劇場公開日 2021年2月26日

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「レンブラントに魅せられた人々が織り成す光と闇を鷲掴みにする渾身のドキュメンタリー」レンブラントは誰の手に よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0レンブラントに魅せられた人々が織り成す光と闇を鷲掴みにする渾身のドキュメンタリー

2021年3月11日
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鑑賞方法:映画館

自身の肖像画をレンブラントに書かせたオランダの貴族ヤン・シックスの末裔で画商のヤン・シックス11世は競売にかけられた作者不明の肖像画がレンブラントの作品であると直感し落札、知人の修復師やレンブラント研究の第一人者に依頼して様々な角度からレンブラントの手によるものと実証しようとする。かたやスコットランドでは広大な土地を所有するバックルー公爵が代々所有してきたレンブラント作『老女の読書』が防犯対策で高い位置に飾られていることに不満を持ち、ふさわしい内装の部屋に飾るべく思案している。そしてフランスではロスチャイルド男爵が弟に課税される莫大な相続税を支払うために代々受け継がれてきたレンブラントによる2点の肖像画『マールテンとオープイェ』を売却する決断をする。レンブラントを巡る3つの物語が並走する中で真贋論争や所有権争いが勃発、やがて国家を巻き込んだ大騒動に発展していく。

監督は美術館の改装を巡る大騒乱をコミカルに捉えたドキュメンタリー『みんなのアムステルダム国立美術館へ』を手掛けたウケ・ホーヘンダイク。前作ではレンブラントの『夜警』が象徴的に使われていましたが、本作ではまるでその続編であるかのようにレンブラントに魅せられた人々が織りなす濃厚な人間模様をまるでフィクションかのように生き生きと描写。精緻かつ大胆な筆使いで最小限の色を操り深い闇もくっきりと浮かび上がらせるレンブラントの技法に関する様々な考察もしっかり取り上げているので、美術ドキュメンタリーとして鑑賞しても十二分に楽しめる美しい映像にはため息が出ます。レンブラントにまつわる美術史に自身の想像や伝聞を盛り込んでドラマ性を持たせたい父10世とあくまで科学的に実証されたことだけを史実として積み上げたい息子11世の確執、自身が築き上げた富と名声をレンブラントの作品に置き換えることで恍惚を得るコレクターのドヤ顔、絵画獲得を巡って繰り広げられるルーヴル美術館長とアムステルダム国立美術館長の神経戦、スクリーンにべっとりと塗りつけられる人間ドラマは終盤あらぬ方向に急展開し、『マールテンとオープイェ』の背景に描かれたような漆黒の闇を暗示して終幕。本作のために新録されたと思しき旋律に身を委ねてしばし余韻を楽しみました。

海外の美術館巡りが叶わない現在においてスクリーンで鑑賞することに格別の意味がある軽快なのに重厚な作品。そんな作品の最終上映なのに客が私一人、何とも贅沢な100分間を堪能させて頂きました。

よね