「静謐な中に弛まぬ強さがある。」約束の宇宙(そら) 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
静謐な中に弛まぬ強さがある。
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一人の女性飛行士が、宇宙へ飛び立つまでのカウントダウン。そう書くと、誰もがドラムロール鳴り響く「ライトスタッフ」的な作風を想像するはず。だがいざ幕が上がると、そこを吹き抜ける風も、充満する空気も、鼓動の速さも、それとはまったく違った。もっとダイナミックかつ華やかなドラマでも良かったのではないか、そう思ったりもしたが、すぐに思い直した。これはこれで秀逸。母と幼い娘それぞれの生活を交互に捉えながらじっくり醸成されていく心理模様は、とても静謐な中に芯の太さがある。精神的な力強さがある。特に、母娘がガラス越しに別れを告げる場面では、打ち上げの瞬間以上にグッとこみ上げるものがった。一つ書き添えるなら、過去にヒロインが実母を亡くしているという設定もまた多層的な深みをもたらす重要なポイントと言えるのだろう。そしてエンドクレジット、歴史に名を刻んだ”母たち”の姿に、私は感動の涙を抑えることができなかった。
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