「失われた1日を巡る2つの物語が辿り着く奇想天外なオチにしんみり泣かされるSFラブコメディ」1秒先の彼女 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
失われた1日を巡る2つの物語が辿り着く奇想天外なオチにしんみり泣かされるSFラブコメディ
郵便局員のシャオチーは職場と自宅を往復するだけの空虚な毎日を送るアラサー女子。男性との出会いはサッパリで、せいぜい郵便を出しに窓口までわざわざ切手を買いに来る男がいるくらい。ある日公園でダンスを教えているウェンソンと出会ったことから意気投合、映画を観に行った後七夕の日に会う約束をするが、目覚めるとそれは七夕の翌朝。前日の記憶がないシャオチーは一体何が起こったのかと途方に暮れるが・・・からのSFラブコメディ。
物語は二つに分かれていて前半がシャオチーの物語で、後半が失われた一日で何が起こったかを見つめる物語。後半の物語が前半の物語にぶつかったところで弾けるドラマはショートショートの読後感のような爽快感のある奇想天外なオチが用意されていて、何をやらせても人よりワンテンポ遅い愚直にも程があるバス運転手グアタイに与えられた福音にグラッと心を動かされてシミジミ泣けました。福神漬けのようにさりげなく添えられる実はフラッと失踪していたシャオチーのお父さんの物語にも年頃の娘を持つお父さんならグッとくると思います。
原題は“消失的情人節”、英題はMy Missing Valentine。劇中でも字幕はあくまでバレンタインデーとなっていて夏の日の話なのに妙だなと思っていながら観ていたのですが、台湾では七夕が恋人達の日となっているんですね。それを実際には聖バレンタインの命日であるバレンタインデーと呼ぶことにちょっと違和感ありましたが、物語はこちらの勝手な期待を軽々と飛び越えたものでした。