「美味しい料理は人を幸せにする。大事なことだ。」世界で一番しあわせな食堂 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
美味しい料理は人を幸せにする。大事なことだ。
まず先に言いたいのは、くだらない邦題をつけるのは止めてほしいってこと。このタイトルじゃなんだかほのぼのしちゃってて、趣旨と方向が違ってくる。原題"Mestari Cheng"、マスター・チェン。そのマスターを、マイスターでもシェフでも師匠でもなんでもいい。むしろ医者のほうが近い。医食同源という言葉があるが、それにぴったりだ。まるで墨者のような佇まいのチェンは、善なる中国人そのもの。控えめでありながら、漢方薬の効き目のごとき存在感。さぞや北欧の人々にエキゾチックに映ったことだろう。
そして大事なのは、この映画の主題は父子の再生の物語ということ。その二人に、シリカというスパイスが最後の味付けの決め手を施す。お互いの存在を消すことなく、お互いの良さを生かしながら。フィンランドの片田舎という器は、そんな新しい家族をみごとに引き立たせてくれた。中国と北欧の見事なマリアージュだね。
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