「個人的オールタイムベスト」BLUE ブルー Tama walkerさんの映画レビュー(感想・評価)
個人的オールタイムベスト
自分にとっては、オールタイム・ベストムービーです。もう何十回見たか分からない。
何がどういいのか、言葉にできない。というか自分でもよくわからない。
だからメインの4人以外の人について、ここでは書こうとおもう。
ジムの会長(よこやまよしひろ)。本当にボクシング業界の人かと思った。ボクシングジムと言っても要は零細企業の経営者。その生活感のリアリティが圧倒的である。
負け続けの瓜田(松山ケンイチ)に言う、「うり坊!今度は勝てよ、な!」 楢崎(柄本時生)が瓜田を破った強い選手と試合をさせてほしいと言い出した時に言う「うり坊の仇討ちか!(苦笑)」 何度か見せた、最高の笑顔。(最後は小川が勝ったと思っての笑顔だったからすぐに引っ込んだけれど)。
ジムで楢崎のちょっと先輩の練習生の洞口(守谷周徒)。いかにも元ヤンキー。プロを目指して練習は真面目にやっているものの、後輩を馬鹿にし辛くあたり、弱い先輩は見下し、指導に耳を貸さず我流を押し通してプロテストに落第し、落第は納得できないと周囲に当たり散らす。「“悪人”とまではいかないが嫌な奴」にみえる。(吉田監督はこういう人間を描くのが本っ当に上手い。ああ、いるいるこういう奴・・とみんなが思うリアルさ。)この映画で唯一の嫌なキャラに見えるが、しかし、堂口は楢崎とのスパーで脳出血を起こしボクサーを諦めることになっても楢崎を恨みはしない。プロになった楢崎の試合前に突然現れ、前と変わらぬ調子で「ビビってんじゃねーよ!」と楢崎の頭をはたくのを会長やトレーナーが笑顔で見守るシーンは、この映画のなかでもなごむというかほっとするシーンである(実は単純にほっとできるシーンはそんなにない)。
「ガード上げろ!」しか言わない(けど穏やかでまっとうな)トレーナー。楢崎の同僚のゲーセンスタッフの女の子(楢崎は彼女の気を引くためにボクシングを始めたのだ)は普通に可愛い。楢崎が勝ってスポーツ新聞に名前が出たりしたら「えーすごぉい!」とか言って彼女になってくれるかもしれない。そして楢崎のおばあちゃんの、存在しているだけで感じさせる悲哀。たぶんまだ彼が小さい頃に両親は死んでしまい、このおばあちゃんが育ててくれたのだろう。これから先楢崎が試合に勝って、おばあちゃんにお腹いっぱい美味しいものを食べさせてあげる日が来ることを心底祈らずにはいられない。ああそれから、何度見ても大爆笑させてくれるゲーセンでたばこ吸ってる中学生。「二十つったら二十なんだよ!俺ぁ童顔なんだよ!童顔!!」「おめーは童顔の人間をサベツすんのかよ!俺はサベツが一番キレーなんだよ!!」→自分より20cmくらい背が高い楢崎を、ジャンプして殴る(笑笑笑)。ジムに通ってる中年女性3人組。そのうちベリーダンスに鞍替えしてしまいそうだけど、今のところはこの零細商店の重要なお客様である。美しすぎず(失礼)極度に肥満等でもない、「ザ・おばさん」のリアリティ。
そんなディテールやお笑いはどうでもいいといえばいいんだが、しかし全篇とおして瓜田と小川と楢崎のボクシングの話+瓜田と小川と千佳の話、だと、たぶん見てて胸がつまりすぎるから、だからいいんだよ。もう中坊最高、おばさんトリオ最高。楢崎の恋敵の男がやっていた「モデル」の話はちょっと下品だけどまあ彼らの生きている世界には合っている。
きーぷ、うぉーきんぐ!!