劇場公開日 2021年7月17日

「短い時間の中に、目を見張るような構図と意外性があふれている一作」リバー・オブ・グラス yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0短い時間の中に、目を見張るような構図と意外性があふれている一作

2024年1月20日
PCから投稿

近年、アメリカインディペンデント映画の旗手としてケリー・ライカート監督に対する注目が急速に高まっていますが、本作はライカート監督の劇場公開映画としては初監督作品となります。

スタンダードサイズの、通常の劇場公開作品と比較してやや狭い印象を受ける画面は、1990年代よりももっと以前の映像であるかのような印象すら持ちます。約70分と、長編映画としてはコンパクトですが、目を見張るような構図と、意外性のある展開が凝縮しています。

…と書くと、本作は見せ場に次ぐ見せ場のジェットコースターのような映画であるかのようですが、実際はその逆で、主人公コージー(リサ・ドナルドソン)の父で刑事のジミー(ディック・ラッセル)が、酔っぱらって落としてしまった銃を、それを周囲の人が拾い上げて本人に渡す…、といった程度の緊張感です(まあそれでも結構深刻な状況ですが)。

育児に疲れたコージーも、彼女と出会うリー(ラリー・フェセンデン)も、何かに鬱屈を抱えていて、冴えない風貌をしています。そしてコージーとリーが行動を共にするようになって、ロード・ムービーのような展開になっていく、かと思いきや。

ライカート監督自身が本作を、”道のないロード・ムービー、愛のないラブストーリー、犯罪のない犯罪映画”と形容したそのままの展開となっていきます。本作の舞台となるフロリダは、ライカート監督が生まれ育った場所でもありますが、『WAVES/ウェイブス』(2019)と同様、陰と陽の対比が強烈で、何かを語らずにはいられない場所であることが十分に伝わってきました。

本作の公開にあたっては、配給会社のグッチーズ・フリースクールの尽力が大とのこと。感謝です!

yui