵も「失くしもの」だろう。
しかし最大の「失くしもの」とは、ヤンの記憶ではないだろうか。
幻覚で見たヤモリの親父
「どうでもいいものが失くしものになる」
それが、写真屋で見つけたヤン自身の見覚えのない写真につながって、「あの私書箱」の発見につながった。
それが誰からだったのかはっきりとわかったが、彼はもう二度と姿を見せなかった。
異動先の郵便局の私書箱にも、あれ以来手紙は届かない。
やがて、松葉杖の彼が現れる。
あれ以来探し続けた彼がとうとう姿を見せた。
頭には様々なことが思い浮かんだだろう。
だから、思わず涙が頬を伝う。
そして今までのいきさつを話そうと、今晩会う約束。
「ある人」から頼まれたと言って渡す豆花
同時に男も声が詰まってしまう。
二人の情熱とすれ違いが見事に表現されていて、最後のシーンでは涙がこぼれてくる、
物語のすべてが「二人が再会する瞬間」だけのために描かれているのだ。
勝手にそう妄想すると、テイストを変えたリメイクは「その瞬間」をどこにするのか決めることから始まるのだろう。
見た順番が逆だったが、台湾俳優陣も一般的な台湾人という印象でかなり等身大でこの作品に挑んでいるように感じた。
それだけ原作が素晴らしいのだろう。
失くしたものに夢と未来を乗せる。
素晴らしい作品だった。
こちらの方が恋愛まっしぐらに感じます。
運転手は一歩間違えれば、というスレスレのところを純愛にしていてそれくらい愛している、ということだと思います。ヤンもだんだんと美しくなって。
早速、速攻のレビュー、
鮮度抜群のレビューですね。
良かったです。やはり感動はこちらに軍配が上がりましたね。
私はいまだにタイムリーブの仕組みがよく分からないのです。
「父親の失踪」と「私書箱」がキーポイントでしょうか?
シャオチーが子供の頃の入院や転校、手紙をやりとりすると
約束したこと、などなど、忘れ方が激しいですよね。
普通、初恋みたいのは、覚えてますよね。