「⚪⚪君は彼らが置いていこうとしている時間だったのだろう。」くれなずめ もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
⚪⚪君は彼らが置いていこうとしている時間だったのだろう。
①はっきり言って技巧的に上手い映画ではない。前半の演出は余り問題ない。先輩の結婚式の出し物の練習で何年かぶりに集まった仲間たち。顔を合わせた途端、間に流れた時間は無かったように昔の男子会のノリでワイワイやり合い騒ぐ様はリアル。誰にも似たような経験が有るだろう。②真実は中盤で早くも明かされるが、その直後吉尾君が(或いは5人の願望が)生前好きだった女子(残念ながら結婚して子持ち)に「幸せになれよー!」と青春したのに対し、当の女子が戻ってきて「言われなくても幸せですから!」と反撃され、吉尾君が「いや、死んでいるんでモゴモゴ…」に対して「死んでいようが生きていようがあんたはいつもモゴモゴとはっきりしてないわ!」と怒濤の如く言いたいことを言われるシーンは面白い。その後も、この調子で進んでくれたら良かったのにその後変にファンタジーっぽいシーンが続いたのは映画的に成功しているとは言えない。③それでも「夭逝した友達が今生きていてくれていたら…」という想い・メッセージはちゃんと伝わってきて、この映画は決して嫌いではない。④成田凌は今回は吉尾君という一人の人間の実像を演じるのではなく、5人の仲間(友人)の思い出の中のイメージの集合体としての吉尾君を演じている訳で、主役と言いながら少し突飛な設定だが冒頭のはにかんだ表情から始まって5人各々の思い出の中の吉尾君を微妙に演じ分けて相変わらず達者。意外に歯並びが悪いことも分かっちゃたけど。⑤死んだ友達が忘れられなくても青春が過ぎ去ろうとしていても人間は明日を生きて行かなければならない。その事を感じさせる一日の出来事とラストシーンだと感じた。⑥楽屋落ちだが『おちょやん』に出た三人(成田凌、若葉竜太、トータス松本)が今作に参加(トータス松本は歌だけですか)が何とのう面白い。