劇場公開日 2021年10月8日

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「期待通り」プリズナーズ・オブ・ゴーストランド タカシさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5期待通り

2021年10月10日
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園子温がハリウッドで映画を撮りたいという野望を聞いてから、黒澤、周防のような日本で評価されていた監督が活躍するのが難しいことはよくあり、ポン・ジュノもハリウッドに行って厳しい作品を撮っていたが、里に帰ってから韓国社会に向き合った半地下の家族が世界的に評価されたので、隣国ではあるが、ハリウッドでアジア人監督が活躍するのは鬼門らしく、自前のテーマを撮るより、片腕だったり、ホラーだったりジャンル映画の方が突破口があるように思えるなどを考えていた。ハリウッドに行ってイカれてしまうことはアメリカでもあるあるらしく、バートンフィンクはそれを描いている。
以上のことを観る前に思っていたがエンドロールによると本作のスタッフはほとんど日本人らしく見栄を切った割りには意外と手堅い体制で撮るのは、カッコ悪く思ってしまった。しかし、園子温に対してそこまで、思い入れがない私には、園子温が外国人向けに撮ったらこんな作品を撮りそうだという期待には応えてくれている。手話風ダンスの紙芝居や遊女に手を叩かせて口を揃えさせたり、楽しい演出がある。
ニコラス・ケイジの衣装からして笑えるのだがら、そもそもギャグを入れて気軽に撮ろうと思っているのかもしれない。そのギャグが観客に面白いかはわからないが、あまり偉そうな態度を取らないことは高評価だが、それを出来るのは日本人スタッフに囲まれていたからではないかと思ってしまうジレンマに陥る。ネタ化された日本描写に辟易する人も居るかもしれないが、ギャグとして確信犯的にしているのだから、面白がればいいではないかと思うが、その確信犯なことに脱力してしまうこともある。
玉が潰れた時などの回想シーンがかったるく、そこを切れば90分台後半で楽しく観れたはず。
全体の評価としては、ギャグ路線で楽しく観れた。園子温の映画はシリアスになると、いつもご自身の経験由来らしいのであまりフェアな言い方ではないがファザコンが発動してしまうのが幼稚に思えてしまい、楽しめないことが多いのでそこがなかっただけでも良かった。外国人のふんどしや片言日本語は私のフェチとして、楽しく観たがこの手法は一回しか使えないとも思う。今後、ハリウッドで活躍するのかもしれないが、園子温は日本映画の文脈に沿ったタイプの作家のような気がするので、そんなにハリウッドにこだわる必要もないかと思う。
酷評されているが、園子温自体は変わってないので嫌いだった人が積極的に発信してるのだろうか?前からこんな作風でこんな演出だったので、全然思った通りの作品だった。一応ハリウッド1作目でこれなら、良い方だと思う。

タカシ