シンクロニックのレビュー・感想・評価
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しばらくは見たことのないシチュエーションかも?
Well, at least it's not you driving.
-What the fu*k are you talking about? I'm a great driver.
No, you're not.
-I'm the best driver you know.
Nope, and a black man drivin' through the Garden District,
we'd be pulled over so much, there'd be people dyin' all over
New Orleans.
移動する救急車内でのスティーブとデニスの会話... 一見して差別的な言葉も会話の中には登場するのに何故か嫌な気持ちにはならない? 彼らがお互いを信用し、また信頼し、お互いのことを知り尽くしているから出る言葉として
半世紀以上前にCIAの前身の特務機関の工作員でプロパガンダのエセ・ドキュメンタリー映画『December 7th(1943)』を製作しオスカー短編ドキュメンタリー賞を受賞、その他の映画でも多くの賞を獲得しているジョン・フォード... 彼とは真逆にオスカーとは遠くて全く縁がなく面白いけど作品性のカケラもないと揶揄されたマーヴィン・ルロイ監督と肩を並べるように同時期に活躍された、この方もとんとオスカーには縁がなく批評家から通俗的なB級映画製作者と呼ばれていたハワード・フォークス監督。
その彼の多くの名作の中でも保安官と保安官補との熱い友情を描いていた西部劇の名作中の名作『リオ・ブラボー』を思い出さずにはいられない。ただこの映画『シンクロニック』が質的に遠く及ばないにしてものお話。
Like, do you know the letter Einstein wrote to his dear friend
Michele Besso's wife after he passed away? That's all right. He
said. "Now he has departed this strange world a little ahead of
me." This means nothing. People like us, who believe in physics,
know that the distinction between the past, present and future
is only a stubbornly persistent illusion."
映画でも物理学の概念の一部分を紹介するスティーブの言葉... アインシュタインが50年来の親友である工学者ミケーレ・ベッソに送った手紙が、ベッソが1955年3月に亡くなり、その数週間後に届いたとされる手紙の内容... 奇しくもアインシュタインはベッソを追うように翌月の4月に天に召されている。
Uh, here you drop the needle on the song you wanna play,
but they're all always there, these tracks are like time, right?
Synchronic is the needle.
シンクロニックとは... 一体全体、何?
アインシュタインが手紙の中で語った有名な言葉 "過去、現在、未来の区別とは、かたくなに信じ続ける幻想に過ぎない。"
普段、稚拙なものとしては、例えば歴史を考える時、江戸時代➡明治時代➡大正➡昭和というように時間や歴史の流れや時系列によって物事の変化を見る。しかし、シンクロニックという共時的と訳される言葉は、時間や歴史の流れに左右されるのではなく、一定時期の現象や構造を見ることにあるとされている。映画の中でもシンクロニックというドラッグを開発したマッドサイエンティストがレコード盤に例えて解説していた。
本作品『シンクロニック』はシンクロニックにプラスしてタイムトラベルを絡め、映画に一味加えている。
Oregon becomes first US state to decriminalise hard drugs
米オレゴン州は4日、アメリカで初めてコカインやヘロインなどハードドラッグ所持を非犯罪化した。今後は個人使用を目的にこれらの薬物を少量持っていても、100ドル(約1万円)の罰金か中毒治療センターでの健康診断が科せられるだけで、起訴されない。(BBCnews:2020.11.4) の記事より
この映画でも『シンクロニック』を合法ドラッグの街道沿いの店で何の違和感もなく購入するシーンが出てきたので、ある意味、日本における社会通念では考えられない意外な事も...
But then I found out I was dyin'. My brain... Has a tumor. And
all those things just seem trivial. That there's meanin' in the
things I do have, and I want to spend the time I have
preservin' 'em. I've been in treatment and I found out it's
workin', but... When you're starin' down at the end, you realize
there are things that are far worse than death. And none of
those things are what you were upset about.
映画のオープニングから謎のシンクロニックというドラッグを使った意識を別の世界に飛ばし人を殺すシリアルキラーのスリラー映画と思わせておいて、実は本当にタイムトラベルを可能にするドラッグとは... でもそんなに話の流れやプロット展開に違和感を感じないで素直に受け止められたし、フィルムスコアもこの映画ならではと思えるような感じがしていた。タイムトラベルをスティーブができるあたりからジッピーさが増し、映画の展開のスムーズさは見ていてもスリリングでもあったが...
何故? 黒人のスティーブが松果体の石灰化による脳腫瘍によって、大人にはできないのに彼がタイムトラベルできるのかとか、映画の舞台がアメリカ南部のニューオーリンズなのかとか、タイムトラベルには時間制限があるのかとか、全てにおいて、人種差別的な過去の世界にジャンプするのはタイムリーな政治色を感じるし、タイムトラベルに何故、いくつもの条件を付けたのかは、全部ひっくるめて、ラストのオチ、つまりデニスの娘、ブリアンナを助けるシーケンスの為に色々と設定したのが分かると... ラストのシナリオの為だけに良く考えられた恣意的さが見え隠れする出木杉君すぎて、至極、興ざめをしてしまう。
それと、あたしがもし過去に飛べるとしたら何を持っていくかと考えた時、その一番の答えが分かれば、スティーブが何故に持っていかなかったのかは、理由が分からないし、引っかかってしまう。
そんなくだらない事にこだわらなければ、友情アリの少し予算を削った痛快なSci-Fi映画と言えます。
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