「それでも」BLUE ブルー U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
それでも
「青=挑戦者」
タイトル通りの内容だった。
ボクシングを軸に描いてはいて、とてもわかりやすい内容だった。挑戦した者だけが、勝者にも敗者にもなれる。元を正せば、そこがスタートだ。
動機は様々だ。好きな子の気を引く為、ソレが好きだから、才能があったから、その他諸々。
誰でも始められる。
でも、誰でもは続けていけはしない。
ハッピーエンドで終わる事を期待はしていたが…そうそうそんな都合のいい事は転がってない。
勝者が居れば、それ以上に敗者がいるのだ。
でも、その敗者であるという事は、挑戦者であった事の証明でもある。
今作はそんな敗者達を描く。
明確に勝ち負けが存在し、己の身体のみで闘うボクシングという題材で。
皆様、ボクシングのトレーニングには励んでたようで、中々の仕上がり具合ではあったのだけど、頭抜けてるのは、やはり松山氏。
ラストのシャドー…美しかったぁ。
あそこがヘッポコだったら、作品としては台無しだし、「彼は敗者ではない」との結論にも至らなかった。
勿論、勝者ではないのだが、それでも彼は敗者ではないと思える。また、へらへらとはしているが、しっかりと憤りを伝える繊細な芝居…見事だった。
ボクシングの映画で、ちゃんと試合も描いてはいるが、それで居続ける為、そこに立ち続ける為、そこに上る為、その葛藤や決断、信念を真正面から描いたロマンチックな作品だと思う。
コロナ禍で劇場に行けなかったのが悔やまれる。
頭悪いなぁと思う人もいるだろう。
そんなんで食っていけないならやる意味もなくない?と言う人もいるだろう。
その通りだと思う。
そう言ってしまえる人達には、きっと理解はできない。どんな言葉を並べても共感は得られないと思う。
そんなものに出会ってしまった自分の不運を呪うしかない。そんなものに人生の大半を消費し、振り回される不運を呪うしかないのだ。
でも、それでも、だからこそ生きていると思える。
コレがやりたいから生きているんだと思える。
それ以外は、実の所どうでもいいんだ。
やめれる奴は幸せだと思う。
続けていくには、負荷も負担も葛藤も苦しさも犠牲も金も、全部背負っていかなければならない。
…と、当の本人達以外はそう思うのだろう。
当の本人達は、覚悟も自覚もあるので、案外シレッと背負っちゃってるし、今更そんな事も深刻には考えてない、と思われる。
しょうがない、出会ってしまったのだから。
そんな連中の物語。
ラストに至り、それぞれの道を走っていた引退した人と、現役の人の道が合わさり1つの道を走る姿に、温もりを感じる。
応援というには辛辣なメッセージに溢れる本作なれど、それでも綺麗事だけではないって現実を、夢みがちな現代に真っ直ぐ届ける優しさを持ち合わせた作品だった。