「甘ったるいダサさもあるけれど、着想に妙があり、よくできている恋愛ファンタジー映画」1秒先の彼女 shoheiさんの映画レビュー(感想・評価)
甘ったるいダサさもあるけれど、着想に妙があり、よくできている恋愛ファンタジー映画
80年代後半から90年代前半にかけて、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)やエドワード・ヤンといった台湾ニューウェブの監督作品を何度もよく観たし、その中に今でも生涯ベスト級の作品があるのだけれど、その二代巨頭とは少しテイストの違う若手監督だった、陳玉勲(チェン・ユーシュン)の作品「熱帯魚」もなかなか魅力的だった。だけれど、彼の作品は独特の甘ったるいダサさを少し感じさせるところもあった。映画監督も一時は辞めてはいたらしいけれど、その後、長編二作を撮り、この独特で奇妙な恋愛映画を発表したわけだ。着想に妙があり、また主演の女優さんがコメディの主演として優れておりチャーミングなので、甘ったるさもファンタジー映画としか見事に昇華されている。「熱帯魚」同様、台湾の地方(嘉義県)の海の景色もなかなかいい。郵便局で働く30歳近くの女性が、ダンスの講師に突然声をかけられて、夏のバレンタインデー(台湾では七夕と2月14日の二回のバレンタインデー、情人節がある)を過ごすことを約束する。ところが、その一日が訪れずに消失してしまうのだ。デートの待ち合わせ場所に行くと、その日はバレンタインデーの翌日だった。彼女は何故か日焼けしている。その謎解きのプロットが非常によくできていて面白い。意外な方向に話が転じていく。台湾ならびに中国の映画は、アート系映画に比べると、エンタメ系がちょっと見劣りするように思えるのだけれど、この作品は本当によく練られていて、見ていて非常に楽しかった。
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